段々と敵が近付き、カノントータスの砲撃手にも焦りが出てきた。
ブラックレドラーの潜入がそれをさらに大きくする。
すると、希望の光の如く、光の槍が後ろのやや上方から降り注いだ。
「ガーディアンフォースだ。
とうとう来てくれたぞ!!」
今のはジェノブレイカーの荷電粒子砲。
その一撃で数体のゾイドがシステムフリーズを起こした。
彼等の登場で自衛団にも活気が戻る。
「バン、一気に畳みかけるぞ!」
「分かった!
トーマ、後方支援、頼むぜ!」
「了解!
ビーク、メガロマックスファイヤー!!」
ディバイソンの必殺技で、敵の動きが止まった。
そこへライガーとサイクス、ブレイカーが突っ込む。
こうして、陸での戦闘が始まった。
陸と言えば空では、サラマンダーが滑空していた。
2連装レーザーでドンドンと落としていく。
「昔取った杵柄ってか。
やっぱりまだまだ現役だぜ、俺はよ。」
キースの父、カルタスである。
だか、そんな余裕を見せていると、後ろを取られてしまった。
それを砲撃で知ったのだから、よけい周りの不安をあおる。
「まったく、見てられないな・・・。」
その声とほぼ同時に銀色のゾイドがブラックレドラーを切り裂いた。
さらに反転して、続けざまにサラマンダーの後ろを狙っていた1機を仕留める。
「親父、いい加減引退してくれよ。
あまりサウラや母さんに心配かけさせないでくれ。」
「キース・・・、何言ってるか。
俺はまだまだやれるぞ!」
「余裕ぶっこいてて、やられてたら世話無いぜ。
後は俺達に任せな。」
言うだけ言うと、キースはブースターを展開して、敵の編隊に突っ込んでいった。
仕方が無く、カルタスは戦線離脱した。
「あいつもでかくなったな・・・。
後は嫁さんだけか・・・。
出来るのかね、ひっひっひっひっ。」
そんなことを考えながら笑っている。
やっぱり親は息子が結婚できるか心配なのかも知れない・・・。
「どりゃあーーー!!!」
ディバイソンがヘルディガンナーに体当たりを喰らわす。
流石に重量級ゾイドには勝てず、ヘルディガンナーはそのまま吹っ飛んだ。
「うおっしゃー!!
次の相手はどこだ!?」
トーマが次の相手を捜していると、ディバイソンの足下が突然崩れる。
そして、現れたのはステルスバイパー。
「しまった!!」と叫ぶトーマだったが、バランスを崩してしまい立てずにいた。
その状態では照準も合わせられない。
だが、敵も撃つことが出来なかった。
突然の砲撃がステルスバイパーを貫いたのだ。
「トーマ、いちいち声がでかい・・・。」
ステルスバイパーの後ろからライトニングサイクスが姿を現す。
撃ったのはアーバインであった。
呆れた様子でそう言うト彼にトーマは、
「お前こそ格好付け過ぎだ。」
と顔を赤らめながらそう言い返す。
レイヴンの方は粗方終わったみたいだ。
「手応えのない奴らだな。」
そうポツリと言うが、顔は汗だく。
流石に彼も物量責めはきついらしい。
実は敵の殆どがジェノブレイカーに向かってきたのだ。
「強いものは最初に叩け」というセオリーはあるが、強いものはどんなに足掻いても強いものだ。
「退屈かい?」
「多少はな。」
リーゼの問いにそう返す。
だがこの後、彼を楽しませるイベントが待っていた。
突然、レドラーの残骸が降ってきたのだ。
「またか・・・。」
慌ててそれを避けるブレイカー。
その犯人は言わずと知れている・・・。
「キース、毎度毎度いい加減にしろ!!」
空に向かって思いっきり怒鳴り散らすレイヴン。
どうやら彼が空戦を担当すると、どうしてもこうなるようだ・・・。
『だから言ってるだろ!
そっちで何とかしろ!!
今忙しいんだよ!!』
帰ってくる返事もいつも通りだった。
そして、バンはレッドホーンとレブラプター2体と対峙していた。
「もう残ってるのはお前達だけだぜ。
いい加減、観念したらどうなんだ?」
「ボス・・・。
もう降参した方が・・・。」
「うるさい!
そんなことしたら、あの方に殺されるぞ!!
とっとと行け!!」
もうやけくそとばかりに砲撃しながら突っ込んでくるレッドホーンとレブラプター。
だが殆どが外れ、残りはシールドに弾かれている。
「あの方・・・、リリス達かしら?」
「たぶんな。
しょうがない、一気に決めるぜ!」
そう言ってライガーもブレードを展開しながら走り出した。
ブースターを展開して一気に加速、レッドホーンの背中を切り裂く。
その後、反転して、2連ショックカノンでレブラプターを仕留めた。
「よっしゃ!」
「やったわね、バン。」
バン達の戦いが終わった頃、キースも戦いを終えようとしていた。
「これでラストだ!」
イオンブースターで加速し、翼のブレードでレドラーの羽を切り裂いた。
相手は失速し、そのまま墜落する。
「よし、こっちも終わったし、これでコロニーにも平和が戻るな。」
彼が一息ついてると、突然通信回線が開いた。
サウラのプテラスからである。
『お兄ちゃん、大変!
ヒルツさんが森にいるの!』
「何だって!
森にはさっき数発打ち込まれていたけど・・・。」
彼女とそんな会話をしていると、さらに回線が開く。
今度はバンから。
『キース、森が燃えてるぞ!!』
「くそっ、もう燃え拡がりやがったか・・・。
サウラ、自衛団に言って、すぐに消火作業をさせてくれ!
バン、ヒルツが森にいる。
一緒に探してくれ!」
『了解!』/『分かったわ!』
通信が終了し、各自早速作業に入った。
その頃、ヒルツは森の中を歩いていた。
(何か思い出せると思ったが・・・、やっぱり無理か・・・。)
溜息を吐き、仕方なくコロニーに戻ろうとする。
すると、妙な息苦しさを覚える。
彼が辺りを見回すと、森の奥に炎が見えた。
「火?
森が、燃えてるのか!?」
危機を感じ、足を早める。
だが、しばらく言ったところでは、炎が行く手を遮っていた。
砲弾が着弾したのは、コロニーのすぐ側。
よって、入り口近くが一番燃えているのだ。
自分の髪のように赤い炎。
だが、親近感は覚えなかった。
感じるのは恐怖のみ。
ヒルツがその場に止まっていると、
突然近くの大木が根本を焼かれ、彼目掛けて倒れてきた。
後に彼が覚えているのは、地獄絵のような光景と緑色の光だった。
ヒルツが目を覚ましたところはコロニーと森の間の平野だった。
そしてその傍らには、緑髪の少女、リリスがいた。
「大丈夫?」
親しげな感じで話すリリス。
だが、彼は困惑したままだった。
違う場所にいるのだから、当然だが。
「君が助けてくれたのか?
君は?」
「えっ・・・。」
その言葉にリリスは驚いた。
しばらく我が耳を疑っていたが、遠くから聞き覚えのある声がしたので我に返る。
バン達がこの近くに来たのだ。
それと同時に事情を知った。
「ごめんなさい。
私、もう行かなきゃ・・・。」
そう言って立ち上がり、ワイバードを呼び寄せる。
その時、
「リリス、どうしてここに?」
リーゼがバンより先に彼女を見つけた。
だが一足遅く、光となったワイバードがそこに降り立つ。
そして、ヒルツに一言。
「私は・・・、貴方の・・・・・・。」
寂しそうな笑顔でそう言うと、光に包まれる。
そして、ワイバードはまだ燃えている森の方に飛び立った。
一方、リリスの言葉はリーゼの耳にも飛び込んでいた。
そして、ある事実を思い出す
その内に、バン達が到着、ヒルツを無事救いだし、火事も鎮火した。
「リーゼ、どうしたの?
さっきから落ち込んでるみたいだけど・・・。」
キースの実家に戻った一行は少し休んでから旅立つことに。
そして、さっきから黙りっぱなしのリーゼにフィーネが心配そうに声を掛ける。
「ヒルツと何かあったのか?」
レイヴンも心配している。
すると、彼女は静かに口を開いた。
「思い出したんだ、リリスのこと。
あいつは・・・、ヒルツの・・・“妹”だ・・・。」
バン達は驚いて声が出なかった。
そして、なおも話を続ける。
「あいつが僕達のことを付け狙ってる訳が分かったよ。
ヒルツの復讐、それしかない・・・。」
「ヒルツの妹が復讐か・・・。
確かに考えられるな・・・。」
トーマが呟く。
正体の知れない感情を彼等は感じていた。
それは申し訳なさなのか、同情なのか、はたまた、悲しさなのかは誰も分からずにいる。
ただ、リリスを素直に憎む気持ちには慣れなかった。
そして、リリスは基地に戻り、アレンを尋ねている。
帰った途端、カリスに散々言われたが全部受け流した。
素直に口答えする気分では無いのだ。
「どうしたんだい?
そんな顔して・・・。」
優しく声を掛ける彼。
彼の優しさがリリスには痛く沁みていた。
最初は彼も分からずにいたが、おおよその見当を付けると、こう言い放つ。
「女の子は辛いことがあったら泣いた方がスッキリするよ。
うちの妹も、そんな顔した後、泣いてスッキリしてた・・・。
我慢は良くないよ・・・。」
彼の言葉を聞き入れたのか、リリスは奴と口を開いた。
「アレン・・・、胸を貸してって言ったら、怒る?」
彼女の言葉に首を振って「いいや」と答える。
その瞬間、突然リリスは彼に抱きついた。
支えきれず、眼鏡を落としてしまう。
だが、拾わなかった。
何故なら、リリスが彼の胸で泣いていたから・・・。
鳴き声はあげなかったが、胸に暖かいものを確かに感じていた。
そんな彼女の頭と肩に手を添える。
今の彼にはこうするしかできなかった・・・。
バン達がリバーサイドコロニーを去り、20分程が過ぎていた。
キースの両親にいろいろと手渡され、グスタフの後部座席はいっぱいになっている。
その中には自家製のコーヒー豆も入っていた。
「やれやれ、たくさんよこしやがって・・・。」
「でも、当分美味しいコーヒーが飲めるわ。
あそこの、あまり美味しくないんだもん。」
「安いからな。」
そんな話題でクスクス笑っている。
そんな時、アーバインがあるものを発見した。
「おい、前を見て見ろ!
人が倒れてるぞ!」
全員が前の画面をズームアップすると、
確かに黒髪の女の子が倒れていた。
放っておく訳にもいかず、とにかく救助することに。
この後、この事が大変な事件の予兆となったとは、誰が想像したであろう。
どうも、本当に久々の第3部です。
結構四苦八苦してしまいました。
やっぱり人間ドラマは書きにくい・・・。
リリスの場面、ちょっと書きながらウルッて来ちゃいました。
本当に涙もろい管理人です・・・。
自画自賛もいいところだな・・・。
と言うわけで、リリスはヒルツの妹でした。
なんか、前からネタバレしてましたよね・・・。
まだまだ修行が足りないな・・・。
Zi学園でも妹役で出ると思うので、よろしくお願いします。
次回、色々と新キャラが登場。
こうご期待!