その頃、アーバインの戦闘は激化していた。
撃っては避け、避けては撃つの繰り返しの高速戦闘が続き、
彼の体力、及び愛機は限界に来ている。
だが、それは相手も同じ事であった。
そしてそれは、最後の勝負になることを意味していた。
「俺達が持つか、相手が持つか、決め時だな。」
2体は向かい合ったまま動かないでいた。
互いに隙を伺っている状態である。
その時、アーラバローネが切り落としたらしいレドラーの残骸が落ちてきた。
そして、その残骸が落ちて、爆発した瞬間、サイクス達が走り出した。
相手の目の前でジャンプをする2体。
そして、空中ですれ違った瞬間、2体がバランスを崩して地面に倒れ込んだ。
「大丈夫か、相棒!」
アーバインの声が響く中、しばらく起き上がれずにいる2体。
ストライククローのクロスカウンターを互いに受け、
よほどダメージが深く残ったのだろう。
だが、身を起こしたのは、
「勝ったぜ、俺達。」
橙色の目をしたアーバインのライトニングサイクスだった。
そして、相手の方は起き上がることはなかった。
ライトニングサイクスが勝利を喜ぶかのように雄叫びを上げる。
「アーバイン、大丈夫か!」
「ああ、何とかな。」
駆け寄ってきたバンに元気な映像を送る。
だが、その体はもうボロボロだった。
一方、空中戦を展開しているこちらは、
「レドラーは大方片付いたな。後は・・・。」
ハーマンが突然言葉を止めた。
彼の乗っていたプテラスが黒いストームソーダーに切られてしまったのだ。
「うわあぁぁぁーーー!」
墜落している機体からハーマンが何とか脱出をした。
「下はやられちゃったみたいよ。」
「やれやれ、折角ライトニングサイクスを与えたというのに、不甲斐ない奴らだ。」
男が冷酷な声でリリスに通信を送る。
「で、どうするの?」
「我々で奴らを片付けるしかないだろう。」
「しょうがないわね。とにかくこの輩をとっとと落としちゃいましょ。」
黒いストームソーダーが今度はオコーネルのプテラスに向かって飛んできた。
慌てて避けるオコーネルだが、そこにもう1機迫っているのに気が付いていなかった。
案の定、落とされてしまう。
ここに『ハーマンとオコーネルの乗るプテラスは落ちる』という法則が成り立った。
そしてアーラバローネのストームソーダーは、ブラックレドラーをほとんど落としたものの、
「ロッソ、後ろにつかれたわ!」
ヴィオーラのストームソーダーをピッタリとマークするリリスのストームソーダー。
流石にオーガノイドを乗せているだけあって、逃げ回るだけで精一杯である。
「今そっちに行く。」
「ロッソ、こっちにもう1機が来ます。」
ヴィオーラのヘルプに行こうとしたロッソだが、
もう1機のストームソーダーに張り付かれてしまった。
「みんな、アーラバローネのアシストに行ける?」
「すまねえが、俺達はもう限界みたいだ。」
アーバインは戦闘の疲労の為、援護を断念。
結局、バン、レイヴン、シュバルツ兄弟が援護に行くことに。
だが、
「喰らえ!」
レイヴンが再度荷電粒子砲を撃つが、あっさり避けられてしまう。
バンもパルスレーザーを、カールがガトリング砲を撃つが、
敵機の軌道をそらすことしかできないでいた。
トーマのメガロマックスも同じ結果に終わった。
そして、
「きゃあーーー!」
とうとうヴィオーラのストームソーダーが落とされてしまった。
彼女も何とか脱出に成功した。
「いつぞやの奴とは桁違いという訳か。」
今、空に残っているのはロッソ達のストームソーダーとムンベイのプテラスのみ。
その頃、管制塔では、
「06ポイントから、未確認飛行ゾイド接近!」
「なんじゃと!」
一瞬、敵の新手かと思われたが、
「この反応・・・まさか!」
その時、リリスのストームソーダーがプテラスをとらえた。
「覚悟なさい。」
「誰でもいいから助けてよ!」
もはや絶望状態のムンベイ。
だが、彼女の願いは届いた。
『だったら、お助けしましょう。』
その声と共にリリスのストームソーダー目掛けてレーザーが飛んできた。
辛うじて避けるリリス。
「何者?
邪魔をすると許さないわよ。」
「へっ、生憎それが仕事なんでな。
それに、オーガノイド使って弱い者いじめしている奴らに、言われたくないね!」
そう言って飛んできたのは、
『キース!!』
キースのサイクロンブレイダーだった。
「ハーマン、もう落ちたのかよ。
まったく、情けないったらありゃしない。」
「悪かったな。
とにかく仕事に入ってくれ。」
「O.K.任せておきな。」
どうやらハーマンが呼んだ相手とはキースだったらしい。
「さてと、2人まとめて面倒見ましょうかね。」
「生意気ね!!」
リリスの叫びがきっかけで2機ともサイクロンブレイダーの後ろについた。
「じゃあ、おっぱじめようぜ!」
サイクロンブレイダーがストームソーダー2機を引き連れ、空中戦を展開する。
地上すれすれを飛んだり、急上昇したりして、
相手にはあたかも引き離そうと必死になっていると見えるだろう。
「あら、さっきの威勢はどこに行ったのかしら。
さっきから逃げ回ってばっかりじゃないの。」
「所詮我々の敵ではない。」
だが、キースは、
「2人ともなかなかいい腕をしているな。
それとも、それはオーガノイドのおかげなのかい?」
いつものキザっぽい口調で相手を挑発する。
つまり彼はおちょくっているのだ。
そして、相手は見事に挑発に乗ってしまう。
「うるさい!」
「だったらすぐにでもその口を封じてあげるわ!」
2人がソードを展開して、サイクロンブレイダーに突っ込んできた。
「ふっ、だったら一言言っておいてやるよ。
遅いんだよ!!」
するとサイクロンブレイダーは背中のイオンブースターを点火させて、
とてつもないスピードで2機を引き離した。
「なんですって!」
流石に2人とも驚きを隠せない。
ブレイダーはある程度引き離すとそのまま反転した。
「サンダー、いくぜ!」
「キュイ。(O.K.)
ブレードを展開してリリスのストームソーダーに向かって突っ込む。
そして、リリスのストームソーダーをソードごと切り裂いた。
「ソードを切り裂いたですって!」
「ソードとブレードじゃあ、当然だよ。」
キースの言葉と共に黒いストームソーダーが落ちていった。
すると、その背中から緑色の光が飛び出した。
「オーガノイドとゾイド、その2つと心が繋がってないと真に力は発揮しないぜ。
そうだろ、バン。」
そして、もう1機のストームソーダーの後ろにつく。
だが、攻撃はしなかった。
「そういや、名前を聞いてなかったな。」
キースは男に名前を尋ねた。
全員もそれに耳を傾けている。
「俺の名は・・・カリスだ。」
それを聞いて胸を撫で下ろしたのはリーゼ。
ヒルツじゃなくて安心したのだろう。
なおもキースとカリスの会話が続く。
「赤いオーガノイドの持ち主か。」
「そういうお前も金色のオーガノイドの持ち主だろう。」
「金じゃなくて黄さ。そこまで豪華じゃない。」
「そうか。だが、勝負はこれからだぜ。」
「勝負をもうついてるさ。」
「なんだと!」
するとロッソのストームソーダーがカリスのストームソーダーの首を切り裂いた。
「さっきのお返しさ。」
「ふっ、今日のところは挨拶代わりだ。」
カリスがそう言うと、黒いストームソーダーの背中から赤い閃光が飛び出していった。
「やったー!」
ムンベイが2機の後ろで大喜びしていた。
「相変わらず騒がしいお嬢さんだ。」
キースも思わず苦笑い。
「では、さらばだ!」
「Catch you later !」
ロッソ達はそう言ってガイガロスの方へと去っていった。
キースの方はそのまま基地に着陸する。
そこではバン達が出迎えていた。
「よく来てくれたな、キース。」
「ハーマンから連絡を受けてな。
おかげで久々に楽しい空中戦だったぜ。」
バンの問いに答えるキース。
何か満足げである。
「まったくアーラバローネといい、美味しいとこを持っていくな。」
「まあ、これが性分だから。」
アーバインの嫌味とも取れる発言もキースには形無しである。
そして、リーゼ達が管制塔から駆けつけてきた。
「レイヴン、大丈夫だった?」
「まあな。
少し物足りない気もするが。」
「もう、そればっかりなんだから。
ちょっとは心配するこっちの身にもなってよね。」
「悪かったよ。リーゼ。」
そんないい感じの2人に、
「何か暑くないか。」
「そうだな、何でだろうな。」
「どこかで誰かが何かやってるからじゃねえの?」
と今度はキースも混ざってレイヴン達を冷やかす。
流石に二人揃って怒ったとか。
続く
やっと終わった〜。
まさか3ページに及ぶとは・・・。
結局最後はキースとアーラバローネで幕がおりました。
アーバインも頑張りましたが。(笑)
今度はどうしようかな〜。
ただいま続きを考え中です。
この後、キースが正式に仲間になります。
何かアーバインとかぶる危険性も・・・。
それに中心人物が8人(と4匹)に。
すごいことになりそうな第3部です。
では。