「太古のバトル」
〜バトルロイヤル戦〜

 

 試合前日の夜、ビットはライガーゼロの整備をするため、
1人格納庫にいた。

「明日は久々のバトルだからな。
暴れまくろうぜ、ライガー!」

ビットのかけ声にライガーが荒い咆吼で返事をする。
彼等にとっては1年ぶりとなるバトルだ。
ビットもライガーも試合前の緊張感を楽しんでいた。

「さてと、俺もそろそろ寝るか。」

整備もあらかた終わり、彼は部屋に戻って寝ることに。
大きなあくびをしながら、格納庫を後にした。

 

 ビットが部屋に戻ったとき、またまた騒ぎが起きる。
彼が部屋の明かりを点けた瞬間、

「り、リノン?」

そこの部屋のベットにはリノンが寝ていたのだ。
しかも、明かりで目を覚ましてしまったから・・・、

「キャアーーー!!
この変態、痴漢、女の敵ーーー!!!」

大声で叫ばれた挙げ句、そこら中にあるものを投げつけられてしまう。

「ご、誤解だぁーーー!!!」

置き時計や枕やらを避けながら、ビットは慌てて部屋を出た。
部屋のドアの前で安堵のため息を吐きながら、物事をじっくり整理してみる。

「・・・おかしいな。
部屋を間違えたか?」

そう言って、ドアに書いてある名前を見る。
すると、

「リノン、お前が部屋を間違えたんだろうが!」

そう、そこは確かにビットの部屋。
その証拠に名前が書いてある。
大方、トイレに行った時に寝ぼけて間違えたのだろう。
その事に気付いた彼は、冗談じゃない、と部屋に怒鳴り込んでいった。

 

 翌日の昼前。

「うりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃーーー!!」

荒野のバトルフィールドでリノンのガンスナイパーが武器を乱射している。
相手はシールドライガーとコマンドウルフが2機。
ブリッツの方はいつもの3人組。
もっとも、この組み合わせは1年ぶりだが。

『バラッドさん、コマンドウルフが後ろについてます。』

「ちゃんと補足している。
任せておけ。」

フォックスを走らせながら、ジェミーのアドバイスに応えるバラッド。
その後ろにはコマンドウルフのACタイプが追ってきていた。
すると、フォックスの機体から黒い煙が噴出、相手の視界を奪う。
彼の十八番、スモークデスチャージャーだ。
大抵の場合、視界が奪われた相手はその場に留まるか、
煙を抜けるため、そのまま一直線に走り続けるかのどちらかである。
今回の場合は前者。
フォックスはコマンドの後ろに忍び寄る。
動かなくなった相手を仕留めるのは簡単であった。

「もらった!」

相手に向けてレーザーバルカンを連射、
コマンドはそのまま崩れ落ちた。
そして、

「ウィーゼルユニット・フルバースト!!」

ガンスナイパーの全武装をコマンドウルフ一体に集中させる。
装甲が薄いだけにこの攻撃はかなり効いたようだ。
当然の事ながらウルフは崩れた。
 ちょうどその頃、ライガーが青いパーツをつけてフィールドに姿を現した。
機動力に特化したイエーガーユニットだ。

「いくぜ、ライガー!」

咆吼と共に颯爽と走り出し、シールドライガーと対峙する。
相手は背中のビームガンや脇のミサイルポッドで迎撃しようとするが、
イオンブースターを作動させたゼロイエーガーには当てられなかった。

「ストライクレーザークロー!!」

走りながらライガーの爪が光り始める。
それを見た相手はとっさにシールドを展開する。
だが、次の瞬間、シールドライガーの右前足は吹っ飛ばされていた。
シールドライガーのEシールドも、
最高速で叩きつけるゼロイエーガーのレーザークローには敵わなかったのだ。

「バトルオールオーバー、バトルオールオーバー!
ウィナー、チーム・ブリッツ!」

シールドライガーが崩れ落ちた瞬間、ジャッジマンが勝ち名乗りを上げた。
またもや、ブリッツの勝ちである。

「よっしゃー、久々の勝ちだぜ。ライガー!」

ビットの声に荒い咆吼で応える。
こうして、ビットの復帰後第1戦は勝利に終わった。

 

『乾杯〜!』

トロスファームでは昼食がてらの打ち上げが行われていた。

「今日も勝ちましたね、博士。」

「ああ。
みんな、お疲れさん。」

トロスがビールを飲みながら労を労っている。
(おいおい、まだ昼だぞ・・・。)

「最近、連戦連勝。
Sクラスでやり初めてから一年も経ったし、
そろそろトップ10に入ってても良い頃じゃない?」

リノンがフライドチキンを頬張りながら嬉しそうに言う。

「俺は正当な報酬さえもらえればそれで良い。」

ジュースを飲みながらバラッドが一言。
最近、ギャラが減ったという噂もあるが・・・。

「今、どれくらいなんだろうな?俺達。」

「それは、今日の夕方辺りに発表になると思います。
けれど、まだまだSクラスには強いウォーリアーがたくさんいますからね。」

ジェミーがビットの問いに答える。
すると、通信の呼び出し音がなり、モニターにメッセージが流れ出した。

「あっ、ゾイドバトル連盟からの通達ですね。
え〜と、・・・明日の集会についてですね。
何か発表があるみたいです。」

ジェミーがどんどん流れるメッセージを読み上げる。
連盟では発表があるときには、
チームのオーナーやリーダーを集めて、集会を開く。
今回もそのようだ。

「何だろう、発表って?」

「新しいルールでも出来たのかな。」

「まぁ、明日になれば分かるさ。」

ビット、リノン、バラッドの順でそれぞれ話す。

「通信は以上みたいです。
そう言えばそろそろバトルの中継がある頃ですね。」

「そうだな、ちょっと見てみるか。」

トロスの言葉でジェミーがスイッチを切り替える。
何故、彼かというと、一番近いから。
画面にフィールドの様子が映し出される。
それには一面の荒野、そして数体のゾイドの姿が。

「あれって、エレファンダーよね。」

リノンが画面を指さして言う。
そこにはエレファンダー・コマンダータイプが、
その周りにはコマンドウルフACとセイバータイガーが映っていた。

「と言うことは・・・、ストラか。」

「ああ。
最近、ラオンがオーナーになって新しいチームを作ったらしいんだ。
確か、あのベガもいるって聞いたが。」

「へぇ〜。」

トロスの言葉にビットは感心の色を示す。
戦ってみたいという欲望を掻き立てられているようだ。

「セイバータイガーに乗ってるのがベガだな。
コマンドウルフACには・・・、誰だっけ、あいつ?」

バラッドがコマンドウルフACのパイロットを思い出せないでいた。
どうやらサンダースの印象は薄いようだ。

「相手は・・・チーム・ニャンニャンじゃん。」

もう一方には黄色のセイバータイガーが3体。
そう、彼等の相手はチーム・ニャンニャン・・・、じゃなくてチーム・タイガースである。

「どうやらランクアップバトルのようですね。」

ジェミーが説明を入れる。

 

「バトルモード0983。
チーム・タイガースVSチーム・アウトローズ。
レディー・・・ファイト!」

ゴングが鳴り、試合が始まった。
試合方式は3対3のチーム戦
まず走り出したのはタイガースの3体。

「オマリー、ラインバック、ここまで勝ち上がってきたんや。
気合い入れていくで!」

『おう。』

返事をすると、それぞれが背中のビームガンを撃ち始める。
一方、アウトローズ側は落ち着いていた。

「こんな相手、僕1人で十分だよ。」

「そうだな。
お手並み拝見と行こうか。」

ストラの許しを得て、ベガのセイバーが走り出す。
右へ左へと体を振り、器用にビームを避ける。

「そんなんじゃ、いつまで経ってもAクラスには上がれないね。」

無駄口を叩く余裕まで見せる彼に、タイガースの3人は苛立ちを隠せない。
そして、勝負は一瞬で決まった。
ベガのセイバーがジャンプしてストライククローを相手の背中にお見舞いする。
休む間もなく、近くにいた1体にビームガンを横腹に連射。
そして、素早く最後の一体に近付き、キラーサーベルで相手の喉元を噛み切った。

「バトルオールオーバー、バトルオールオーバー!
ウィナー、チーム・アウトローズ!」

ジャッジマンが勝ち名乗りを上げるが、
ベガは1人つまんなそう。

「つまんないの。
早く勝ち上がって、もっと強い相手と戦いたいな。」

そう言うと、とっとと引き上げていった。

 

「あれが秒殺っていうんですかね。」

「ベガとニャンニャンの実力の差がものをいったな。」

ジェミーとバラッドが感想を言う。

「博士、そう言えばバーサークフューラーってどうなったんだ?」

ビットが質問をぶつける。
詳しくは知らないようだ。

「あのゾイドだったらラオンに引き取られたよ。
ベガに強くなるまで預かってくれ、と言われたそうだ。」

トロスが答えた。
すると、今度はリノンから。

「パパ、その話、誰から聞いたの?」

「本人からだよ。
ゾイドバトルで決着をつけるって意気込んでたな。」

「あのおっさんも相当しつこいな。」

ビットの言葉にみんなも呆れ顔。
ジェミーはちょっと複雑な顔。
なんたって、彼の親父さんのせいでこんな事になったのだから。

「まぁ、またベガと戦えれば嬉しいけど。」

「俺は・・・。」

「“賞金がもらえればそれでいい”って言うんでしょ。」

バラッドが言おうとした科白をリノンが先に言う。
彼はしてやられたという顔だ。

「さてと、料理も無くなったことだし、そろそろお開きにするか。」

「そうですね。
じゃあ皆さん、明日7:00にここへ集合してください。
ついでに向こうの施設でゾイドの点検をしましょう。」

ジェミーの言葉に頷くと、彼等はその場を後にした。

 

 次の日の朝、ブリッツの面々はホバーカーゴで移動。
今回、集会が行われるのはビット達がベガと初めてあったアミューズメントパークだ。
そこに大会本部であるウルトラザウルスが置いてある。

「博士、到着しました。」

「よし。
みんなはゾイドを移動させた後、テーマパークでゆっくりしていてくれ。」

4人がそれぞれ返事をした後、ゾイドを整備ドックへ移動させる。

 

 トロスが集会に出ている間、ビットはテーマパークでゲームに打ち込んでいた。
そのゲームとは・・・、ビットとジャックがベガに負けたシューティングチャレンジ。
そして、その相手は・・・、

「今度は負けないぜ、ベガ!」

「こっちこそ。
そっちのお兄さんも負けないようにね。」

「うるさい・・・。
まっ、せいぜい秒殺されないように気をつけるんだな。」

お分かりだと思いますが、ベガとジャックです。
そして、もう1人・・・。

「どうでもいいから始めてくれよ・・・。」

こちらは彼等の知り合いではない。
彼等はただの一般参加としか思っていないようだ。
だか、それが間違いであると言うことを後で知ることとなる。
ちなみに彼等の仲間は外で観戦中。
その中にはナオミもいた。
集会にはレオンが出席いているようだ。

「バトルモード6992、シューティングチャレンジ、
レディー・・・ファイト!」

ゴングが鳴り、ゲームが始まった。
最初、3人がかりで邪魔者を始末しようとする。
だが、彼等の放った弾は簡単に避けられてしまった。

「何処、狙ってるんだよ。」

『うるさい!』

異口同音に叫ぶが、弾が当たらないのは事実である。
そう言っている間にも相手の射撃が命中精度を増してきた。

「しょうがない。
素人相手に使いたくなかったけど・・・。」

ベガのコマンドが動きを止めた。
彼が得意な未来位置の予測である。
彼目掛けて相手のコマンドが迫ってきた。
ねらい通りに。

「もらった!」

わざとずらしたターゲッティングに向けて、ベガが撃った。
相手のコマンドがそこに来ると同時に。
だが、

「外しただって・・・。」

相手のコマンドのすぐ上を弾が通過したのだ。
そして、彼が驚いた隙を狙って、相手が彼を仕留めた。

「おいおい、キング。
何処狙ってるんだよ?」

「全くだ・・・。」

やれやれといった感じでビットとジャックが呟く。
一方、傍観者サイドでは、

「どうしたんでしょう。
彼らしくありませんね。」

「未来位置を外すなんてな。」

サンダースとバラッドも首を傾げている。
すると、

「いえ、相手は素人なんかじゃありませんよ。」

ジェミーが静かに言った。

「あいつは機体のバランスをわざと崩して、弾を避けたんだ。」

ストラが後に続いた。

「と、いう事は・・・。」

「相手もウォーリアーだ。
しかも、凄腕の、な。」

ストラの言葉にみんなが唖然とする。
そして、画面にはジャックがやられた姿が映っていた。

「これで最後だ。」

相手は弾を2発撃った。
一方はビットに向かって、もう一つは少し角度をずらして右方向に。
ビットは弾を避けるために左へ飛んだ。
そう、相手から見て右に。

「あちゃ〜。」

ビットがボックスで頭を抱えた。
相手がずらして撃った弾が当たったのだ。
そして、ゲームが終わった。

 

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