「闇の陰謀」
ある夜、月明かりが降り注いでいる丘の上でキースが佇んでいた。
その横ではサンダーが寝ている。
「ガーディアンフォースねぇ。」
そう言って、寝っ転がって星を眺めている。
実は、彼の愛機・サイクロンブレイダーを、軍事基地に登録しに行った時のこと、
「なぁ、キース。唐突ですまないんだが、ガーディアンフォースに入ってくれないか?」
「はぁ?」
いきなりの思いがけない一言に、キースはそんな声を出してしまった。
「おいおい、本当に唐突だな。でも・・・いくらお前の頼みでも。」
「そんなこと言うな。こうして親友が頼んでいるんだから。」
実際この二人は親友といっても、年はハーマンの方が上である。
キースの年齢はオコーネルぐらいの年なのだ。
「ったく、ちょっと考えさせてくれ。」
そう言って、ハーマンの返事も聞かずにキースはとっとと行ってしまった。
「やれやれ、あいつも変わってないよな〜。まっ、良いか。」
キースはそう言うと、次の賞金首を検討していた。
「・・・どいつももこいつもイマイチだなぁ。・・・おっ、依頼が来ているな。なになに・・・
『この数日、盗賊が毎日のように町を荒らしていて困っています。
そこで用心棒をやっていただけませんか。』か。
用心棒代と盗賊の賞金を合わせれば、結構いい額になるな。
よ〜し、こいつにするか。」
次の目当てが決定し、キースはサンダーを起こして、
サイクロンブレイダーを町の方向に飛ばした。
その頃、バン達ガーディアンフォースはある地方に向かっていた。
ちなみにジークはブレードライガーと合体している。
「なぁ、フィーネ。次の仕事ってどんなんだ?」
「え〜っとねぇ、また盗賊退治だってさ。」
「まぁ、しょうがねっか。それが当面の仕事だしな。
それで・・・他の奴らは?」
「アーバインは他の賞金目当てで、そっちに行っちゃったわ。
レイヴン達はもう町に着いてるし、トーマさんは遅れて来るって。」
「そっか。じゃあ、俺達も急ぐか。」
「そうね。」
バンはライガーの足を早めた。
その1時間後、バンはグレッツタウンに着いた。
そこにはちゃんとジェノブレイカーもいる。
「確か、この町には宿が1件しかないから、レイヴン達はそこね。」
「俺はもう寝たいよ。さっさと宿に行こうぜ。」
「キュイイ〜。(さんせ〜い。)」
ジークも眠たそうにしているので、バン達は宿に向かうことにした。
ホテルはニューヘリックシティのホテルを思わせるほど大きく、
バン達も喜びを噛み締めている。
早速宿に入ると、そこにはリーゼを背負ったレイヴンがいた。
もちろん、シャドーとスペキュラーも一緒だ。
「ようレイヴン、どうしたんだ?」
「どうもこうもないさ。
こいつ、レストランで飲めもしないのに、酒なんか頼んだから、店で寝ちまって。
おかげでこの様だ。」
「グルルル。(お前の主人なんだから少しは止めろよ。)」
「グルル。グル、グルル。(悪かったわね。
だいたい、あんたの主人も飲んでたじゃない。)」
2匹は痴話ゲンカを始めてしまった。
「やれやれ。」
レイヴンはバンに背を向け、部屋に向かっていった。
バン達もチェックインを済ましたものの、2匹をほっとく訳にもいかず、
バンはスペキュラーを、フィーネとジークはシャドーを引きずって、部屋へと向かう。
幸い、レイヴンの部屋は二人の隣だったので、無駄に労力を費やす手間は省けた。
そして、そのわずか数分後、宿の扉が再び開いた。
「いらっしゃいませ。」
受付のお姉さんの高い声が響いた。
入ってきたのは、キースとサンダーだった。
「部屋、空いてる?」
「はい、お一人ですか?」
「まあね、ペットみたいなのがいるけど・・・。」
そう言ってサンダーのことを見た。
「キュイイ。(ペットはないでしょ。)」
「構いませんよ。」
「じゃあ、1部屋よろしく。」
「どうもありがとうございます。」
キースは部屋の鍵を受け取り、サンダーと共にそのまま階段を上った。
そして翌日、
「ふわぁ〜あ、よく寝たな。」
バンはあくびをしながら洗面所に行った。
何故か部屋は立派なのだが、洗面所は外にあるのだ。
洗面所にはもう先客がいたが、
バンは寝ぼけていたのでそれが誰だか分からなかった。
そのうち、レイブンも来て3人揃って顔を洗っていた。
もっとも、レイヴンは二日酔いでかなり気持ち悪そうだったが。
そして3人が顔を上げて鏡を見た瞬間、
「あーーーーー!」
3人の叫び声がホテル中に響いた。
『キース!』
「お前らかー!」
そして、トーマも合流し、リーゼを除くメンバーで揃って朝食をとることとなった。
「こういうのって、『腐れ縁』っていうのかな。」
キースが皮肉な口調で言った。
「それで、何でここにいるんだ?」
レイヴンが冷静に言った。
「さっき取り乱した姿は何処行ったんだか。
まあいいや、用心棒の仕事が入ってな、それで。」
「それって盗賊騒ぎが原因か?」
バンの質問にキースは、飲んでいたコーヒーを吹きそうになった。
「ということは、お前らの仕事も盗賊退治か。」
全員がコクリと頷くと、キースはガックリと肩を落とした。
「はぁ〜、どうして、行く先々でお前らと会うんだ。」
「キュイ。(まあまあ。)」
サンダーに励まされ、何とか朝食を平らげた。
「そういや、お前の彼女は?」
キースの「彼女」という言葉にレイヴンが反応した。
「だから、そういう風に言うな。
あいつだったら二日酔いで寝てる。」
やれやれ、という顔をしてキースはコーヒーを飲んだ。
そして、今まで黙々と飯を食べていたトーマが口を開いた。
「そう言えば、町でこんな噂を耳にした。」
全員がトーマの言葉に耳を貸す。
「盗賊団の中に・・・緑色のオーガノイドがいた、と・・・。」