そして、バトル当日、ホバーカーゴが指定ポイントに到着した。
ナオミとレオンはビット達が寝る前に帰り、
街のレストランでバトルの行方を見守っている。
その場にはアスカとバスターズの面々の姿も。
「ライガー、インストレーション・システム・コール、イエーガー!」
バトルの前にパーツの換装を行うビット。
機動力に特化したイエーガーユニット。
今回ハリーの使ってくるゾイドが分からないので、様子見に選んだのだ。
青いパーツを付け終わり、ライガーが上部カタパルトに運ばれる。
「ライガーゼロ・イエーガー、C.A.S.コンプリーテッド!」
「ゴー、イエーガー!」
カタパルトの電磁誘導により、滑るように発進、
そのまま目の前の地面に足をつけた。
ちょうどその時、目の前にハリーのホエールキングが。
「いったい、どんなゾイドで出て来るんだ?」
「さあな。
だが、一つ言えることは、今回はハリーも必死だ。
だから、この戦いは他に類を見ない激戦になるのは間違いない。」
「この勝負、少しでも油断を見せた方の負けね。」
レストランでのリッドとケイン、アスカの会話。
全員も3人の意見に耳を傾けながら、画面に見入っている。
今回、かなり名のあるチーム・チャンプのリーダーが、
引退するかも知れないと言う事もあり、他のウォーリアーも画面に釘付けになっていた。
「ハリーのゾイドが出てくるわよ。」
ナオミの声で6人の目がイエーガーからホエールキングに移る。
そして、ゾイドが出てきた瞬間、全員が我が目を疑った。
「ちょっと待てよ。
あれって、まさか・・・。」
「ああ、間違いない・・・。
とんでもない物を出して来たな・・・。」
「あんなの反則よ!」
レイス、レオン、シエラがそれぞれ口にする。
4人も、店の客も、それを見た全員が驚いていた。
当然、ホバーカーゴ内の中でも衝撃が走っていた。
「また、金をかけまくったもんだな。」
「ビットさん、大丈夫でしょうか?」
バラッドとジェミーが口に出す。
後方支援組が騒いでいる中、
ビットはジッと相手を見据えていた。
「ゴジュラス・ジ・オーガ・・・。」
そう、あのゴジュラスの重武装版、
最強のゾイドと噂されているゴジュラス・ジ・オーガ。
それが彼の、ライガーの目の前に立っているのだ。
こんなゾイドとやり合うのは、ハッキリ言って無謀である。
「随分と見せつけてくれるじゃねーか、ハリー。」
「お前にはこのぐらい必要かと思ってな。」
ビットとハリーが決戦前にウィットな会話を楽しんでいる。
ビットは驚いている反面、武者震いを感じていた。
やがて、ジャッジマンが到着。
試合開始までの秒読みが始まった。
「この地点より半径20q以内は、
ゾイドバトルのバトルフィールドとなります。
競技者及び、その関係者以外は立入禁止です。
危険なので直ちに退去して下さい。
フィールド内、スキャン終了。
バトルフィールド、セットアップ!
ビット・クラウドVSハリーチャンプ、
バトルモード0992、レディー・・・FIGHT!」
ゴングが鳴り、王者の決戦の幕が上がった。
まず最初に仕掛けたのはハリー。
ロングレンジバスターキャノン、通称ゴジュラスカノンをイエーガー目掛けてぶっ放した。
だが、それを易々受ける程、ビットはお人好しでもなければバカでもない。
イエーガーの性能を生かして、素早く避けた。
「そんな弾、いくら撃っても当たらないぜ!」
ライガーがブースターを点火して、一気に加速、
爪を光らせながら、ゴジュラスの後ろに回り込んだ。
「行くぜ!
ストライクレーザークロー!」
必殺のレーザークローを振り下ろすライガー。
すると、
「そう来ると思ったぜ。」
突然、ゴジュラスの周りに光の壁が現れて、
レーザークローごとライガーを弾いた。
そのまま背中から地面に着地する。
「ぐわぁ!」
一回バウンドした後、横倒しの状態になる。
ライガーはその数秒後に素早く体勢を立て直した。
「くそ、E.シールド付かよ・・・。
ラオンのおっさんの仕業だな・・・。」
そう、ゴジュラスにE.シールドを付けたのはラオン。
ただでさえ攻撃力が高いオーガが、防御力までアップしたのだ。
「どうだ、攻撃力、防御力ともジェノブレイカー並にアップしたゴジュラス・ジ・オーガは?
ゴジュラスの限界を超えたゾイド、その名も・・・、
ゴジュラス・ハリー&ラオンスペシャルだ!」
「そのままじゃねーか・・・。」
呆れながらビットが呟く。
他のメンツも完全に呆れていた。
特にこの輩は・・・。
「あのネーミングセンスの無さ、どうにかならないかな〜。」
「直せるんだったら、とっくに直してるわよ。」
「呆れて物も言えないな・・・。」
「あれが我々のオーナーだ。
大目に見てやろう・・・。」
お分かりだと思いますが、アウトローズの面々です。
上からベガ、ピアス、サンダース、ストラの順。
一方、バトルフィールドでは激しい戦いが続いている。
「確かに、攻撃と防御はジェノブレイカー並だ。
けど!」
ビットの言葉と共に、
ゴジュラスに向かって一直線に走り出すライガー。
「機動力はこっちが上だぜ!」
再び爪を振り下ろすが、またもシールドに弾かれてしまう。
今度はうまく着地したが。
「喰らえ!」
その隙をついて、ゴジュラスは脇腹のミサイルポッドを発射。
そのうちの数発がライガーにヒット。
「くそ!
イエーガーの攻撃力じゃ、あのシールドは破れない。」
そう判断すると、ビットはライガーをホバーカーゴに向かわせる。
「博士、パンツァーの換装準備を頼む!」
「分かった!」
ホバーカーゴに戻り、イエーガーユニットを取り外す。
「ライガー、インストレーション・システム・コール、パンツァー!」
ドラムが回り、ライガーの素体に重武装のパンツァーユニットを付け始める。
同時にホバーカーゴも移動し始めた。
「ライガーゼロ・パンツァー、C.A.S.コンプリーテッド!
ホバーカーゴ、サイドパネル、オープン!」
カーゴのサイドパネルが開く。
そして、そこからゼロ・パンツァーが姿を現した。
カタパルトが後ろにスライドし、
坂から滑り落ちるようにライガーが発進した。
「行くぜ、ハリー!」
ビットの目にスナイパーゴーグルが当てられ、
ゴジュラスに照準を合わせる。
「ハイブリットキャノン、ファイヤー!!」
ライガーの背中の砲塔が火を噴く。
それと同時にライガーの身体が後ろに強く押しやられた。
二つの砲弾が発射されると同時にハリーはE.シールドを展開、
弾はシールドに当たった。
「どわぁ!」
それと同時に彼の身体を強い衝撃が襲う。
エレファンダーのシールドを破る威力の攻撃だ。
ただで済むはずがない。
だが、
「シールドが・・・、破られてない・・・。」
ゴジュラスのシールドは健在だった。
「あっはっはっは!
そのシールドはバーサークフューラー以上の防御力だ。
トロスが作ったオンボロキャノン砲で破壊できる訳なかろう。」
ホエールキング内でラオンが高笑い。
一方、トロスはギリギリと歯ぎしり。
「ビットに勝ち目はないの?パパ。」
「悔しいが、あのシールドはかなり頑強だ。
ハイブリットキャノンを受け付けない程に。
しかも・・・、」
「ゴジュラスの砲撃力は他のゾイドの比になりません。
このままじゃ・・・。」
トロスとジェミーの問いにリノンの表情は曇るばかり。
「今度はこっちからだ!
喰らえ!」
ゴジュラスが全武装を放ってきた。
流石に動きの鈍いパンツァーでは避けきれず、全部着弾してしまった。
「ビット!!」
リノンの声が響く。
画面を見ていた全員が、まさか、と言う表情に変わった。
やがて爆煙が晴れる。
すると、そこには誇りまみれにだけなったライガーの姿が。
「はっはっはっは!
考えが甘かったな、ラオン。
こんな事もあろうかと、ケイン君のところに頼んで、
もっと頑丈な装甲に変えたのだ。
しかも、重さを変えずにな。」
今度はトロスがバカ笑い。
流石、抜け目のなさは天下一品だ・・・。
だが、依然ビットに勝ち目がないのは明白である。
不利でも有利でない状況なのだ。
「助かったけど・・・、
いったい、どうしたら奴のE.シールドを・・・。」
ビットが相手を見据えてそう言う。
(奴をよく見るんだ、よく考えるんだ。
絶対、風穴を開けてやる!)
こうしている間にも、格闘戦を挑もうとゴジュラスがゆっくり迫っていた。
すると、ビットがハイブリットキャノンを発射した。
何かが閃いた顔で。
ゴジュラスもシールドを展開して防御に回る。
「どうしたんだ?ビットの奴。
バカの一つ覚えみたいな攻撃をして・・・。」
「さぁ・・・。
でも、このままじゃハイブリットキャノンの弾が尽きちゃいますよ。」
カーゴ内でバラッドとジェミーが首を傾げている。
トロスだけは彼の企みに気付いたようだ。
レストラン内でも分かっているのはレオンとケインだけ。
他は訳が分からずにいた。
「どうした?
血迷ったか、ビット!」
「無駄だ、無駄だ!」
ハリーとラオンは勝利を確信していた。
そして、とうとうキャノンの弾が尽き、砲撃が終わった。
すると、
「まだまだ!」
今度は全部のミサイルポッドを展開、照準を合わせた。
「バーニング・ビッグバン!」
パンツァーの必殺技、バーニング・ビッグバンがゴジュラスを襲った。
さっきの比にならない衝撃がハリーにかかるが、
それでもE.シールドは破れない。
「そのシールドの強固さはお前のドラム缶並に強力だ。
つまり、デスザウラーの荷電粒子砲でも破れんわ!」
ラオンの声が響く中、舞い上がった土が段々と降りてきた。
すると、そこには依然無傷のゴジュラスと、
脱ぎ捨てられたパンツァーユニットの姿が。
「ビットは?
ライガーはどこに行った?」
ハリーが血眼になって探す。
その頃、ライガーはホバーカーゴの中にいた。
「博士!」
「シュナイダーの準備だろ。
もう出来てるよ。」
ビットが言う前にトロスがそう答える。
ビットの狙いが分かったので、
バーニング・ビッグバンを放つ前に、ジェミーに指示を出していたのだ。
彼は訳が分からずにいたが。
「よし、それなら話が早いや!
早速頼むぜ!」
ドラムが三度回転を始め、
7本のブレードが付いた橙色のシュナイダーユニットを取り付ける。
「ライガーゼロ・シュナイダー、C.A.S.コンプリーテッド!」
「ゴー、シュナイダー!」
ビットのかけ声と共にカタパルトからライガーが発進、
ゴジュラスに向かっていった。
「くそ、いつの間に・・・!」
ハリーがそれに気付き、ビームガンやらキャノン砲やらで応戦する。
ライガーはスラスターを展開して、それらを器用にかわしていった。
「どうした?
そんなちんけな砲撃じゃ、俺達は倒せないぜ!」
「くそ、ちょこまかと!」
苛立ちを隠しきれないハリーはどんどんと弾を撃つ。
すると、段々と命中精度が良くなってきて、
ライガーの足下にもレーザーが当たるようになってきた。
そして、とうとうミサイルの1発がシュナイダーの肩に当たった。
その拍子に失速してしまう。
それを見逃すわけもなく、ハリーは照準を合わせた。
「これでトドメだ!
リノンは貰った!!」
勝利を確信したのか、思わず笑みが零れる。
だが、
カチッ、カチッ、カチッ
「な、ど、どうした?
・・・た、弾切れだと〜!!」
コンソールを見て彼が叫ぶ。
その隙にライガーが体勢を立て直した。
「チャンスだ!
今までの借りを返してやろうぜ、ライガー!」
ライガーは一声あげると、
顔の脇にあるブレードを展開してゴジュラスに突っ込んだ。
『いかん、ハリー!
シールドを展開するんだ!』
「わ、分かってる!」
ラオンが動揺しているハリーにアドバイスを促す。
それに従い彼はシールド発生装置のスイッチを押した。
しかし、一向に作動しない。
そうしている内に腕に付いている4連装ショックカノンが落ちた。
「どうしたんですか?ゴジュラスは・・・。」
ジェミーが呟く。
すると、トロスが静かに説明を始めた。
「あんなに強力なシールドを装備したのと、
パンツァーの強力な砲撃、
そして、先程の弾の連射で、
ゴジュラスのエネルギータンク、及びゾイドコアのエネルギーが尽きたんだ。
その為、シールドを張るエネルギーが無くなった、と言う訳だな。」
「じゃあ、ビットはそれを狙って・・・。」
「さすが、うちのリーダーだな。」
リノンとバラッドが感心の色を示していた。
「しょうがない。
格闘戦で蹴りを付けてやらぁ!」
ハリーがゴジュラスを走らせる。
だが、機動力ではライガーが勝っていた。
「遅いぜ!
そんな反応じゃ、俺は捕らえられないぞ!」
「くそ!」
ハリーがいくら頑張ってもシュナイダーは捕まらない。
逆にドンドンと足や腕などを斬り付けられていった。
「ゴジュラスのスピードじゃないわ。
遅すぎる。」
シエラが呟く。
ショップで働いているだけあって、流石にゾイドに詳しい。
「連射のため、パーツの殆どは弾切れだ。
弾の無くなったパーツはただのお荷物になるからな。
それが、ゴジュラスの動きを制限してるのさ。
頭に血が上ってるから、
パーツの排除に気付く頃にはバトルは終わってるな。」
ケインが解説を入れる。
そして、彼の言うとおり、バトルは終わりを迎えようとしていた。
「そろそろ決めるぜ、ライガー!」
ライガーが距離を離し、5本のブレードを前に展開した。
「バスタースラッシュ!」
シュナイダーの必殺技、バスタースラッシュが炸裂、
ゴジュラスは足を切り裂かれて、その場に崩れ落ちた。
それと共に、ライガーが雄叫びをあげる。
「バトルオールオーバー、バトルオールオーバー!
ウィナー、ビット・クラウド!」
ジャッジマンが勝ち名乗りを上げる。
その瞬間、あちこちから歓声が上がった。
バトル終了後、
「くそ・・・。」
ゴジュラスの前で1人悔しがるハリー。
すると、そこにビットが駆け寄ってきた。
「落ち込むなよ、ハリー。
いい試合だったぜ。」
落ち込むな、と言ってもそれは無理というもの、
彼の慰めの言葉にもピクリとも反応しない。
出てくるのは溜息ばかりであった。
「こりゃ、重傷だな。」
ふぅ、とビットも溜息。
すると、
「なぁ、ビット・・・。」
ハリーがやっと声をあげた。
「何だ?」
「リノンを大切にしろよ!
なっ、なっ!」
ビットの両腕を掴んで訴えかける。
その顔は涙でグチャグチャだ。
「わ、分かった、分かった。
だから、涙ぐらい拭け・・・。」
彼の宥めが効いたのか、大人しく手を離すハリー。
そして、とぼとぼと帰っていった。
その背中は寂しさ以外は何も語ってくれそうにない。
こうして、ハリーの引退が決まった。
・・・かのように思えた。
だが、翌日、
「ビット、リノンを賭けて勝負だー!!」
突然、ハリーの声が格納庫に響き、
そこで昼寝をしていたビットが飛び起きた。
「勝負って・・・。
お前、引退したんじゃなかったのか?」
ビットが当然とも言える質問を投げかける。
すると、後ろからラオン博士が、
「いや、君達が結婚するまで、我々は諦めない。」
「そうだ、だから、俺と勝負しろ!」
どうやらラオン博士が唆したようだ。
これには流石のビットもお手上げで、
「あっ、バスローブ姿のリノン!!」
『何っ!』
そう言って、アホ2人が後ろを振り向いた隙に、ライガーに乗って逃げた。
もちろん、そんなものはなく、気付いたときには後の祭りな訳で・・・。
「くそ、逃がしたか。」
「今回は大人しく引き上げる。
だが・・・、
『俺達/我々は、絶対に諦めないからなーー!!』
2人揃ってライガーの背中にそう叫んだ。
どうやら、彼の引退は当分後になりそうだ・・・。
『勘弁してくれーーー!!!』
ビットの声が荒野に響いたとか・・・。
そんな彼等を笑うように、太陽は燦々と照っていた。
凄いオチで終わってしまいました・・・。
ハリーはまだまだ引退しそうにないですね。
ちょっと長くなってしまいました。
接続切れちゃった人はごめんなさい・・・。
ここでオリキャラの紹介です。
葉月さくらさんに頂いたアスカ・ファローネが登場!(拍手)
彼女は占いが得意なようです。
これから彼等とどう絡んでいくのか、見逃せませんよ。
詳しくはキャラ表を参照して下さい。
さくらさん、どうもありがとうございました。