「眠れぬ夜」

 

 レイヴンはその光景に不思議がっていた。
ここは彼の家の屋上。空には満天の星空が広がっていた。
そして、嬉しそうにしている少年がいる。

『これは・・・、子供の頃の俺だ。』

そう、プロイツェンに拾われる前の、バンの父親に発見される前の彼だった。

『確か、・・・父さんと星を見ていたんだ。
今度ピクニックに行く約束をして。それから・・・。』

だんだん記憶が鮮明になってきた。
その時、

「キャアーー!」/「うわぁーー!」

突然悲鳴が聞こえてきた。

『あの悲鳴は・・・父さんと母さんだ!』

あわてて少年が駆け下りる。
彼の父親の研究室に着くと、すでに惨劇が起こった後だった。
彼の両親が血を流して倒れている。
そのすぐ近くで・・・。

「グルルル。」

『あれは・・・オーガノイド。』

明かりがなく色までは分からないが、確かにオーガノイドだ。
そして、この惨劇の犯人という事も、少年には解った。

「よくも、父さんと母さんを!うわぁぁぁぁーーー!」

少年が叫びながらそのオーガノイドに向かって行った。
だが、太い尾で簡単に蹴散らされてしまう。

「父さん・・・母さん・・・。」

少年の意識が遠のいてゆく。
そして、レイヴンの意識も。

『あのオーガノイドは・・・アンビ・・・エント。』

一瞬だけあのオーガノイドの色が見えた。
錯覚かも知れないが、レイヴンが確信するには十分だった。

 

「・・・ヴン!」

「んっ・・・。」

突然自分の名を呼ばれた気がして、彼は目を覚ます。

「レイヴン!」

今度はハッキリ呼ばれ、目を開く。
すると、目の前には心配そうに自分を見ているリーゼとシャドーがいた。

「リーゼ・・・?」

「レイヴン、大丈夫?うなされてたみたいだけど・・・。」

「グル、グルルル。(本当に大丈夫?)」

気が付くとレイヴンは汗まみれだった。
額から服の中までびっしょり。

「ああ。」

そう一声返すと、リーゼの前に立った。

「すまない。迷惑かけてしまって。」

突然のレイヴンのセリフにリーゼは顔を真っ赤にしている。

「レイヴン・・・。僕は・・・レイヴンがいてくれればいいから。」

「リーゼ・・・。」

すっごくいい雰囲気の二人。
すると、レイヴンがリーゼの肩に手を置き、顔を近づけた。
彼女も目を瞑り、じっと待つ。
シャドーは赤面して、目を手で覆っている。
だが、その時、

「グッドモーニング、レイ・・・ヴ・・・ン・・・。」/「キュイ・・・イ。(おはよ・・・う。)」

突然扉が開き、キースとサンダーが入ってきた。
お互いそこで硬直、一瞬の沈黙がその場を支配する。
そして、だんだんいや〜な雰囲気に。

「いや〜、いい天気だね。俺は何も見てないから・・・、それじゃあ・・・。」

明らかに愛想笑いのキース。
彼がそう言い残して部屋を出ていこうとした瞬間、
彼は後ろから殺気を感じたので走り出した。

「だから、何も見てないって〜!」

『嘘をつけ〜!』

結局キースは2人に追いかけられる羽目に。
先程の部屋では、

「キュイ、キュイ。(朝から元気だね。)」

「グォン、ゴキュ。(本当にね・・・。)」

とそんなサンダーとシャドーの会話が行われていた。

 

 ここはガーディアンフォース本部。
SSS襲撃の後、バン達は訓練のため、ここで宿泊していた。
他にも報告会などががあったが、彼らの目的はほとんど訓練だけであった。
そして、会議室で。

「キース、その傷どうしたんだ?」

バンがキースの頬の絆創膏を見て尋ねた。

「いや、ちょっとな・・・。」

キースはそう言って黙り込んでしまった。
別に行っても良かったのだが、2人の殺気を感じたので止めたみたいだ。
事情を知らない連中はそれらを不思議そうに見ている。
すると、アーバインが、

「大方ひげ剃りで切ったんじゃねぇのか。」

と無責任に言う。
そして、ハーマンがみんなに説明し始めた。

「え〜、今回はデータ検索という事も兼ねて、
お前らには飛行ゾイドへの対応を訓練してもらう。」

ハーマンの後をシュバルツが続ける。

「前回のSSS襲撃に我々はかなりの苦戦を強いられた。
アーラバローネとキース・クリエードの活躍で難を逃れはしたものの、
このままでは今度襲撃を受けたときに対応することが出来ない。」

「そこで、今回はキースのサイクロンブレイダーを敵と見立てて訓練する。
むろん実弾演習なのでそのつもりで。」

ハーマンが最後にそう言う。
すると、

「別に対応できなかった訳ではないがな。
あの時は上にうるさいのがたくさんいたから、
邪魔で攻撃できなかっただけだ。」

とボソボソ文句を言っているレイヴンだったが、

「でも、荷電粒子砲は外れてたよな。」

というバンのセリフで黙ってしまった。

「まあ、とにかくとっとと訓練に行くぞ。」

トーマにそう言われ、渋々男達はゾイドの発着場に向かった。
フィーネとリーゼはここでデータの計測のお手伝い。

「悪いけど手加減はしないぞ。」

「分かってるって。」

「望むところだな。」

発進前にそんな事を話していたとか。
こうして、サイクロンブレイダーVSガーディアンフォースゾイド隊の
練習試合が開始された。

「俺は、ガーディアンフォースじゃねえって。」

アーバインがこうぼやいていたとか。

 

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