「ライガー、インストレーション・システム・コール、シュナイダー!」

ロボットアームが擦り傷だらけのイエーガーユニットを取り外す。
そして、ブレードが付いた橙色のパーツを取り付け始めた。

「ゼロ・シュナイダー、C.A.S.コンプリーテッド!」

「ゴー、シュナイダー!!」

カタパルトから颯爽と登場するライガーゼロ・シュナイダー。
スラスターを展開して、急ぎ仲間のところへ向かった。

 

 ストラ達の戦況は決していいとは言えるものではなかった。
ベガが到着したときには、かなり押され気味になっている。

「ウィーゼルユニット・フルバースト!!」

リノンのガンスナイパーが再び全武装を発射するが、
すべてがE.シールドに阻まれてしまう。

「やっぱりだめか〜。」

先程からこの調子らしく、この日何度目かの溜息を吐く。
彼女の攻撃で噴煙が上がり、それに紛れてブレードライガーが突っ込もうとする。
だが、

「ブレードライガーらしい戦法だな。
だけど、俺達には通用しないぜ!」

ジェノブレイカーが腕を伸ばし、ライガーの足を掴む。
そして、腕を戻しながらブンブン振り回し、エレファンダーの方に投げ飛ばした。

『ぐわっ!!』

それぞれの機体が激突し、ストラとレオンの声が重なる。
2機はもう少しでシステムフリーズを起こし損なった。

「結構丈夫だな。
まぁ、これぐらいでやられるんじゃ、俺達の敵じゃないがな。」

ケインが倒れ込んでいるライガーとエレファンダーを見ながら感想を漏らす。
すると、突然ブレイカーの機体から2回爆煙が上った。

「何だ、いったい。」

だが彼は驚かない。
弾が当たったのはフリーラウンドシールド。
衝撃は伝わるものの、ダメージといえるものは微塵もないのだ。

「ちぇっ、手応えがあったと思ったのにな・・・。」

弾(ビーム)を撃ったのはベガ。
相手にダメージがなくて少しガックリしている。

「バーサークフューラーか。
面白そうだな。」

そう言って、ブレイカーをフューラーの方に向け、足のキャノン方を発射。
反射的にシールドを張って防御する。
なおも連射を続けるが、すべてがシールドに弾かれる。
すると、さっきのブレードライガーと同じように、
噴煙に紛れてブレイカーが突っ込んできた。

「いったい、何を?」

ベガが驚いていると、
ブレイカーがシールドに巨大バサミ、エクスブレイカーを突き立てる。
次の瞬間、ハサミがシールドを突き破った。

「えっ!!」

「ジェノのパワーを甘く見たな!」

そのままエクスブレイカーでフューラーの首に掴みかかろうとすると、

「バスタースラッシュ!!」

シュナイダーが5本のブレードを前に展開して突進してきた。
ブレイカーはフューラーを蹴り飛ばし、シールドを展開。
両者はその衝撃ではじき飛ばされる。

「なんてデタラメな反応なんだ。」

ビットはケインの反応スピードに驚いていた。
そのケインは、

「助かったぜ、ジェノ。」

とジェノブレイカーに礼を言う。
さっきの反応はブレイカー自身のものだったのだ。
ビットはもう一度バスタースラッシュを試みる。
だが、今度は背中のブースターを点火し、長距離ジャンプで逃れた。

「飛んだ!」

それはあたかも空を滑空しているようにも見える。
百メートル単位で距離をとると、ブレイカーはフットロックで足を固定。
口の中から砲身がスライドすると同時に、尾のジェネレーターを開く。
そして、咥内に光の弾が見え始めた。

「まずい!荷電粒子砲だ!」

ベガが叫ぶのと同時に、ガンスナイパー以外の全機がE.シールドを展開する。
リノンはちゃっかりシュナイダーの陰に隠れる。
チャージからわずか5秒後、

「喰らえ!!」

ケインの叫びと同時に荷電粒子砲が発射された。
周りの土砂を巻き上げながら、凄まじいスピードで接近してくる。
そして、着弾と同時にゾイドの周りの地面が爆発と共に抉られた。
土煙が収まると、シールドを展開したままのライガー達が姿を現す。

「ふぅ、危なかったぜ。」

「荷電粒子のチャージが早すぎるよ。
どうなってんの?」

ベガが疑問を上げる。
すると、通信回線が開き、トロスの声が聞こえてきた。

『それは、ジェノブレイカーの背部にある荷電粒子コンバーターのせいだな。
あれは荷電粒子を集めてチャージ時間を短縮すると同時に、
荷電粒子砲自体のパワーを上げる。
おそらく単発だけの威力ならバーサークフューラー以上だろう。』

「正に化け物だな。」

ストラが率直に感想を述べる。
その時、ビットがあることに気付いた。

「おい、あいつ・・・、また撃つつもりだぞ!」

全員がブレイカーの方に目を向けると、咥内に光の弾が出来ていた。
全員の顔色が青ざめていく。

「まさか・・・、連続して撃てるのか?」

レオンがポツリと呟く。
すると、

『あ、忘れてた。
荷電粒子コンバーターのせいで連射できるんだよ。
しかもジェノブレイカーのゾイドコアエネルギーは相当高いから、
エネルギー切れはないと思うよ。』

『それを先に言え!!』

お気楽に言うトロスにビットとリノン、ベガが声を重ねて怒鳴る。
そして、その声と第2波の発射はほぼ同時だったことを付け加えておこう。

『どわあぁぁっっ!!』

この時、全員がシステムフリーズ、もしくは死を覚悟したとか・・・。

 

 その頃、バラッド達のバトルも白熱していた。

「喰らえ!」

フォックスが併走しているセイバーにレーザーバルカンを発射。
リッドはスピードを緩めて避ける。
そして、フォックスの後ろに付いた。

「考えが甘かったな。
・・・これで最後だ!」

後方からレーザーを発射するセイバー。
だが、フォックスは右へ左へと体を振ってものの見事に避けた。
そして、バラッドが待っていたのはこの瞬間だった。

「終わりなのはお前だ!!」

フォックスの尾からミサイルみたいなものが発射、
その中から網が出てきてセイバーの動きを封じた。

「何だ、これは!?
どわあぁぁっっっ!!」

それは相手の動きを封じて、強烈な電撃を浴びせる電磁ネット砲。
リッドのセイバーは電撃を浴びながら、その場に倒れる。
そこにナオミの射撃、セイバーのコンバットシステムは完全に停止した。

「やっと片づいたな。
さて、ビット達のところに行くか。」

勝利の喜びに浸る暇もなく、シャドーフォックスはビット達のところへと走った。

「あっ、待ってよ、バラッド!」

ナオミのガンスナイパーもその後を追おうとする。
だが、彼女を待っていたのは悲劇だった。
突然、彼女の愛機の横を緑色と黒の疾風が通ったかと思うと、
ガンスナイパーは衝撃波で吹っ飛ばされていた。
相当強い衝撃を受けたため、機体はシステムフリーズ。

「もぅ、なんでこうなるのよ〜!!」

あまりにもあっさりやられたため、頭を抱えるナオミ。
お分かりだとは思いますが、やったのはレイノスとSSS。
ちなみに彼らはその事には気付いてないが・・・。
バラッドはバラッドでとっとと行ってしまった。

 

 そして、空中戦も終盤へ。
レイノスの後をSSSが追ってきていた。
流石にスピードでは負けている様子で、
盛んに旋回を繰り返している。
さっきのナオミはそのとばっちりを喰ったのだ。

「しつこい奴だ。」

先程から後ろに付けられていて、荒鷲状態のジェミーは苛立ちを隠せない。
すると、

「坊やとお嬢さんにはそろそろ消えてもらうわ。」

ピアスのソーダーがソードを展開してジェミーの真正面から突っ込んできた。
2人まとめて切り裂くつもりのようだ。
シエラも慌ててソードを展開する。
唯一無防備なのはジェミーのレイノスだけだ。

「好き勝手言ってくれるな。
だが、『天空の荒鷲』をなめるなよ!!」

赤いストームソーダーが間近に迫ったとき、レイノスは急上昇を始めた。
そして、挟んだ相手がいなくなった両機は当然正面衝突の形に。

「嘘でしょー!」

「くっ!」

彼女達は機体を捻って何とか正面衝突だけは避けたものの、
シエラの方のソードがピアスの方の羽を切り裂いてしまう。
そして、ジェミーは無防備なSSSの背中をレーザーで撃った。
2機とも墜落して、2人は脱出。
空中戦はジェミーの勝利に終わった。

「楽しかったぜ。
また遊んでやるよ、“お嬢ちゃん達”!」

『“お嬢ちゃん”って言うな!!』

彼女達がパラシュートでゆっくり降下しながら、
顔を真っ赤にしてそう叫んだのは余談である。

 

 忘れてはいけない、ジャックとレイスの因縁の対決は、

「行くぜ、ジャック!」

「望むところだ!」

向き合っていた両機が一斉に走り出す。
瞬発力が高いライトニングサイクスは一瞬にして最高速になる。

「うおおぉぉっっ!!」

「うおぉりゃああぁぁっっ!!」

ある程度近付いた瞬間、両機が一斉に飛んだ。

ズッガーン

鈍い音と共に両者が倒れた。
ストライククローのカウンターのダメージは予想以上だ。
そして、起きあがったのも両方共。
だが、橙目のライトニングサイクスの左足から火花が散った。

「何っ!?あ、足が・・・!」

通常、高速型の四つ足ゾイドは足を1本やられても、
3本で歩行ぐらいは難無く出来る。
だが、ライトニングサイクスは4つの足全てで体重とスピードを支えているため、
1本失っただけでも、殆ど歩けなくなってしまうのだ。
最高速ゾイドの弱点である。

「勝負あったな、レイス!!」

ジャックはレーザーを放って、とどめを刺す。
レイスの愛機はそこに崩れ落ちた。

「やっと決着がついたな。」

レイスに言ったのか、それとも自分自身に言ったのか、
ジャックがそんなことを口にする。
すると、

「もらった!!!」

その声と共にレーザーがサイクスを襲った。
完全に油断していたので、攻撃はもろにヒット。
彼の愛機も崩れ落ちた。

「な、何だ、いったい?」

その上空にはジェミーのレイノスが。

「卑怯だぞ、お前!」

「ここは戦場だ。
油断した方が悪い。」

ジャックの文句を聞き流して、レイノスは大空に消えていった。
そして、ジャッジマンが一言。

「チーム・ライトニング、リタイア!」

 

 ジェノブレイカーが荷電粒子砲を発射する。
もうこれで6発目である。
この時の発射でエレファンダーのエネルギーシールドが破れた。

「くっ、ここまでか・・・。」

ストラが苦虫を噛み潰した顔で魔装竜を目にする。
血の様に紅いその機体からは傷は微塵も見付からない。
するとその時、

「ストライクレーザークロー!!」

バラッドのシャドーフォックスがブレイカーに必殺技をかます。
その一撃で背中のブースターを損傷した。
初めて魔装竜が傷ついたのだ。

「リッドの奴、やられやがったな。
だから、まだまだっていうんだよ。
だいたい、機体性能に頼り過ぎだ。」

不甲斐ない弟に愚痴を零す。
そう言っている間にもフォックスは旋回してもう一撃を喰らわそうとしている。
だが、

「そうは問屋が卸さないぜ!」

腕を伸ばしてフォックスの足をとらえた。
そのまま引き戻し、それを強引に引っ張り込む。

「くそ、放しやがれ!」

彼が叫ぶが、相手がそんな願いを聞き入れる訳もなく、
フォックスはブレイカーのすぐ近くまで寄せた。
そして、そのままフォックスを思い切り踏みつける。

「ぐわあぁぁぁ!!!」

「バラッド!!」

バラッドの叫びと共に、フォックスのコンバットシステムがフリーズ。
腹の装甲板が砕け散り、内部の機械が露出していた。

「さてと、そろそろ終わりにするか。」

言うが早いか、ブレイカーは足のブースターを点火し、
エレファンダーの方に突進した。
とっさにシールドを展開するが、さっきベガにやった方法でそれを破る。
そして、エクスブレイカーで特徴である鼻を切り裂いた。

「どわあぁ!!」

たまらずエレファンダーはシステムフリーズ。
すると、

「フューラー、いっけぇ!」

ベガが荷電粒子砲を発射した。
狙いはジェノブレイカーのすぐ横。
だが、ブレイカーはフットロックで足を固定し、シールドを展開。
広がったシールドで荷電粒子は拡散し、
同時に起こる衝撃波もフットロックで持ちこたえた。

「嘘・・・。」

「あばよ、キング!」

次はケインの番。
再びブースターを噴かし、頭のソードを下ろしてフューラーに突っ込んだ。
ベガも超高速ドリル・バスタークローで迎え撃つが、フリーラウンドシールドで防がれてしまう。
そして、フューラーの口の中にソードを突き立てた。
流石のフューラーも口から煙を吐きながら、システムフリーズを起こす。

「チーム・アウトローズ、リタイア!」

魔装竜の動きは止まらず、次はブレードライガーに向かう。

「ライガー、シールドの全エネルギーをブレードに集中しろ!!」

レオンの指示にブレードライガーが吼えて、走り出した。
ブレードから赤い光が漏れている。
そして、ブレイカーと交叉した。

「どわあぁぁ!!」

倒れたのはライガーの方。
だが、ブレイカーの方もただでは済んでいなかった。
魔装竜の横にエクスブレイカーが地面に刺さった状態で、フリーラウンドシールドが落ちたのだ。

「ほぅ、ジェノのシールドを切り落とすとは。
流石はブレードライガーと言ったところか。」

「チーム・フリューゲル、リタイア。」

ジャッジマンがリタイアを告げる。
これでフィールドに残ったのは、
ジェノブレイカー、ライガーゼロ、ガンスナイパー、そしてレイノスの4体。
その時、

「セブンブレードアタック!!」

ゼロ・シュナイダーが7本のブレードを前に向けて走ってきた。
とっさにブースターを噴かして、横にスライド。
紙一重でかわしたかに見えた。
だが、橙の風が通過したと同時に、足からウエポンバインダーが落ちた。
先程シールドを落とされた側だ。

「ちっ。」

腕を伸ばして、シュナイダーを捕らえる。
そして、残っているエクスブレイカーで首根っこを挟んだ。

「くそ、放せ!」

「放せって言われて、放す奴がどこにいる!!」

そう言いつつも、徐々にハサミの間を縮めていく。
このままではライガーが負けてしまう。
すると、

「ウィーゼルユニット、フルバースト!」

リノンのガンスナイパーが砲弾を一斉に発射。
その衝撃でハサミが緩まった。
その隙をついて、ライガーが素早く脱出した。

「ふぅ〜、助かったぜ。
サンキューな、リノン。」

「どういたしまして。
でも、どうするの?」

2人がそんなことを話していると、
ブレイカーが荷電粒子砲の発射体型をつくる。
だが、突然ブレイカーの周りで爆発が連続して起こった。
そのおかげで体制が崩れてしまう。

「大丈夫ですか、ビットさん!」

声をかけてきたのは荒鷲から戻ったジェミー。
駆けつけたレイノスがレーザを撃ったのだ。

「ああ、なんとかな。」

礼を言いながらも、ジェノブレイカーをじっと見る。
すると、

「2人とも、少しだけ時間をくれるか?」

『えっ!!』

「俺に考えがある。」

そう言うと、ビットはホバーカーゴに戻っていた。
何がなんだか分からない2人は、そのまま戦闘を続けることに。

 

「博士、ゼロのパーツの準備を頼む!」

カーゴに入るなりそう叫ぶビット。

「ゼロを?
いったい何で?」

「イエーガーはもう使えないからな。
とにかく急いでくれ!」

「よ、よし、分かった。」

トロスが急いでコンソールを操作する。
そして、ロボットアームが稼動した。

「ライガー、インストレーション・システム・コール、ゼロ!」

 

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