「涙に暮れた再会」

 

 ガーディアンフォースのメンバー(+3名)は、
ここ2,3日何もなく、今日も格納庫でゾイドの整備。

「バン、そこのレンジ、貸してくれ。」

「ああ。」

レイヴンに今まで使っていたレンジを手渡すバン。
その後に工具箱にある別のサイズのレンジを手に取り、作業再開。
この2人、最近仲が良くなっている。
互いにライバルと認め合っているからであろうが、
本当の理由は別にあったりする。

「バン、お疲れさま。
はい、コーヒー。」

「レイヴンも、はい。」

フィーネとリーゼが彼等にコーヒーを運んできた。
お盆に乗っているそれらを2人に手渡す。

「サンキュー。」

「済まないな。」

彼等が礼を言って、コーヒーを一口含んだ。
その瞬間、2人の動きが止まる。

「フィーネ・・・、これに・・・、何入れた?」

「え、いつものだけど・・・、どうかした?」

彼女の言う“いつもの”とは、そう、塩。
それがバン達のコーヒーに入っていたのだ。

「これ、もか・・・?」

「そうだよ。おいしい?」

美味しい分けないだろ、レイヴンはそう言おうとしたが、
彼は思いっきり飲んでしまった為、喉がやられていた。
そう、彼等が仲良くなった理由は、彼女達の塩料理のせい。
それでお互い、親近感が沸いていたのだ。
その後、バンとレイヴンは水を求めて走り出したとか。

「どうしたのかな?」

「こんなに美味しいのに・・・、ねぇ。」

彼等の背中を見送りながら、2人がコーヒーをすする。
そりゃあ、彼女等の味覚からすれば美味しいだろうが・・・。

「何やってんだか・・・。」

キースがフォックスのコックピットからその光景を見て、そう呟く。
こんなのが2,3日続いているのだから、彼もその相棒も退屈だろう。
でも、良い収穫もあった。

「ブレイダー、明日が楽しみだな。」

フォックスの隣の翼竜を見て、彼が嬉しそうに言う。
実はサイクロンブレイダーが近日中に治る見込みが立ったのだ。
そして、明日は念願のテスト飛行。
機体に異常がないかを見るためだが、
それでも彼は久々のフライトでかなり嬉しがっていた。
飛行ゾイド乗りは、空を飛んでいるときが一番好きなのだ。
すると、フォックスから駄々を捏ねるような鳴き声が。

「分かってるって。
お前を置いて行くわけねぇだろ。」

宥めるように声をかけるキース。
こちらもこちらで困っていた。
もっとも、こっちは嬉しい悩みだが・・・。
だが、こんな日常も彼等の場合はすぐに崩れる。
突然呼び出しのサイレンが鳴ったのだ。

「やれやれ、平和な日常ともおさらばだな。」

気取った口調でそう言うと、コックピットから地面に飛び降りる。
バン達もやっと水を飲み終えて、キース達の後を追った。

 

 バンとレイヴンが司令室に着くと、
もう他の面々が集まっていた。
それと同時にハーマンが説明を始める。
ちなみにシュバルツは第一装甲師団の演習のため、
レックスと共にガイガロスに戻っている。

「今、共和国軍基地から入電が入った。
それによると、盗賊騒ぎがあり、とあるコロニーが被害を受けたそうだ。」

「それで、何でこっちに回ってきたんだ?」

アーバインが質問を投げかける。
それにはオコーネルが答えた。

「国境沿いにあるコロニーのため、両軍とも迂闊に手が出せないんだ。」

「それでガーディアンフォースに応援要請があった、って訳か。
まぁ、国境は越えちゃ行けないのがルールだからな。」

「国境の向こう側に逃げられたら、軍も手が出せない。
ちょっとは頭の切れる奴らみたいだな。」

キースとレイヴンが後に続いた。
2人とも何だか退屈そうだ。
すると、

「キース、実はこの件はお前に結構関わりがあるんだ。」

「えっ、・・・どういうことだ?」

思わず彼が聞き返す。
その後ハーマンがとある地名を口にした。

「コロニーの名は“リバーサイドコロニー”。
お前の故郷だよ。」

「・・・REALLY?」

思わずアメリカンなキース。
まぁ、誰だって自分の故郷が盗賊に襲われてると聞けば驚く。

「キースの・・・、故郷?」

「ああ、リバーサイドコロニーには俺の実家がある。
そして、アレンと俺が共に育った村だ。
あいつも俺も妹がいてな。
その友達と5人でよく遊んだよ。」

懐かしむようにムンベイの質問に答えるキース。
だが、そんな暇は彼等にはなく、すぐに出動となった。

「今回の目的は盗賊団の壊滅とゾイドの回収だ。
忘れるなよ。」

『了解!』

GFのメンバーが返事をして、その場を後にした。

 

 その頃・・・、

「リバーサイドコロニー?」

「ああ、私がそこに奴らが行くように仕向けた。
レイナの準備が終わるまで、奴らの相手をしてくれ。」

「お願いしますね、リリスちゃん。」

リリスがカリス、レイナがと話していた。
ここは彼等のアジトの一つ。
彼等の傍らにはそれぞれアンビエントとワイバード、
そして、あの闇色のオーガノイド、ダークネスがいた。

「ちゃん付けは止めてって言ってるでしょう!
もう、何回言えば分かるのよ・・・。」

呆れながらレイナを見るリリス。
実は彼女のもっとも苦手としている相手が、他ならずレイナなのだ。
今はアレンもちょっとは苦手のようだが。

「まぁ、いいわ。
で、また、盗賊でも仕向けた訳?
あっ、こういった方がいいかしら。
『盗賊に扮した貴方の部下』って。」

リリスが皮肉めいた言葉を返す。
どうやら、今回の騒ぎも彼が仕掛けたようだ。

「まぁ、どう言われようと構わない。
だが、仕事だけはしっかりやってくれよ。」

「分かってるわよ。
それで、私のゾイドは?」

「心配するな。
ちゃんと復元している。
今度は壊すなよ。」

「はいはい。
行くわよ、ワイバード!」

「グオォン!!」

ワイバードが返事を聞くと、
リリスはやや伸びかけの緑の髪を靡かせながら、その場を後にした。

「毎度毎度、冷や冷やさせられるよ、お前達には・・・。」

「まぁ、それはそれで、私は面白いですわ。
リリスちゃん、反応が可愛いんですもの。
・・・さてと、私も準備に取りかからないと。
モタモタしてると、リリスちゃんに怒られそうですものね。」

「グオォウ。(行きましょう、リリス様。)」

そう言って、レイナとダークネスもその場を後にした。
その場には、カリスとアンビエントだけが残る。

「どうにかならないものか・・・。
ヒルツ様も苦労なさってたのだなぁ・・・。」

「グギャウ。(お前も苦労が分かってきたな。)」

オーガノイドに慰められてもなぁ・・・、と思いながら、
カリスもアンビエントと共にその場を去る。
その場には闇だけが広がっていた。

 

 そして、バン達ガーディアンフォースは一路、リバーサイドコロニーへ。
それぞれが自分たちのゾイドに乗っているが、
キースだけはムンベイとリーゼと共にグスタフの中。
フォックスは荷台の上で積み荷となっている。
ちなみにオーガノイドもキャノピーの上。
そして、もう一台、キャリアーに乗っているゾイドがいた。

「悪いな、ブレイダーまで乗せちまって。」

「いいさ、どうせ積み荷もないし。
けど、料金だけはちゃんともらうわよ。」

「へいへい・・・。」

厄介な奴に頼んじまったなぁ、と思いながら、
彼は外の景色に目をやる。
時間が経つごとに段々と懐かしい景色に変わっていくのだ。
そんな光景に、彼は懐かしさと恥ずかしさが混ざり合った妙な感覚を感じていた。

「ねぇ、リバーサイドコロニーってどんなところなの?」

リーゼがそう聞いてきた。
好奇心おおせいな彼女らしい。

「何もないところさ。
あるのは寂れた宿屋にいつも賑わっている市。
そして、静かな森に清流の流れる川ぐらいだな。
でも、のんびり出来ていいぜ。
俺も、あそこの自然は気に入ってるんだ。」

そう静かに答える。
そして、しばらく走っていると、

「おっ、見えてきたな。
1年ぶりってとこだな。」

前方に大きなコロニーが見えてきた。
そこには名前通り、森から大きな川が流れていて、コロニーを二つに分けている。
コロニーの外側には大きな橋が架かっていた。
キースの話によると、この橋が向こう側に渡る唯一の手段で、
後はコロニーの中にある橋を渡るか、数十q先の川上まで行くしかないのだという。
しかも、この川の川上ははレアヘルツバレーの近くなので、ゾイドでは迂闊に近付けない。
あと、ここは共和国と帝国を行き来する商人や賞金稼ぎなどが集まるため、
市や宿屋が賑わっているのだという。

「街並みの設備の良さだな。」

その話を聞き、アーバインがポツリともらす。

「まぁ、俺の場合、ブレイダーで移動してたから、
そんなに帰ることはなかったがな。」

キースがそう言う。
確かに飛行ゾイドには川も何も関係ない。
そうこうしているうちにコロニーの入り口に到着。
一行はそこでゾイドを停めた。

「う〜〜〜、やっぱり地元の空気はうまいぜ。」

ぐっと伸びをしながら彼は深く深呼吸。

「平和な村だなぁ。
盗賊が出るなんてウソみたいだ。」

「本当、空気も美味しいし、のどかだわ。」

バンとフィーネが感想を述べる。
それにはキースも誇らしげな様子。

「さてと、宿屋にでも行くとするか。」

「そうね、あ〜、疲れた〜!」

アーバインの意見に従い、一行は宿屋へ向かおうとする。
すると、

「お兄ちゃん!!」

遠くの方から女性の声が聞こえてくる。
全員が振り返ると、黒髪でポニーテールの女の子が走ってくるのが見えた。
その行為のせいで、胸元にぶら下がっている銀色の十字架が揺れている。

「サウラ・・・。」

女の子の名前をポツリと呟くキース。
その娘はそのまま彼の前で止まった。

「ゴメン、ゴメン。
折角連絡があったのに、遅れちゃって・・・。」

「わざわざ迎えに来なくてもいいのにな・・・。」

腰に手を当てて、ふぅ、と短く息を吐く。
すると、後ろからの目線に気が付き、
思い出したように彼が彼女を紹介した。

「紹介するよ。
俺の妹のサウラだ。」

「サウラ・クリエードです。
兄がいつもお世話になってます。」

サウラがペコリとお辞儀をする。
そして、バン達も自己紹介をした。
これはちょっと長いので省略。

「サンダーも元気そうね。」

「グキュウ〜。(久しぶり〜。)」

サンダーの頭を撫でる。
そして、一通り挨拶が済んだところで、一行はやっと宿屋に行くことに。
キースは、散歩してくる、と言って、サンダーと一緒に別行動。
宿屋への案内は彼の妹にバトンが渡された。

「じゃあ、案内しますね。」

彼女を筆頭に一行は歩き始めた。

 

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