キースはサイクロンブレイダーのコックピットで、一人考え事をしている。

「緑のオーガノイド・・・か。」

バン達との朝食から6時間、盗賊達との戦闘から2時間が経ち、
整備を終えてからずっとこの調子なのだ。
サンダーはというと、ジーク達と一緒になって遊んでいる。
バン達は腹が減ったと言って、町に戻っている。
つまり、キースはかなり暇なのだ。
盗賊達も見かけ倒しという言葉がよく似合うほど弱く、
本当にオーガノイドが関わっているのかどうかも分からなかった。

「悩み事なんて俺らしくもない。
報酬はもらったし、とっとと次の仕事に行くかな。」

そう思いサンダーを呼んで飛び立とうと思ったが、
キースの中で何かが引っかかっていた。

「やっぱり・・・気になるな。」

その時だった。
トーマのディバイソンが事情聴取を終え、
みんなのゾイドが置いてある広場に戻って来た。
キースもそれに気が付き、ハッチを開けて外に飛び降りた。

「どうだった?何か聞き出せたか?」

「まあな。とりあえず、フィーネさん達と合流しよう。
話はそれからだ。」

そう言って町に戻っていくトーマを見ながら、

「どうしてもフィーネが最初に出てくるようだな、あいつは。」

ポツリとそう呟くと、
キースはサイクロンブレイダーのハッチの鍵を閉めてから、
町のレストランに向かった。

 

 キースとトーマがレストランに着くと、
早食い大会が行われていると思うほど猛烈な勢いで食事を平らげているバンと、
それを恥ずかしそうに見ているフィーネとリーゼ、
完全に無視してスープをすすっているレイヴンがキースの目に写った。

「何そんなに急いでんだ?バン。」

キースがいきなり背後から話しかけたので、
バンは驚いて、食べていた肉を喉に詰まらせてしまった。
苦しむバンを見かねてフィーネが水を差し出すと、
バンはコップ一杯分の水を飲み干し、
詰まっていた物を強引に胃に押し流した。
リーゼとレイヴンも呆れている。

「ぷはぁ〜、死ぬかと思った。脅かすなよ、キース。」

「俺は後ろから声かけただけだろうが。
やれやれ、彼女も呆れてるぞ。」

バンはイスに座っている3人が呆れた目で自分を見ているのが分かって、
顔を真っ赤にした。
だが、それより何よりトーマは、

「彼女、・・・彼女ぉ〜!」

と錯乱状態に陥っていた。
そして、彼の頭の中にはアーバインのあのセリフが木霊していたという。

「愛だろ、愛。」

キースはそれに見かねてトーマに思いっきりハリセンをお見舞いした。

「おいっ、目が覚めたか?」

「あ、ああ。」

トーマを席に座らすと、キースもその隣に腰をかけた。

(一体何処からハリセンを取り出したんだろう。)

そんなことを4人は思っていた。
そして、トーマが事情聴取の結果をみんなに話した。

「盗賊のリーダーに聞いたところ、緑のオーガノイドは一日だけ借りたと言っている。
そして、そのマスターが・・・どうやら女だったらしい。」

「女って・・・どんな奴?」

リーゼがトーマに問いただした。

「年は16、7ぐらい、髪はセミロングでフィーネさんと同じ金髪、
目の色は青で、背は160pぐらい。
後、頬のところに青い入れ墨があった・・・そんなところだな。」

トーマは自分の手帳を見ながら質問に答える。

「名前は分かっていないのか?」

バンが尋ねた。

「そいつらの前では名乗ってはいないみたいだ。」

「そうか。じゃっ、お前らはお前らで頑張ってくれ。」

キースはそう言って、席を立った。

「えっ、行っちゃうの?もっと協力してくれても・・・。」

フィーネが慌てて止めようとするが、

「だって、俺は軍人じゃなければ、ガーディアンフォースでもないぜ。
まぁ、俺も俺なりに調べるつもりだけどな。
じゃあ、縁があったらまた会おうぜ。」

サラッとそう言ってキースはその場を後にした。
バンとレイヴンは何やら話をしている。

「自由奔放な奴だなぁ。」

「飛行ゾイドの腕はいいがな。」

「それだけでいいのか?」

「俺はゾイド乗りの腕を見るだけだ。それ以上は追求しない。
ちなみに今のところゾイド乗りと認めているのは、
お前と今のキース、それにアーバインとか言う奴だけだ。」

「アーバインもか?」

「あいつも一応凄腕だ。オーガノイド無しであそこまでやる奴は他にはいないよ。」

「ふ〜ん。ってちょっと待て。俺は入ってないのか?」

今までの会話を聞いていたトーマがいきなり声を上げた。

「当然のことを言うな。お前は機械と遠距離武器に頼りすぎだ。
そんなことでは一生シュバルツにも認められないな。」

「ウギギギギギ・・・。」

レイヴンの言葉に返す言葉もないトーマだった。

 

 その頃、グレッツタウンを飛び立った後のキースはサンダーと話している。

「キュ、キュイ。(これから何処に行くの?)」

「ガイガロスの国立考古学研究所だ。
久々に知り合いに会いたくなったからな。」

「キュイ。(どんな人?)」

「俺の親友さ。本来は共和国の研究所にいるんだけど、
ニューヘリックシティがあの様だからな。
今は帝国の方で研究をしている。
さあ、日が暮れないうちに到着するぞ。」

「キュイ。(O.K.)」

「行くぜ。イオンブースター、オン!」

サイクロンブレイダーは夕焼けに染まっている西の空に向かって飛んでいった。
だが、この時点でキースはまだ驚愕の事実を知るはずもなかった。

続く


どうも〜。
やっとパソコンの調子が戻り、無事up出来ました。
また出てきましたね、キース。
これからどうなるんでしょうね〜。
僕にも分かりません。
なんだか怪しい雰囲気になってきたな〜。
自分でも書いていく度に謎がどんどん深まっています。
次回、こうご期待。

 

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