「これで最後だ!」
バラッドがレーザーを発射し、無人のヘルキャットをうち倒す。
そこにビットとリノンが合流した。
「ビット、そっちは片付いたのか?」
「いや。
1体だけ、光学迷彩を発動させて、姿を眩ましちまった。」
「そうか。
こっちも1体取り逃がしたんだが、周りにはいないみたいだ。」
彼がセンサーの検索結果を見て答える。
「一体、どうしちゃったんだろう?
逃げたのかな?」
「いや、何か仕掛けてきそうな・・・。」
バラッドが言いかけたその時、
ヒュー、ドドドドーン
突然彼等の周りに爆発が起こった。
「な、何だ!?」
爆弾の正体は、セイバータイガーATが発射したミサイルであった。
彼等がそれに気付いたのは、そのすぐ後。
「リーダーの登場か。
お前を倒して、バトル終了だ!」
ビットのかけ声と共にライガーが走り出す。
フォックスも後に続いた。
「それはどうかな。
今のは普通のミサイルだが、これはどうだ!」
シドがそう言ってミサイルを3発発射する。
それぞれが彼等のゾイドに向かって一直線。
「こんなヘボいミサイルに当たってたんじゃ、
Sクラスの名が泣くぜ!」
ライガーが横にずれてミサイルをやり過ごそうとする。
すると、ミサイルは地面にはぶつからず、ライガーの後を正確に追ってきた。
それに驚き、ライガーはがむしゃらに逃げ始める。
他の2機も同じ状態である。
「何なんだ、このミサイルは!?」
「逃げても、避けても、追いかけてくるわよ!」
「ふっふっふっふっ、
そのミサイルはゾイドの動きを完全に捕らえ、着弾するまでしつこく付きまとう。
例え、ライトニングサイクスであっても、それから逃げる事は不可能に近い。」
シドの説明を耳に入れながらも、
3人ともミサイルを避けるのに必死である。
「それだったら、燃料切れするまで逃げるぞ。
イオンブースター、オン!!」
ビットがコックピットのスイッチを入れ、ライガーの背中のブースターを点火させた。
同時に脇腹のダウンフォーススタピライザーも展開する。
すると、突然何もないところから砲撃が起こった。
ライガーは弾が当たり、大幅に減速してしまう。
その拍子にミサイルも着弾し、ライガーの体勢が崩れてしまった。
「ビットさん!」
「くそ。
いったい、どこから・・・。」
幸いダメージが浅く、何とか立ち上がるライガー。
すると、目の前からヘルキャットの姿が
「どうだ。
ミサイルで逃げまどっているところに俺達が攻撃を仕掛ける。
これがフォーメーションγだ!」
ビストが説明を付け加える。
そして、ヘルキャットはまた隠れた。
「相手はミサイルを避けることに精一杯。
そこに砲撃を仕掛ければ、確実に相手を倒すことが出来る。
確かに、効果的な戦術だ。」
「結構、やるもんだね。」
敵の見事な戦法に関心を示すジェミーとトロス。
トロスの方はお気楽そのものだが。
そう言っている間に、ライガーに向けて、再びミサイルが発射された。
「またかよ。
ったく、しつこい男は嫌われるぜ。」
そう言って、ライガーがまた走り出す。
今度はセイバーに向かって一直線に。
「寸前でかわして、私に当てるつもりだな。
だが、そのミサイルはそんな生やさしい物ではないぞ。」
セイバーの一歩手前でライガーがジャンプする。
だが、ミサイルはライガーの後に張り付いたまま。
しかも、空中で今度はレブラプターの攻撃を脇腹に受けたため、
そのまま横に大きく飛ばされた。
もちろん、ミサイルは爆発する。
そして、地面にぶつかると思った時、
ガッシャーン
何かにぶつかった音がした。
「な、何だ?」
ライガーの下に見えない何かがある。
そして、ライガーがのっかった衝撃でそれの光学迷彩が切れた。
現れたのは灰色のヘルキャット・・・。
「これって・・・、まさか・・・。」
そのまさかであった。
ビットの顔がみるみる青ざめていく。
「ビィ〜ットォ〜・・・。」
「姉ちゃん、何でこんなところにいるんだよ!!」
慌ててライガーがヘルキャットの上から退く。
「取材よ、取材!
だいたい、なんで私の上に乗るのよ!!」
「姉ちゃんがそんなところにいるからだろ!
だいたい、バトルフィールドに関係者以外は入ってくるなよ!
危ないじゃないか!!」
と、バトルそっちのけで姉弟喧嘩を始めてしまった。
「ああ〜、ビットさんにジュジュさんもバトル中にケンカしないで下さい!!」
ジェミーの必死の訴えも彼等の耳には届いていない・・・。
彼としては時と状況を考えて欲しいものであるが・・・。
「ビット、ケンカしてないで、前を見なさ〜い!!」
「前から来るぞ!」
リノンとバラッドの声でようやく現状に気付く2人。
彼等が前を見ると、
なんとビストのヘルキャットとオスカーのレブラプターが目の前にいるではないか。
しかも、後ろにはシドのセイバーも。
「これで終わりだ、ビット・クラウド!
そこにいる邪魔者と一緒に始末してやる。」
3体の武装がライガーとヘルキャットを完全に捕らえている。
「嘘でしょ〜!!
私、まだ死にたくないわよ〜!!
まだまだいろんなゾイドを見るんだから〜!!」
最後までゾイドのことを言っている彼女は流石である。
だが、敵がそんなことを聞き入れてくれる訳もなく、
無情にも弾が発射されようとしていた。
バラッド達も未だにミサイルに苦しんでいる。
「これでトドメだ!!」
シドが叫んだ。
2人も、もうダメか、と目を瞑った瞬間、
ヒュー、ドドドーン
突然、セイバーの身体から爆煙が上がった。
これにはその場にいた全員が驚く。
「な、何事だ!?」
シド達が辺りを見回す。
すると、1体の深紅のゾイドがレブラプターに素早く近づき、
大きなハサミで足を切り裂いた。
オスカーはそのままリタイア。
「お前ら、無事か?」
通信回線が開いて、彼等がよく知る顔が映し出された。
『ケイン!!』
全員の声が重なる。
そう、チーム・バスターズのリーダー、ケイン・アーサーであった。
そして、ゾイドはもちろん魔装竜、ジェノブレイカーである。
「ジュジュも懲りないなぁ。
あれだけ、バトルの観戦は遠くからにしておけ、って言ったのに・・・。」
「し、しょうがないでしょ。
バトルジャックがあったから、もっと近くで取材したくって・・・。」
「あれ、姉ちゃんはケインのこと、知ってるの?」
2人の会話を聞いて、ビットがふと思った疑問をぶつける。
すると、ジュジュは、
「ええと・・・、バトルロイヤル戦の時に取材したときに・・・。
ほら、ケインは最後まで残って、あんたと戦ったじゃない。
だから、その時に・・・。」
明らかに何か隠してると言った表情と口振りのジュジュ。
ケインははぁ、と溜息を吐いて、「まぁ、そう言うことにしておくか」と一言。
ビットは彼女の説明では納得がいかない様子である。
「貴様、いったい何者だ?!」
「そのゾイドは・・・、ジェノブレイカー!
お前、チーム・バスターズのケイン・アーサーだな!」
ビストとシドがそれぞれ叫ぶ。
どうやら彼等の間でも、魔装竜を駆るケインは有名のようだ。
「ほう、よくご存じで。
でも、もう一つの顔は知らないみたいだな。」
「もう一つの顔・・・だと?」
「ダークバスター・・・、
ゾイドバトル連盟が組織した、闇バトル潰しの集団だ。
チーム・バスターズの名はそこから来てるんだよ。」
シドの質問に答えるケイン。
ゾイドバトル連盟は第2、第3のバックドラフト団が現れた時の為に、
“ダークバスター”という、闇バトル潰しのウォーリアーを雇っているのだ。
彼等バスターズの他にもいろいろなウォーリアーが雇われている。
ちなみに、ケインは“魔装竜を黙認する”という条件で入っている。
「ダークバスターだと。
それがどうした!!」
ビストのヘルキャットがガトリングを回転させる。
だが、後ろからの砲撃で発射することはなく、システムフリーズ。
「レイス、遅いぞ。」
「しょうがないだろ。
気付かれないように後ろから回り込むのって、結構難しいんだぞ。」
ヘルキャットの背後にいたのは、
橙目が特徴的のレイスのライトニングサイクスであった。
ちなみにリッドとシエラはアリス達の保護。
「さてと、残ったのはあんただけだぜ。
大人しく観念するんだな。」
ジェノが一歩前に踏み出す。
それにはセイバーもたじろいだ。
「くっ・・・、まだだ。
まだ、このホーミングミサイルがある。
全弾発射すれば、お前らだって無事で済むはずがない!」
シドは往生際悪く、ミサイルを全弾発射する。
すると、シャドーフォックスが彼等の間を横切り、
その際に発生した黒い煙がセイバーの周りを覆った。
バラッドお得意のスモークデスチャージャーである。
「こ、これは・・・、いったい?」
視界がゼロとなり、シドは動揺を隠せない。
すると、信じられないことが起こった。
ズガーン、ズガーン、ズガーン
彼の周りで、彼が放ったミサイルが爆発したのだ。
凄まじい衝撃とダメージが彼を襲った。
「あのミサイルは備え付けてあるカメラで相手の後ろに張り付く。
だから視界をなくせば、ミサイルは目標を確認できなくなり、そのまま誘爆する。
・・・流石ですね、バラッドさん。」
ジェミーがバラッドのしたことを説明する。
ちなみにバラッド達を襲っていたミサイルは、燃料切れで自動的に墜落した。
「どうだ、自分が自慢していたミサイルを喰らった気分は?
これが俺からの礼だぜ。」
フォックスが回り込んでライガーの真横に行く。
「今度は私の番ね。
ウィーゼルユニット・フルバースト!」
リノンのガンスナイパーが全武装でセイバーを攻撃、
多少は避けるものの、後ろ足に被弾し、身動きがとれなくなった。
重武装が仇となったのだ。
「最後は俺だぜ。
やっぱり主役が最後に決めないとな。」
そう言ってライガーを走らせるビット。
自分で主役と言っているところが凄い・・・。
セイバーは残った武装で攻撃するが、
ライガーゼロは持ち前の運動性能でどんどんかわしていく。
そして、顔の横のフェアリングが光り始めた。
「いっけぇーー、ストライクレーザークロー!!」
ライガーの必殺技が決まり、
光の爪がセイバーの右足を吹っ飛ばす。
セイバーはそのままシステムフリーズを起こし、崩れ落ちた。
勝利の雄叫びとばかりにライガーが吼える。
「ガッデーーーム!!
うぐぐぐ、う、うううう・・・。
バトル終了、オールオーバー・・・。
ウィナー・・・、チーム・ブリッツ・・・、はぁ〜・・・。」
ダークジャッジマンが悔しそうに勝ち名乗りを上げる。
そして、空の彼方へ帰っていった。
その後、ホエールキングでは・・・。
「申し訳ございません・・・。
ご期待に添えなくて・・・」
シドがモニターに向かった謝っていた。
相手は昨夜話していた人物。
『気にすることはない・・・。
チーム・ブリッツをあれだけ追いつめれば上出来だ。
しかも・・・、連盟のダークバスターの存在が確認できるとは・・・。
とても良い収穫だった・・・。』
相手の予想とは違う態度に、シドはちょっと驚き気味。
『シドよ・・・、至急本部に戻り、次のバトルの準備をしろ。』
「は、はっ!」
シドの返事で通信が終了した。
まだまだ闇バトルの驚異は去りそうにもない・・・。
そして、ビットはと言うと・・・、
「た、助けてくれ〜〜〜!!!」
「こら〜、待ちなさい!」
姉のジュジュに倉庫中を追いかけられていた。
ライガーがヘルキャットにぶつかったことをまだ根に持っているのだ・・・。
「やれやれ・・・、何やってるんだか・・・。」
「ほんとにな・・・。
まったく、進歩のない奴ら・・・。」
リノンとケインが呆れ顔でこれを見ている。
リッドはジュジュに言われ、ヘルの点検。
バラッドはレイスに、「ダークバスターのギャラはいいか?」と聞いている。
そして、
「ジェミー君、次の日曜日開いてる?
開いてたらさぁ〜、ちょっと買い物に付き合って欲しいんだけど・・・。」
「え・・・、ええ、別にいいですけど・・・。」
シエラはジェミーとデートの約束をしていた。
過酷なバトルの後の日常はこんなものである。
特に、ブリッツの周辺は・・・。
「ビット、捕まえたわよ〜!」
「か、かか、か、勘弁してくれ〜〜〜!!!」
この後、とてつもないお仕置きをされたビットであった。
内容は・・・、全員が目を覆いたくなるような事と言っておきましょう・・・。
そして、ビットは2日間、意識不明になったそうです。
皆さんはこんな事をしないように・・・。(出来るわけねーだろ。)
4話目、終了です。
たいへん長らくお待たせして済みませんでした。
ここでオリキャラの紹介です。
初心者さんのオリキャラでビットの姉(従姉)のジュジュ、
その後輩のアリス、同僚で彼女に惚れているカイルの3人です。
どうもありがとうございました。
ちなみにケインとジュジュの話は、初心者さんの小説を参考にして下さい。
それにしても・・・、ジュジュのイメージが違うような・・・。
まぁ、後々修正を加えていきたいと思います。
では、噂のゾイドが登場する第5話をご期待下さい。