そして、散歩に出ている二人は、
「変わったね、リーゼ。」
「えっ、何が?」
突然そんなことを聞くので、リーゼは驚いていた。
「だって、今の方が生き生きしてるよ。
ガーディアンフォースに入った当初はかなり嫌がってたのに。」
「というか、何か落ち着くんだ。彼の側にいると。」
「彼ってレイヴンのこと?」
「まあね。
いつだったかなぁ、僕が落ち込んでいた時に彼が慰めに来てくれた。
最初はお節介だって思ったんだ。
でも、彼が悲しんでいた時、何か心が痛かったんだ。
その時分かったのさ。彼が・・・。」
「好きだって事が?」
リーゼは恥ずかしさで顔を真っ赤にして黙ってしまった。
「そ、そうじゃないよ。ただ、大切なんだって。」
「それって好きって事じゃないの?
私はバンのこと好きだもん。
大切だから。」
少し頬を赤らめているフィーネに、
リーゼはよくこんな事が言えるなぁと思った。
そして町外れの荒野に着いた時、フィーネが足を止めた。
リーゼが顔を覗くと、何かを凝視している。
「どうかした?」
「リーゼ、前。」
フィーネの言葉でリーゼが前を見ると誰かが立っていたが、
雲で月が隠れていたのでよくは見えなかった。
ただ、誰かが立っていることは分かった。
「あなた達、ガーディアンフォース?」
その人物が二人に話しかけてきた。
声からして女性のようだ。
「そうだけど、あなたは?」
フィーネがその人物を睨み付けながら答えた。
当然リーゼも睨んでいる。
その時、雲が晴れてつきが顔を覗かせた。
「金髪に青い目、頬に青い入れ墨。
・・・あなた、もしかして。」
月明かりで見えた女性の顔をフィーネが見て、
トーマが言っていた事を思い出した。
「私の名前はリリス。今後ともどうぞよろしく。」
リリスが無邪気な声でそう言う。
すると、リーゼが、
「お前、もしかして・・・オーガノイド使いか?」
「ふふふ。・・・ワイバード!」
リリスがそう叫ぶと、突然上空から緑色の光が降りてきた。
そして、オーガノイドの形を形成する。
「緑のオーガノイド!」
「ガーディアンフォースだったら、死んでもらうわ。」
ワイバートと呼ばれるオーガノイドが低いうなり声を上げて、
二人ににじり寄ってくる。
「スペキュラー!」
リーゼが半端やけくそ気味に叫ぶ。
「無駄よ。ここから宿までどれくらいあると思ってるの?」
だが、リリスの予想に反して、スペキュラーが猛スピードで飛んできた。
そして、思いっきりワイバードに体当たりをした。
ワイバートは吹っ飛ばされたが、すぐに起きあがりスペキュラーを睨み付けた。
「リーゼ、大丈夫か?」
「フィーネ!」
レイヴンとバン、ジークとシャドーが駆けつけた。
「バン!」
「レイヴン!」
フィーネとリーゼも彼らが来たので笑顔が戻る。
すぐにジークとシャドーも前に出て、ワイバードを威嚇する。
「よくここが分かったね。」
「お前らの帰りが遅かったからちょっと探してたんだ。
そしたらあいつが突然ここの方向に飛んでいったから。」
「そう、スペキュラーに感謝しなきゃね。」
レイブンとリーゼがいい雰囲気で話している。
その時、フィーネが何かに気付いた。
「リーゼ、リリスがいないわ。」
「何だって。」
ワイバードの後ろにいたリリスがいなくなっていた。
すると突然、ガンスナイパーが現れた。
「いくわよ、ワイバード!」
ワイバードはリリスの声に反応して、ガンスナイパーに合体した。
「まずい、ライガー達は反対側だぞ。」
「残念だったわね。幸運は二度も続かないわ。」
リリスがマシンガンを撃とうとした時、ガンスナイパーの近くで爆発が起こった。
「な、何!」
バンが見ると、アーバインのライトニングサイクスが走ってきた。
「アーバイン!」
「バン、ここは任せておきな。」
「気を付けろ!奴はオーガノイドを合体させてる!」
「ふっ、そいつは楽しみだ!」
アーバインの声と共にライトニングサイクスが走り出した。
それに気付き、ガンスナイパーも銃を撃つが、
残像を残してそれを避ける。
「遅い、遅い。」
サイクスがガンスナイパーの後ろに素早く回り込み、
パルスレーザーを撃ちまくる。
だが、ジャンプをして軽々避けた。
「残念だったわね。
私のオーガノイド、ワイバードはゾイドの運動性能を限界以上に引き出すわ。
だから、こんな事もできるのよ。」
すると、ガンスナイパーの残像がライトニングサイクスの回りを取り囲んだ。
それは分身したようにも見える。
「何だと!」
「喰らいなさい!」
ガンスナイパーは一斉に銃を撃ったが、
「甘いんだよ!いくぜ、相棒!」
そう言ってアーバインは席の横のスイッチを押し、
ライトニングサイクスを加速させて弾を避けると、
ガンスナイパーの残像をジャンプで飛び越えた。
「何ですって!」
「こっちも機動性が売りなんでね。」
ガンスナイパーは残像を消して走り出す。
ライトニングサイクスは反転して、
ガンスナイパーの方向に走りながらレーザーを撃った。
レーザーはジャンプで軽々避けられたが、
「お前がジャンプするのを待っていたぜ。」
ライトニングサイクスは砲塔脇のスタピライザーを展開して、
そのままガンスナイパーに向かって走った。
そして、ガンスナイパーが着地すると同時に、
スタピライザーですれ違い様に切り裂いた。
ガンスナイパーは足を切り裂かれたため、そのまま崩れ落ちた。
「悪いな。さっきスタピライザーをレーザーカッターに変えておいたのさ。」
負けを確信したのか、リリスはワイバードと共に脱出した。
「逃げられたか。」
バン達はワイバードの飛んでいった方向をずっと見つめていると、
アーバインがライトニングサイクスから降りてきた。
「な〜に、またすぐに姿を現すさ。」
そう言ってバン達を励ますアーバイン。
「でも、ずいぶんと苦戦してたじゃない。
なんだったら、スペキュラーを貸して上げたのに。」
「グルル。(そうそう。)」
「悪いが借りるつもりはねえよ、今後一切な。
さてと、宿に戻るか。」
そう言ってアーバインは歩き出したが、
すぐに足を止めた。
「あっ、そうだ。さっき言い忘れてたな。
俺の大切な奴は相棒だよ。」
「そうか。」
レイヴンが静かに言った。
「ねえ、何の話なの?」
「大切な人がいるかっていう話さ。」
フィーネの質問にバンが答える。
「ふぅ〜ん、バンの大切な人って?」
「やっぱり、フィーネかな。」
顔を赤くして言うバン。
しばらく二人で見つめ合っていると、
「おいおい、キスなら後にしろよ。」
とアーバインの冷やかしの声。
そしてこの二人。
「ねえ、レイヴン。君は大切な人はいるの?」
「べ、別にいいだろ。話さなくたって。」
かなり動揺しているレイヴンは、
なおもしつこく聞いてくるリーゼに参ったらしく、
走って宿へと戻っていった。
「あっ、逃げないでよ。」
リーゼも後を追う。その後をシャドーとスペキュラーが追った。
『グルルル。(待ってよ〜)』
「本当に素直じゃねえな。」
「恥ずかしいんだろ、どうせ。」
「バン、私たちも戻ろう。」
バンが頷き、3人が宿に戻ろうとすると、
突然ライトニングサイクスの通信機のアラームが鳴った。
「誰だ、一体?」
アーバインがコックピットに座って話し始めた。
「こちらアーバインだ。どうぞ。」
「アーバインか、わしだ。」
「ディじいさんじゃないか。一体どうしたんだ?」
慌てた口調でディが話し始める。
「そこにバンはおるか?いたら変わってくれ。」
「バンならいる。スピーカーで聞こえているから、そのまま話せ。」
「率直に言う。わしがいる工場が襲撃を受けた。
そして、改良を加えたライトニングサイクスと
ストームソーダー・ステルスタイプが奪われたのだ。」
「何だって!」
バンが思わず声を上げた。
「とにかくこの工場に今すぐ来てくれ。
いま、トーマもこっちに向かっておる。」
「分かった。」
そこで通信が終了した。
「くそ、あいつは陽動だったんだ。」
「とにかく工場に向かおうぜ。」
アーバインの言葉に頷き、バンとジークはブレードライガーの下へ、
フィーネはレイヴン達を呼びに宿へと向かっていった。
その頃、友人に会いに行ったキースは、
「行方不明ってどういうことですか。」
「私にも分からない。
今から2、3週間前、突然二人とも姿を消したんだ。」
そこの所長らしき人と話している。
「二人って、もしかしてあいつの妹も。」
「その通りだ。」
その言葉にキースは愕然とした。
そして所長に礼を言って、自分のゾイドのところに戻った。
続く
まさか2ページになるとは思ってもみませんでした。
緑のオーガノイドの名前を考えること数日、
やっと思いついたのが「ワイバード」です。
サンダー共々よろしく〜。
では