「深緑の故郷」
〜ココにイるコト〜

 

らぁとは、布袋を肩に掛けてあの街に行くみたい。

『キュイ?』

「ああ。
図書館に行って、それから人にも当たってみるつもりだ。
博物館の方は昨日の内に済んだからな。」

らぁとはいつもと同じで笑ってる。
でもえくさ、本当は待ってるの好きじゃない。
でも、らぁとの困った顔や悲しそうな顔を見るのも好きじゃない。
だから普通に、気を付けてねってだけ言うことにしてるの。

『キュア』

「ああ、行ってくるぜ。人には気を付けろよな。
リムラ、途中まで頼むよ。」

『グウゥ』

りむらが街の近くまで行って、らぁとを送ってく。
でもえくさは他の人に見つかると危険だから、この岩場で待ってなきゃいけないんだって。
でもえくさ、本当は待っているのって、好きじゃないの。

 

雲がゆっくり流れてく、いいお天気の日だった。
あれはえれいどが良くなりますようにって願ってた、普通の日だった。

『キュウ?』

しばらくずうっと寝ていたえれいどが家の前で立っているのを見て、
えくさはえれいどの近くに走っていった。

「エクサ、おはよう。頑張っているか?」

えれいどは少しやせた顔で、いつもと同じ笑顔だった。
外の空気を吸いたかったから外に出た、って言ってた。

「今日は気分がいいんだ。
今日も私が頑張れない分、ちゃんと仕事をしてくれよ。
ほら、待たせちゃ悪いだろう?早く行ってあげなさい。」

『キュイ!』

えくさはえれいどが笑ってたから安心した。
声もいつもより少し元気そうだった。
だから、散歩に行ってくると言ったときも驚いたりしなかった。
だけど……

『キュッ…キュイイィッ!?』

いきなり前へ倒れ込んじゃった。
起きあがろうとしたのに、すぐにたてなかった。
よく見ると、周りの人々の様子も変だった。

「地震だ!」

地面が怒ってる。
そんなのが、ちょっとの間続いた。
びっくりしたけど、レリェおばあちゃんがすぐに話しかけてきてくれたから、
えくさはあんまり混乱はしなかった。

「驚いたわねぇ。
いきなり揺れたんだもの。
さぁ、エクサはジャーベのあの大きいお家に行ってごらん。
きっと誰かが頼み事をしたがっているだろうからね。」

『キュイ♪』

その途中でえれいどのお家の前も通った。
そう言えばさっき散歩に出たからいないんだっけ?って特に気にしないで歩いていった。

「あっ、エクサ!」

急に話しかけられたから、びっくりした。
らぁとだ。
えれいどのお家から慌てて飛び出してきた。

「エレイド兄さんを見なかったか?ここにゃいねぇんだ。」

『キュウ?』

何でらぁとがそんなに慌てているのか分からなくて、えくさはその時首を傾げた。
らぁとは口の中でチッて音を立てて、どうしたのかなって思った。

「あ〜、エクサ。
すまんがこっちを手伝っとくれないか。」

その時、向こうからおじいさんの声がした。
手を振ってえくさの事を呼んでる。

『キュイ♪……キュウ?』

ふって振り返ってみたら、もうらぁとはいなくなってた。
本当はその時に気付いていれば良かったの、どんなに恐い事が起こっていたかって。
だって、あんな事になってるなんて、えくさは夢にも思わなかったんだもん。

 

『キュウ……』

りむらが帰ってきた。
えくさの上にある空から降りてきてる。
こんな事、本当は好きじゃない。
気持ちが悲しくて暗い青色になっちゃうんだもん。
目立って何かに巻き込まれてしまうかもしれないからって、
らぁとはえくさの事を心配してるだけなんだけど、
でも……

『キュイイ……』

何で待ってなきゃいけないの?
砂漠の砂の上にぱたんって伏せて、そう呟いてみる。
そうすると、絶対に頭の上からりむらが突っ込んでくる。

『グウウゥゥゥ……
(そんなにラウトの手を煩わせたいんですか、貴方は。)』

『キュイイ!』

そうじゃないもん!
頭だけ上げて、そう反論する。

『キュイイ、キュ〜イ!』

心配して、何がいけないの?

『……グウウゥゥゥ……(ラウトを信じていないのですか?)
グウゥゥゥゥ……(それよりも貴方は自分の心配をしなさい。)』

『キュッ……キュウウゥゥゥ……』

うっ…これでも頑張ってるんだもん…
ちょっと前に、急に恐い人たちが襲ってきて大変だった時があった。
相手に飛行ゾイドがいなかったから、
りむらは自分だけなら何でもなかったって言った。
その事、ずーっとずっとえくさは言われ続けてる。

『キュウ、キュウウゥゥゥ……
キュイイィィィ………』

だって、待っているのが嫌なだけなんだもん…あんな事はもう厭だもん……
えくさはまた地面に顔をくっつけた。
えれいどみたいに急にいなくなったりしたら、嫌だもん。

『グウウゥゥゥ…?
(全く、どうしてそんなに過去にこだわるのですか?)
グアァオォン……
(それで現実を見切れないのなら、世話ないですよ。)』

『キュゥイ?』

目の前のことが分かってないって事?
りむらはえくさが昔のことを思い出してるって分かったみたい。
呆れた声を漏らしてる。

『グウウウゥゥゥゥ………
(私のように、今をどうにかするための過去にしか
興味がないのも問題かも知れませんけれど。)
グアアァァァ……
(貴方は全く変える気がない、それだけはどうにかして頂きませんとね。)』

恐い剣の先っぽみたいなりむらの目に、えくさは思わずむすっとなった。
りむら、いっつもえくさが嫌な事を言ったりする。
ふくれながら地面に頭をつける。
何でだろう?今の気持ち、さっきと違う色になってる。

 

ドドドドオーーーーーン!!!

『キュイィッ!?』

なっ、なにっ?!
遠くで爆発音がしたよ!!?
いきなりのことで、気が付いたらえくさは驚いて飛び上がってた。

『グウウゥゥゥ……(また盗賊騒ぎかも知れないですね。)』

『キュイッ!?』

うそっ?!
岩陰から街の方を見てみたら、煙が立ち上っているのが見えた。

『キュイイィッ…』

らぁと、大丈夫かな…

『グウゥゥ…(無事だと分かっていて、何を言うんですか。)
グアアァァァ……(大体コモススは貴方が操っているのでしょう?)』

『……』

コモススはらぁとのところに1匹ついてる。
だかららぁとが大丈夫かどうか、遠くにいてもえくさにもりむらにも分かる。
りむらに何か言いたかったけど、そんな事してる場合じゃないもん。
えくさはとっても心配で嫌だった。
遠くを見ていても、何が起こってるのか分からない。
らぁとがりむらを呼ぶまで、すっごく長い時間がかかった。
りむらは、不安だからそう思うだけだって言ったけど。

『グアァァン!(貴方もしっかりやりなさい。)』

『キュッ…』

あっ……
らぁとが遠くから叫んだ。
それと一緒に、待ってましたとばかりにりむらが飛び立ってく。
無事だったことに少し安心したけど、
後ろから追ってくるゾイドがいるって分かったから、えくさはもっとすごく心配になった。
本当に、大丈夫なの?
らぁとはきっと、大丈夫だとしか答えない。
そしていつでも笑ってみせる。
だから安心もするし、不安にもなる。
らぁとはいつも、できるだけ自分の力だけで解決させたがるって、えくさはちゃんと知ってる。

────平和ダッタラ、ドンナニ良イダロウ?

青い空には、いつものように白い雲が走っていく。
この空の向こうでこんな事全て終わればいいのにって、えくさは思った。
こんな事、起きなくなればいいのに。

 

「あっ、すみません。俺はラウト。
ラウウァートシス・シェム・デイヴィッサー。
こいつは俺の大事なパートナー、エクサ。
あっちの赤いレドラーも俺の大事な相棒、リムラだ。
よろしくな!」

『キュアアッ!』

久しぶりにらぁと以外の人の近くにいる♪
すっごくワクワクしてる♪
なんとなく、何かが始まりそうな、そんな予感でいっぱいなの♪

「ねぇ、エクサ?」

『キュアアァ!』

なでられるのも楽しくて、嬉しくてむんべいに擦り寄った♪
その向こうでらぁとがどんな顔をしてたか、
えくさはその時知らなかった。
りむらが不機嫌になってたことも。
でもえくさはこの方がいいもん!
それに、いいことが起きそうな気がするもん♪

 

その日の夕方、
えくさがらぁとに頼まれて布袋を持って行こうとしたら、りむらが話しかけてきた。

『グウウウゥゥゥ……
(はしゃいで、それでまた誰かに迷惑を掛ける気ですか?)
グウウゥゥ、グアアアァァァァ……
(過ぎすぎるというものです。少しは謹んで頂かないと。)』

『キュウ、キュア?』

何で喜んじゃ駄目なの?
えくさはむんべいと一緒にいられて嬉しいだけなのに。
りむら、またえくさに嫌なこと言ってきてる。

『グウゥゥ……(だから子どもだというのです。)
グウウゥゥゥ……、グアアァァァ…
(私は感情ではなく、行動のことをいっているのです。)
グアアァァァ…?グウウゥゥゥ……
(またラウトを心配させる気ですか?私が言いたいのはそう言う事です。)』

りむら、もっと冷たい声になってる。
えくさは何も間違いな事をしてないのに。

『キュイ、キュアアァ!!』

えくさ、何もらぁとに迷惑をかける事してないよ!

『グウウウゥゥゥ……(その様子では、永遠に子どものままですね。)』

りむら、えくさの言うこと、分かってない。
なんでそんな風に嫌な目をするの?

「いい加減にやめてくれ。
聞いてると気が変になりそうだ。」

『キュイィ?』

らぁと?
あっ、えくさ持ってかなきゃいけないのに、遅くなっちゃった!

『キュアァ!』

「エクサが謝る事じゃないさ。
俺が怠けてただけだからな。
でも頼むからそういう話はやるなよ。
永遠に平行線を辿るだけだぜ。
リムラも、頼むよ。」

『グウウゥゥ……(できれば苦労ないです。)
グアアァ……(善処はしましょう。)』

りむら、一度不機嫌になるとずっと嫌な感じのまま。
だからえくさは時々りむらと仲良くなれないの。

「エクサ?」

『キュイ♪』

でももう終わったから、むんべいのところにいこう♪
あっちの方がきっと楽しいもん♪

「そういうさっぱりしてるところは、俺も見習いたいんだけどな。
なかなか上手くいかねぇよ。」

『キュイ?』

『グウウゥゥ…?(反省より前進でしょう?)』

なんだろう?
らぁとは変な顔でちょっと笑ってるし、りむらは何を言ってるの??

「そうだな。
でも行動も思考もどっちも大事だろうからな。
まずは、バランスとれるようにって事か。」

『グウゥ…(ご自由に。)』

『キュア?』

何で二人だけでおしゃべりしてるの??
えくさ、分かんないよぅ!

「俺は大昔の事の方が分からねぇな……
っと、そうだ。
エクサ、ムンベイから遺跡の話を聞いてみようぜ。」

『キュア♪』

あ、えくさも聞きたい♪
もっといっぱいおしゃべりしたい♪
きっと、今よりいろんな事がわかるもん!
それに、いいことが起きそうな気がするの♪

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*アトガキモドキ*

私にしては珍しく短い……
そりゃ、これの前に殆ど書いてしまいましたしι
しかし振り返ってみると…波瀾万丈すぎたね、ラウト。
まあいいか、バンやレイヴン達の方がよっぽど波瀾万丈な気がする、し。多分ι(自信なし)
でも、代わりとは言えませんが、ラウトは戦争のこと、全く知らないです。
ヒルツ一派のことも知りません。
旅に出たのはデスザウラーが倒れた、その少し後です。
それにしても、最初がリムラの一人称で、最後がエクサの一人称になるとは…
最初から考えてたのに、あとから気付きました(爆)
あれ、ラウトの一人称……書いてない、まともにι
似ていても、第二話はただの解説だし。
こんなところで終わる昔の話。
さて、ちょっと厄介な性格やら運命(性質?)やらもバン達と一緒なら、変わってくれるかな、と。
でもリムラだけは変わりません。頑固だから……
その分しっかりしてるので、これからも適当に支え…て……(襲撃)
では失礼しました〜、新緑の故郷はこれで終わりです〜。
ここまで呼んで頂き、本当にどうもありがとうございましたぁ〜〜っっ(逃)


シヴナさんからいただきました。
いいですねぇ、エクサの一人称。
なんか、ほのぼのとした気分になりますね。
エクサは子供・・・、まぁ、そこがエクサらしくていいんですがね。
いつかは成長してくれるでしょう。
「時も移り、人も移る。」私の気に入っている言葉です。
それと、多分第3部に出てくる殆どのキャラが波乱万丈の人生だと思いますよ。
バンもレイヴンも、フィーネやリーゼ、キース、リリス、レイナ、ラウト、アレス、クルス・・・。
これらが絡み合って作品が出来上がっていくのでしょうね。
深緑の故郷はこれが最後だそうで、どうもお疲れ様でした。
また次の作品も楽しみにしてます。
シヴナさん、ありがとうございました。

 

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