「残り、2分ね。」

「くそっ…!」

バンは傷ついたブレードライガーを動かすのに相当な労力を使い果たしていた。
レイヴンもシャドーをジェノブレイカーに合体させてから、もう8分が経った。

「ちっ!いい加減に…」

ジェノブレイカーはジェノザウラーを追うが、一向にその動きを掴みきれない。

「俺が先に行く!」

ライガーが駆けだした。

「いいわ。
これで終わりにしましょう。」

ジェノザウラーが姿勢を低くする。

「確実性はあった方がいいわね。」

「うっ!」

近距離でアンカークローが放たれる。

「させるかぁ!」

ビュビュビュビュビュン!!

「あっ…誰!」

ジェノブレイカーからの攻撃ではない。

「俺がいることを忘れちゃ困るな。」

「あんな状態で立っているですって!?」

先のジェノザウラーによる砲撃で、サイクスは足を失わないまでもその1本は今は動かないまでになっていた。
不安定な状態で達、見るからに頼りなさそうだが、それでも砲撃の反動に耐えた。

「まさかそんな…くっ!」

気付いたときには、目の前に獣王がいる。
次の瞬間首に噛みつき、しがみつく。

「邪魔…」

「今だレイヴン!」

状況に気付くのには遅すぎただろう。
ジェノブレイカーは正面から姿を消していたのだ。

キャン!

「くっ…きゃあっ!」

ブレードライガーがそこから離れた。
アンカークローはジェノザウラーを掴み、すぐに引きずり始めた。

 

「「策戦ω用砲弾、発射!」」

「何っ!?」

遠くから砲弾が放たれ、それが空高く上がっていく。
遠くから放たれ、離れた場所へ向かうそれは
自分たちと関係ないようで、でもそれは有り得ない。
何かと、一同は目を見張った。

ヒュ〜〜〜

空高く向かっていくそれの正体は、誰も思い当たらなかった。
それは空中で爆破する…

カッ!!

「うわっ!」

「くっ!」

「なっ…」

辺り一帯が真っ白になり、何も見えなくなる。

「しょっ、照明弾か!」

それが、連続的に爆破する。

「くそっ、これじゃ見え……」

ゴアァァァァ〜〜〜〜〜…!

「うわあっ!!」

「くっ…」

「ば、爆風!?」

突如、空では強力な風によって3機は吹き飛ばされかけた。

「アーラバローネ…」

「キース!?
一体、何なんだ?」

レイヴンとバンも、動けずに立ち往生している。

「おい、こっちにも何か来るぞ。」

「何だって、トーマ!?」

ビークがしきりに警戒音を鳴らし、何かが近付いてくることを知らせる。

「冗談じゃねぇぜ、こんな時に…」

辺りは照明弾で異常なほど明るくなり、先まで暗かったのが影響し、目など開けていられない。

グアァァァァ〜〜〜…

「うわっ!」

「アーバイン!
うっ…」

突然強風が襲う。
サイクスは耐えられずに飛ばされたようだ。

「くっ、耐えろジーク、ライガー!」

「持ちこたえるんだ!」

「な、何て強い風だ。
ディバイソンでさえ動かすとは…」

「うわっ!」

とうとうバンのブレードライガーも飛ばされた。
もう持ちこたえられるだけのエネルギーはなかったのだ。
辺りに砂が巻き上がる。
ザァザァと鳴り、無線がノイズを発し出す。
と、その音の中に微かに聞き覚えのある声がした。

「You’ll be sorry for this...」

「 I’ll make you suffer for this......」

「!?」

「あの双子…」

言葉自体は、曖昧に聞こえた。
だがそれは確実に彼らの声…

「このショーは此でおしまい。
曲芸は楽しんでもらえたかしら?」

「あいつ…」

キースの元には、ナビガトリアという女の声が届いた。
だが、様子からして近くにいるわけではなさそうだ。

「今日は、この程度だ。
また会おうGFの諸君…」

「カリス!?
うっ…」

最後にカリスの声が聞こえたが、
さらに光も風も強くなりその他は何か大きなものが飛び立つ音が聞こえただけだった。

  

「バーーーン!!」

「レイヴーーーーン!大丈夫かい!?」

その光と風から十数分後…フィーネとリーゼの声だ。

「何とかな…」

「あいつらには逃げられた。
くそっ…」

レイヴンは握り拳を握った。
だが、目はまだ開いていない。

「シャドー、もういい。
出た方がいいだろう。」

次の瞬間、シャドーはジェノブレイカーから融合を解いた。

「グルルルルルルル…」

シャドーはジェノブレイカーを振り返った。
それには無数の傷跡が残り、埃まみれ…。
何も切断されなかったのが奇跡のようだった。

「ふぅ…一体、何者だったんだ?」

慌ててサングラスを掛けたものの、あれでは何の効果もなかった。
サンダーの力を借り、何とか地面に降り立っていた。
それの音を頼りに、ロッソとロイヤル仮面も隣に降り立った。
だが、着地は成功したわけではなく、その場に前のめりに倒れ込んだ。

「大丈夫な範囲にはいるのか、この状態が…」

アーバインは愚痴を漏らしていた。
無理をして限界寸前だったことに加え、
機体が元々軽い上事実上3本足だったので踏ん張りが効かなかったのだ。
それなりに飛ばされているのである…
しかも彼は今、目が見えない状態なのだから自分のいる位置さえ分からない。
ただ、自分が逆さまになっていることぐらいは分かったが。

 

さらに時間は経過し数十分ほど…

「ルドルフ様ぁ〜〜〜!!」

突然、遠方からセイバータイガーが出現。

「めっ、メリーアン!?」

さらに…

「ルドルフ陛下、ご無事でしたか!?」

「ほっ、ホマレフ!?」

どうやら操縦はホマレフがしているようだ…さすがにバンも驚いたようだ。

 

まずは状況から説明しなければなるまい。
少々ややこしくはあるが…キースは前述の通りで、
まずはバン…実はバン、フィーネはルドルフ陛下と休暇中だったのだ。
今日の護衛はロッソとヴィオーラのみ。
そして厄介なことに任務終了、これから帰還というレイヴンとリーゼがそのオアシスに立ち寄ってしまい…
さらにはその前に彼らは偶然会ったトーマと合流……
そしてメリーアンはどこでかぎつけたか、ホマレフに頼んでそこまで来たという…
そしてアーバインはというと、賞金を稼いで次の町へ…行こうと思った矢先、たまたまバンと遭遇。
しかもキースがピンチと言うから一緒に行くことに。
バンの方はというと、まずはGFからトーマに連絡が…
事情を知ったバンはルドルフ達を残してその場所に向かう。
因みにレイヴンとリーゼは、トーマと同様直々に指令が出たため、
否応なしに行かなければならなかったという。
そして帰りが遅く、心配したルドルフはロッソとヴィオーラと共に…
無茶苦茶である。

 

「心配しましたのよ、ルドルフ様!」

「メリーアン…」

ストームソーダを降りたとたん、ルドルフはメリーアンにしっかり抱きつかれた。

「あっ、ロッソ!ヴィオーラは?」

「私のことなら平気よ。」

急にストームソーダに通信がつながった。

「確かにちょっと危険だったけど、ちょうどいい岩の裂け目があったから…」

「よかった…」

一方こちらでは…

「バン!」

「レイヴン!」

もちろん、こちらでもご対面をしているわけで……

「やれやれ…」

キースは視界が利くようになったので、サイクロンブレイダーから降り立ちサングラスを外した。
回収部隊も来たようで、辺りに散らばるゾイドの残骸を兵士達がホエールキングに運び込んでいた。

「それにしてもあいつらは一体…」

空はいつの間にか雨が止んでいて、雲が晴れてきていた。
残ったのは、酷く傷ついた彼らの愛機のみ。
ジェノザウラーも、レイノスも、もうどこにもその姿はなかった。

 

ゾイドの残骸はホエールキングで運び出すにもかなりの量。
結局一部のスリーパーは明日に後回し。
生き残っていた盗賊、リリス達の手下だけは近くの基地に運び込まれた。
その中には、フーの姿も。
しかし彼女には前歴があるらしく、ハンマーヘッドで遠くの厳重な基地へと護送された。
護送といえば、ルドルフ達は迎えが来たために一足早くここを発っていた。

「一体、何だったんだろうな…」

「サーカス、か。
強敵だったね、レイヴン。」

「…あぁ、物量攻めの奴らだったけどな。」

「まぁ、このままで終わるって言うのも嫌だしな。
次は微塵切りじゃすまさねぇぜ。」

去っていくホエールキングとハンマーヘッドを見送り、バン達は今夜泊まる場所に行った。
その場所とは…

「こんな簡単に機会が来るとはな。」

「まさかまた今日の内に会うとは俺も思わなかったよ…」

とある中年の男性とキースは話していた。
その人はハッハッハ!と笑い、キース達を案内した。
そう、あの村なのである。
ごく親しい人で宿屋を経営している人がいるそうなので、ご厚意に甘えることになった。
実際、今帰ろうとすれば真夜中に着くことになるし、そんな体力は彼らに残っていない。
しかもホエールキングはさっきの者共とゾイドとでいっぱいだ。

「おぃ…」

先程からただ黙々と歩いていたレイヴンが声をかけた。
それも意外な人物に…

「おぃ、聞こえているのか?」

「え…お、俺かぁ!?」

妙なほどびっくりするトーマ…そう、トーマなのだ。

「俺達の宿代の分も払ってもらおうか。」

「なっ、何故この俺が、貴様のような男に宿代を…」

「へぇ〜。
散々迷惑を掛けときながら、その言いぐさか?」

アーバインからも突っ込まれ、トーマ撃沈。

「ジェノブレイカーでわざわざグスタフの荷台に乗せてあげたんだよ?」

「グルル!」

リーゼとスペキュラーにも突っ込まれ…災難なトーマである。

「ということはトーマさん、自分の分も合わせて3人分ないし5人分宿代を払うのね。」

「まっ、引きずられたら余計にディバイソンの傷が酷くなったんだろうし、どうせ歩けなかったからな。」

キースにも言われ、さらにしょげ返る…
この村まではグスタフの荷台に乗って来たようだ。

「何にしても、早く行こうぜ。」

「そうだな、くたくただ。」

「まぁ宿は改築して、新しいからなぁ。
ゆっくりしていくがいいさ。
なぁに、割り引きできるから金のことは心配するな兄ちゃん。」

ハッハッハ!と笑いながら、トーマに話しかける案内人。
トーマは既に再起不能だった。

「あぁ、ほら着いた。
小さいが、料理も元がいいからな。
おいしいぞ。」

そうこう言っている間に、一行は宿屋に到着。
大きくはないが、設備は整っている。
一行はチェックインをすませ、すぐに食堂に向かうことになった。

 

「………」

その頃、倉庫のような場所で一人の女がレイノスを見つめていた。

「あっ、ここにいたのねーさん!」

「探したよ!」

とい言っても、決して慌てている様子ではない。
だが、この場所には合わない子供の声だ。
女はそれをちらっと横目で見たが、すぐに視線を戻してしまった。
女と言っても、見た目は少女…だが雰囲気はそれとそぐわない。

「ふ〜…あっ、あのレイノスだ。」

「ねーさん、無茶しすぎだよ?
確実に15%くらい使い物にならなくなってる。」

それを聞いても尚、彼女は無反応だった。

「う〜ん、珍しいのにもったいない。」

「まだまだ使えると思ったんだけどな…」

「それがどうした?」

急に、聞いていないのかと思われていた彼女から言葉を聞いた。

「「え…?」」

双子は小さくそう呟いた。
やがてその通路に足音が響く。
双子はお互いの顔を見合わせ、首をかしげ、
去ろうとする相手を追った。
歩き出した理由はすぐに分かった。

「何か用、レグルス?」

その先に、色黒で大柄な男性がいた。

「大分人員削減したようだな。」

「えぇ。これのおかげで炎(フー)の金食い虫も処理できたわ。
足手まといな奴も、ね。」

つんとし、相手の目を見ないでそう答える。

「だが、それでも収入源が…」

「関係ないわ!」

よそを見ていた瞳が、ギラリと相手を睨む。

「戦いに飢えている奴なんて、探そうと思えば結構いるもの。
そんなに労力は使わない。
何時も通りにしていれば?」

言い終えたとたん、すぐに歩き出す。
双子もその後に続く。

「ふん。誤魔化したか。」

 

「…全く、ねーさんって無茶苦茶……」

双子の片方が、そう呟く。

「それよりもねーさん、聞きたいんだけど?」

それを聞くと、ナビガトリアという名を持つ女は目だけ振り返った。

「何でフーを殺さなかったの?」

「彼奴、頭悪い割には強くて厄介そうだけど?」

それを聞くと、視線を前方に戻す。
しばらく黙っていたが、しばらくすると耐えきれなくなったかのように笑った。

「クククククク…彼奴、か。」

それを見て、双子は怪訝そうな顔をする。

「やっぱりまだまだ修行不足だな。
使える奴は、最後まで使いきってやるのさ!」

「何仕掛けたの?」

やっと状況が把握できたらしく、少し呆れたような表情で聞き返す。

「彼奴は妙に仕事好きで使いやすかった。
金食い虫で馬鹿だけど…下っ端としては上出来だったよ。」

ククク…と笑いながら続ける。

「彼奴は下っ端。
だから私らのことをよく知らないのさ。
それに…」

「嘘の情報を吹き込んでおいた…」

「でしょ?」

やっと笑い声が止まった。

「そう。彼奴はそれを本当のことだと思いこんでいる。
ちょっとサーカスらしくないかしら?
マジシャンの術ね。」

「思いこみ。」

「初歩的で、かかりやすいトリック。」

そこまで歩くと、別な空間に出た。

「ヒュエインさん、調子はどうかしら?」

その先には緑色のセミロングを持つ、ナビガトリアと同じくらいの年の少女がいた。

「よくも余計な邪魔をしてくれたわね!」

隣には彼女の対のオーガノイド、ワイバードもいる。

「それじゃ、またそのジェノザウラーとやらをなくすつもりだったのかしら?
文句ならカリスさんに。
ジェノザウラーを回収したホエールキング、確かにあなた方の物のはずだけど?」

「そう言うことを言っているんじゃないわ。」

口喧嘩が始まりそうになったとき、双子が注意をそらした。

「誰か、来るよ。」

「きっと、あの人だね。
オーガノイドもいるから。」

その足音は、このエリアに入ってきた。
現れたのは、

「グルルルルル…」

アンビエントと、

「またしくじったか。」

カリスだ。

「言っておくけど、私のせいじゃないわ。」

「こちらは、規約通りに動いただけですが?」

リリス、ナビガトリアがそれぞれ弁解する。

「大体、あと2分もあればシャドーは限界。
ジェノブレイカーは容易に倒せたのよ。」

「でもその前に、あの戦場を維持できなかったし」

「離脱命令…ちゃんとこの人にもお伺い立てたよ。」

「ガキは黙ってらっしゃい!」

双子からの反論で、リリスの怒りはピークに達しようとしていた。

「ふぅ…“怒りは敵と思え”という諺があるけど、」

「やっぱり相当難しいみたいだね。」

「……ところで、明後日で折り合いは付きましたか?」

そんなリリスの様子など気にせずに、カリスに問いかける。
この3人は喧嘩は相手にしないらしい。

「あぁ、別にそれで構わない。」

「有り難う御座います。
それでは私たちはこれで。」

「お待ちなさい!」

リリスの声を無視して、彼らはすたすたと歩いていく。
と、このエリアの出口にさしかかったところでナビガトリアは振り返った。

「リリスさん、“相手のない喧嘩はできぬ”って言う諺があるのよ。
私は面倒なことが嫌い。
それに、その暇もないしね。」

すぐに姿は消え、足音もだんだんと小さくなっていった。

「逃げたわね。」

「グルルルルル…」

追って捕まえるような性格でもないので、リリスは彼らを見送っただけだった。

「全く。大した腕でもないくせに。」

「それでも、ちょうどいい時間稼ぎになった。
そろそろ大事な作業をしなければならない。」

いつもの余裕たっぷりの様子に、リリスは苛立った。

「大した傷はないようだが…明後日程度では治らないな。」

カリスは、通路の下にある緑色のジェノザウラーを見て呟く。

「別に、ワイバードの力があれば明日にだって直せるわ。
用はそれだけ?」

まるで鬱陶しいとでも言うかのように、カリスに言い放つ。

「また、面白いショーをやりたがっているようだ。」

フッと笑いながら、カリスはさっき3人が出て行った場所を見る。

「…あいつらが?
呆れたわ。
さっきのでも相当な数のゾイドをだしていたのに。」

「今度は、少数精鋭でやるそうだ。
準備に少々時間がかかるようだが、楽しみだ。」

こりもしないような言葉に、リリスはつきあうのをやめた。
既に今日は少々体力を消費しすぎた。

「で、私は何かするの?」

「何もしないさ。
あの集団だけでやるらしい。
まぁ、その時まで待つさ。」

 

「ディオスクロイ、ポリュデウケス!」

その頃、ナビガトリアは外界に出ていた。

「しばらくこき使うわよ!!」

目の前にはハンマーヘッドがあった。
じきに、それはその場所から飛び立っていった。

 

「というと、元々あいつらはこそこそ稼いでるような奴らだったという訳か。」

アーバインは椅子に仰け反りながら話している。
アーバイン、キースの情報網とトーマがビークで検索した結果により、
サーカスの正体も僅かながらだが掴めた。

「やっていることの大部分は詐欺だけど、」

「窃盗や誘拐もあり…」

「やろうと思えばスローターにジェノサイド、オーバーキルだろうが何でもあり、」

「その上軍の機密情報でも盗み出せる。
帝国も共和国も何度も被害に遭っている。」

「…意外に捕まえにくそうな集団だな。」

キース、アーバイン、レイヴン、トーマ、バンが次々と言う。
あちらこちらを移動し、さらに分散もしているため、相手の動きを思うように察知できない。

「賞金の額をもっと高くした方がいいんじゃねぇのか?」

「だとしても、一人でしとめられるような相手じゃないな。」

「確かに。」

溜息を一つついて、彼らは立ち上がった。

「今日はこれまでにしよう。
何か疲れたな。」

「滅茶苦茶な奴らだったからな。」

「早く行こう、レイヴン。
きっとスペキュラーもシャドーもとっくに眠っているよ。」

「そうだろうな……今日は、働かせすぎた。」

レイヴンは少し沈んだ顔をしていた。

「レイヴン……大丈夫だよレイヴン。
シャドーはそんなにヤワじゃないから。」

「…そうだな。」

フッとほほえむレイヴン。
リーゼはそれを見て満面の笑みを浮かべた。

「…なんか、暑いな。」

「どこかで誰かさんが何かやっているからな。」

「「!?」」

と、こういうようないい感じになると…決まってこれだ。
アーバインとキースが茶々を入れる。

「…アーバイン……」

「キースぅ〜〜〜〜…」

「「へ?」」

次の瞬間、2人は追いかけられていた。

「はいはい、喧嘩なら外で。
早く終わらせて頂戴ね。」

「喧嘩じゃねぇよっ!」

そんなところを、4人は宿の女将さんに放り出された。

「あっ、そうそう。
やるのなら広場だけでね。
他はごめんよ。」

「だから俺達は買ってないんだってぇの!」

「何で今日はっ!!」

「「五月蝿い!!」」

2人は彼らの後を追う…

「今日の俺は血の気が多いんだ!」

「私だって、せっかくガトリングガンの装填してきたのに、もう終わってたんだからぁ!!」

「だからって八つ当たりするなぁ〜!」

…運が悪かったらしい。
せっかく収まっていたものを、怒りで再発。

「くっそ〜!トランプはまだテーブルの上、銃は弾があと2発しか!!」

この後、彼らがどうやって切り抜けたかは不明である。
とりあえず彼らのゾイドは今動けないような状態だと言うことは追記しておこう。

「あらあら、元気がいいこと。
それにあの兄弟も仲がいいこと。」

「兄弟じゃないんですけど…」

「あら?ホホホホホホ…」

この光景、女将さんに笑われていることは彼らは知っているであろうか?

「全く、子供だなあいつらは。大体…」

「おぃおぃトーマ…」

バンは思わず溜息をついた。
この後、トーマは一人でよく言うセリフを言っていた……

「…というものだ。
おっと忘れるところだった。
とにかく、俺はディバイソンとビークの調整をしておかないとな。
敵は何時どこから現れるか分からん。」

「はいはい…ビークはともかく、ディバイソンは無理だと思うけどな……」

バンはそんなトーマの様子に呆れ返っていた。
大体、バンのブレードライガーを始めリーゼのプテラス以外、ゾイドはボロボロの状態だ。

「とにかく俺達は寝ようぜ、フィーネ。
…ん?どうかしたか、フィーネ?」

フィーネは、ずっと窓の外を見ていた。
バンが近付くまでずっと黙ったままだった。

「…バン……」

「ん?」

フィーネにつられて窓の外を見た。
そこには、大きくて赤い2つの月があった。

「月が、赤いわ。」

「フィーネ?」

その言葉は単調だった。

「何か…何か、嫌な……怖い予感がするの。」

フィーネは俯いた。

「サーカスなんて、誰も知らなかったし、
知られてもすぐに記憶から忘れ去られてしまうような存在なのよ。
それなのに…あれだけのゾイドを…………」

「フィーネ…」

フィーネの表情は今にも泣き出しそうだった。

「もしかしたら、私たちが知らないような存在が…
その存在が、あれよりも大きかったら……」

「フィーネ!」

バンはフィーネの肩を押さえた。

「考えすぎだ、フィーネ…」

バンは優しく言葉を続ける。

「もしどんなの強いゾイドがいたって、どんなに大きな大群があったって、
それがどんなに悪い奴らだったとしても、俺は負けない。
確かに今日は苦戦しちまったけど、けど…」

バンは少し間をあけ、それから決意していった。

「俺は強くなる、強くなってやる!
どんなに暗い運命があったとしても、絶対に変えてみせる!
暗い道なんか絶対作らない!」

「バン!」

フィーネはバンに抱きついた。
彼女の瞳からは涙が溢れ、堰き止めるものが何もないのかのようかに流れた。
その様子を見てバンは、さっき自分の言った言葉を反芻した。
それから今度はフィーネではなく、自分自身に誓った。
絶対に、守り抜いてみせると。

 

長い一夜が明けた。
日が昇るにつれて、軍の調査団が続々と到着した。
その中で、紐解かれていく謎。
そして絡まり、真の姿を見せなくなったものも…

「セイリオスがないだって!?」

非情な真実だ。

「はい。探し回りましたが、それらしい残骸が見つかったものの…
既に、燃え尽きていまして。
得られる情報は僅かかと。」

「おいおい…」

セイリオスは不可解な技を使ったために、
関心は高かったのだが…既に手は打たれていたようだ。

「あのセイリオスとか言うのには、付属ユニットがあるはずだけど

そっちは?」

「あ、はい。そちらも…」

「手が早い連中らしいな、キース。」

アーバインは後ろから声を掛けた。

「そうらしいな。」

「キュウキュイ!」

隣には、サンダーもいた。

「お前のブレイダー、昨日のあれでかなりダメージと疲労が溜まってるぜ。
一度軍で見てもらうだろ?」

「どうせお前もそうするんだろう?」

「まぁな。
あの状態じゃ、賞金稼ぎはできないからな。」

今回の戦いでGFの皆が重傷を負ったため、ホエールキングを使い一度軍に運ぶ手筈になっている。
とりあえず賞金稼ぎのアーバインとキースも同様にそれに乗ることになった。

 

ここはヘルキャットの山積みの残骸があった場所だ。
レイヴン達は、ここに来ていた。だが、こちらの真実も優しいものではない。

「ガイサックは…どう見ても、通常なものしか……その他はかなり傷ついていますので。
調べてみないことには、何も。」

「分からなかったとしたら、あとはパイロットに直接聞くしかないね。」

「そう簡単に喋らないだろ。
それにしても、あれだけしがみつくことに重点を置くとはな。」

リーゼとレイヴンがそう呟く。

「グウウゥゥゥ…」

「あぁ、そうだ。ところでガンスナイパーはもう運んだのかい?
あっちにはガイサックくらいしか見あたらなかったけど。」

リーゼはふと思い出す。
自分達を苦しめた相手が見あたらないのだ。

「ガンスナイパー、ですか?
ちょっと待ってください。」

その兵士はグスタフの無線で連絡を取る。
しばらくすると、その兵士は不思議そうな顔をして振り返った。

「ガンスナイパーは、どの地点でも見あたらないそうですが?」

「グアァァ…?」

「そんな馬鹿な!?」

レイヴンは驚いて声を上げる。

「ガンスナイパー、ですよね?」

「そう!黒い奴と黄色い奴で、格闘戦専用仕様の奴が!!」

「ちょっとお待ち下さい。」

再び兵士は無線を使う。
その様子を、レイヴンとリーゼ、それにシャドー、スペキュラーが見守る。

「あの、やはり見あたらないとのことですが…」

「何だって!?」

リーゼは声を荒げた。

「馬鹿な!
メガロマックスを受けながら、どうやって…
あれでも並の砲撃よりは強いはずだ!」

「しっ、しかし、どこにも見あたらないと…」

「そんな!」

非情な現実…オーガノイドは互いに顔を見合わせた。
誰にも、信じられないことだった。

 

「ゲーター?」

フィーネは一人の兵士の前で首をかしげていた。

「はい。
活動の痕跡から見て、まず間違いないかと…」

「ここでか…」

バンは辺りを見回した。
ちょうど空戦が起こっていた地域と、バン達がリリスと戦っていた地域の間だ。

「とすると、あの爆風みたいな奴を誘導したのはそのゲーターだって事か。」

ゲーターは元々、帝国の偵察機だ。
共和国の性能がよく強行偵察も行ったゴルドスとは違い、小型で数で勝負していた機体だ。

「数はどうなの?」

「おそらく、30は確実かと。」

兵士が紙をめくりながらそう伝える。

「30もか…あいつらならそれくらいあるだろうな。」

「バン…?」

「キュウ?」

辺りのゾイドは、もうその殆どが片づけられていた。
あとしばらくすれば、彼らもここを離れる。

「サーカス、か。」

サーカス…彼らとの戦いが終わったことを知るのは、もっと、ずっと後の話である。

 

***********************************************************************

*アトガキモドキ*

え〜っと…ι かなり自己満足(?)暴走駄文で済みませんm(_ _)m
それにしても…かなり滅茶苦茶で……成立するのかこの話!?
しかも何だ…自分の文章を見直していて、疑問がι
何で私が書くと皆さんそんなにタフになるのでしょう(爆)
滅茶苦茶な…でもこれが私の文章なんだなと溜息しつつ(オィ)
今回は勝手にバトルオンリーで書いているし、サーカスは再登場するし……
キースさんは上手く書けてない上…リリスさんまで登場していただく始末(爆爆…)
しかも書けるときに書いたので、文章がぶっつんぶっつんと切れているかも知れません…
まあとにかくι
まず、キースさん…本当にご苦労さまでした(汗)
そしてGFを含む皆様も(爆)そしてもちろんゾイドやオーガノイド、AIの皆様も…
リリスさんやその部下の方々も……
とてつもなく自己満足で完全暴走した駄文以下のモノができあがってしまいました(滅)
でも何か…完結編が必要そうな話ですねι
こんな駄文未満の変な文ですが、どうかよろしくお願いしますm(_ _;)m


シヴナさんから頂きました。
うえ〜、更新前に貰ってしまった・・・。
というわけで、前の後書きももったいないのでこういう風になりました。
で、戦いは何とか決着がつきましたね。
ちょっと我が侭でキースの科白を増やしましたが・・・。
それにしても、サーカスは侮りがたいですね。
まだまだ、彼等の戦いは続きそうです。
シヴナさん、どうもありがとうございました。

 

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