「魔装竜降臨」
〜対決、チーム・バスターズ〜

 

 バトル前日の夜、ブリッツのメンバーは今まで経験したことのない戦いに備え、
作戦室でデータを検証しようとしていた。

「お待たせ。」

「もう、遅いわよ、ビット〜。」

ビットが作戦室に入ると、そこにはもう他のメンバーが揃っていた。
そして、最初に聞こえたのはリノンの文句。

「まぁ、そうカリカリするなって。」

「じゃあ、早速始めましょうか。」

ジェミーがコンソールのボタンを押そうとする。
だが、ビットがそれを制した。

「ちょっと待ってくれ。
何でこいつらまでいる訳?」

ビットが指さす先には、なんとナオミやレオン、ハリーにジャック、タスカー姉妹、
おまけといわんばかりにアウトローズの面々まで座っていた。

「俺たちだって、バスターズのデータがみたいからな。」

「だったら自分のところで見ればいいだろ。」

当然ともいえるつっこみを入れるバラッド。
だが、帰ってきた返事は、

「それが、生憎と故障中でな。」

「うちもだ。」

「俺たちのところも。」

「恥ずかしながら・・・。」

レオン、ハリー、ジャック、ストラの順でそう言われ、バラッドやリノンも呆れ顔。
トロスだけは「まぁ、いいんじゃないの。」とのんきに承諾。

「じゃ、じゃあ、始めますよ・・・。」

顔を引きつらせながらコンソールのボタンを押すジェミー。
彼も内心呆れていた。
そして、画面にはセイバータイガーの姿が。

「これがバスターズのゾイドです。
まず、セイバータイガーAT。
これは、ケインの弟、リッド・アーサーの機体です。」

「あの無愛想な奴か。」

そんな風に覚えてたのか、バラッド。

「アーサー兄弟はゾイドのディーリングショップをやっていて、
このリッドが機体の整備を担当しているそうです。
そして、このセイバータイガーにも独自の改造を施していて、
測定データではその速度は285q/hに達しています。」

「ほう、結構やるもんだね。」

感心しているのはラオン。
彼の専門もゾイドの改造だ。

「ところで、ディーリングショップをやってるって言ってたけど、
そのネタどっから仕入れてきたの?」

リノンがジェミーに質問をぶつける。

「それは・・・。」

「ああ、俺が知り合いのジャンク屋で聞いてきた。」

答えたのはビット。
さすが元ジャンク屋、顔が広い。

「続けます。」

ジェミーが画面を切り替えた。
次の画面にはストームソーダーが映し出されている。

「次は彼らの妹、シエラ・アーサーです。
彼女の機体はストームソーダー、ステルスタイプ。
かなりの強敵になることは間違いないでしょう。」

「あの時、遠くにいた娘ね。
あなたと同じぐらいの年だったわよね、確か。」

ピアスが昨日の光景を思い出して言う。
彼女もストームソーダーに乗っているので、戦うだろうと予感しているのだ。

「次にいきます。」

再び画面を切り替えるジェミー。
次の画面にはライトニングサイクスが。

「バスターズの雇われウォーリアー、レイス・クリスナーの機体です。
彼自体かなりの凄腕で、今はこのチームに落ち着いていますが、
以前はフリーの賞金稼ぎで数々の試合を戦ってきています。」

「レイス・クリスナーか・・・、懐かしいな。」

そう漏らしたのはジャック。

「知り合いなの?」

「昔、一度だけやったことがある。
結果は引き分けに終わったがな。」

クリスの質問にコーヒーを飲みながら答える。

「勝手にコーヒーを飲むなよ・・・。」

ビットのつっこみを無視して、ジェミーが話を続けた。

「次はケイン・アーサーの機体なんですが・・・。」

「どうかしたのか?」

彼が言葉を止めたので、レオンが不思議に思い訪ねる。

「実は、問題なのがこの機体なんです。」

そう言ってジェミーが画面を切り替える。
するとそこには、紅い、ジェノザウラーみたいなゾイドが写っていた。

「このゾイドは・・・、もしかして!!」

トロスが反応を示す。

「その通りです。
これは最強といわれた幻のゾイド、“ジェノブレイカー”です。」

「ジェノ・・・ブレイカー・・・。」

その場にいる全員が息を飲む。
幻と言われたゾイドを目の当たりにしているのだから、当然といえば当然だ。

「ジェノザウラーのオーガノイド進化体だ。
かつて、あのデスザウラー以上と言われ、最強ゾイドの名を欲しいままにした機体。
まさか実在していたとは・・・。」

トロスが延々と説明をする。
そして、ジェミーが後を続けた。

「この機体のデータは恐るべきものです。
格闘戦力、砲撃力、機動力、防御力ともにトップクラス。
どのゾイドにも引けを取りません。
現在分かっているのはこのぐらいです。」

「今回のバトルは武装制限を完全に無くしている。
よって、ジェノブレイカー最大の武器、荷電粒子砲も使ってくる事が予想される。」

「ちょっと待ってよ。
それって直撃したらゾイドもパイロットも助からないじゃない。」

「さすがに事故じゃ済まされないぞ。」

トロスの注意にリノンとバラッドの文句が飛ぶ。

「もちろん、パイロットを死なせたら反則負けになる。
だが、荷電粒子砲は強力な衝撃波も発生させる。
たぶん、相手はそれを狙ってくるだろう。」

「撃ってきたら、E.シールドを持ってるゾイドの陰にでも隠れるんだね。」

ラオンとトロスがそれぞれ言う。
そして、全員の視線がレオンとストラに集まった。

「分かった、分かった・・・。」

「我々が守ればいいんだろう・・・。」

半端呆れながら言う2人。
まぁ、命がかかってるんだから、しょうがない。

「リノン、君は俺が守ってみせる。
例え、命に代えても。
このハリー・チャンプ、君のためにE.シールドを装備しようじゃないか。」

ハリーがいつもの口説き文句を言う。
おそらく「ハリー、私のためにそんな高い装備を・・・。」とでも言って欲しかったのだろう。
だが、

「ビット、確かシュナイダーにE.シールドがついてたわよね。
だったらそれで守ってほしいなぁ。」

「相変わらず、ちゃっかりしてるよな。」

リノンとビットの間でそんな会話が行われていたため、
ハリー、あえなく撃沈。
ほかのみんなは苦笑いでそれを見ていた。

「しかし、ケインはどこからそんなゾイドを仕入れたんだ?」

疑問をあげたのはバラッド。
すると、

「おそらく、バックドラフト団から盗まれたものだな。」

ストラがそんなことを言うものだから、全員が驚きの顔。

「それってどういう事ですか?」

「私も初耳よ。」

「僕も。」

アウトローズの面々がストラに疑問の声を上げる。
それに応じて、彼は静かに話し出した。

「今から2年前の事だ。
当時、アルタイルがアルティメットXを探していたことは知っているだろう。
その時に遺跡から偶然発見されたゾイドがジェノブレイカーだ。
アルティメットXではなかったものの、かなりの戦力になると幹部の間で騒がれていた。
だがある日、保管していた基地からそれは忽然と姿を消した。
壁に巨大な穴を残してな。
そして、幹部達はこの事を秘密裏に処理した。
知っているのもわずかにしかいない。」

「バックドラフトから盗んだのか、ケインは。」

「推測の域を出ないが、おそらくは・・・。」

バラッドの言葉にストラがさらに付け加える。

「まぁ、明日のバトルは楽しめそうだぜ。」

「じゃあ、これでバスターズの戦力分析は終わりにします。」

ジェミーがそう言うと、突然ブリッツのメンバーが立ち上がった。
そして、

「ここから先は秘密事項なので部外者は出ていって下さい。」

『全員退場!』

そう言いながら、その他全員を押し退ける。

「そんな〜、リノ〜ン!」

ハリーの叫びも空しく、扉は無情にも閉められた。

「あ〜あ、折角ブリッツの作戦が聞けると思ったのに・・・。」

「流石はジェミーと言ったところだな。」

ベガとレオンを初め、全員がガッカリ。
すると、

「心配するでない、烏合の衆。」

そう言うとラオンはスピーカーを取り出した。
どこからという質問は止めていただきたい。

「こんな事もあろうかと、さっきの部屋に盗聴器を仕掛けておいたのだ。
これで・・・。」

だが、ラオンの自信はまさしく“こっぱみじんこ”に砕け散った。
何故なら、スピーカーから聞こえたのは、

ブツッ

という耳を劈く雑音。
その瞬間、全員の視線が期待から軽蔑に変わる。

「壊されたわね・・・。」

もう誰も彼に話しかけようとはせず、
結局、その場でお開きとなった。

 

 その頃、作戦室では、

「まったく、油断も隙もあったもんじゃない。」

と、トロスが盗聴器らしき機械を握りつぶしていたとか。
彼の方が油断も隙も無いと思うが・・・、どうであろう。

 

 そして、その頃バスターズも作戦会議をしていた。

『オーガノイドシステム?』

「ああ、ライガーゼロとバーサークフューラーに搭載されている、
学習能力を備えた完全自立型プログラムの人工知能のことさ。
こいつはかなりの強敵になるだろう。
なんたって、一回戦ったゾイドの動きを覚えてしまうんだからな。」

ケインが詳しく説明を入れる。
他の面々は不思議そうな顔をして聞いていた。
最近ではこのようなデータも公開されている。
あくまでフェアなバトルを実行しようとしている証だ。

「伝説のゾイド、アルティメットX・・・か。」

「確かに強敵だな。」

リッドとレイスがそれぞれ漏らす。

「だが、心配することはないさ。
流石に初めて見るジェノブレイカーの動きまでは分からないだろう。
だから、覚えられる前に叩く。」

「随分と簡単に言うわね、ケインお兄ちゃん。」

シエラが自信満々に話すケインにつっこみを入れる。

「とにかく俺はジャックとやる。
奴とはまだ決着がついてないからな。」

「せいぜいやられないように暴れるんだな。」

やる気満々のレイスにリッドが半分からかうように言った。

「空中戦は任せておいて。
全部叩き落としてやるわ。」

シエラもワクワクしながら言う。
そんな彼女にリッドが「落ちるなよ」と釘を差す。

「リッド、そう言うお前はどうなんだ?」

「俺はいつも通りやるよ。
他にも楽しめそうな相手がいそうだしね。」

ケインの言葉にも至って冷静に答える。
彼の性格には他のメンバーもうんざりしている様子だ。

「まぁ、いいさ。
ジェノも暴れたがってるし、本当に楽しめそうだ。」

「ゾイド本来の力を見せつけてやりましょう。」

シエラのこの言葉に全員がああ、と頷き、会議が終了した。

 

 果たして、勝利の栄冠はどのチームに輝くのか?
Sクラスのチーム・ブリッツか、はたまたAクラストップのバスターズか、
それとも、紅き閃光のフリューゲルか、コンビネーションのライトニングか、
無法者達のアウトローズか、大穴ねらいでチャンプか?
さぁ、みなさん、賭けて・・・。(ドカ、バキ、ゴス)
・・・失礼しました・・・。
では、次のページに〜、続く!

 

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