「闇バトルの復活」
〜登場、デッドスコルピオ団〜

 

 今日も惑星Ziの荒野では、ゾイドバトルが行われていた。
一方はセイバータイガーとヘルキャットが2体のチーム。
そして、もう一方は、黄色いセイバーが三体。
そう、チーム・タイガースである。

「オマリー、ラインバック!!
これに勝てば、Aクラスへ行く道が開けるんや!」

「おう、ここまで頑張ってきたんや。
気合い入れていくで!」

「任せといてや!」

関西弁で口やかましく会話しながら、
タイガースは向こうのセイバーに攻撃を仕掛ける。
彼等のやり口は火力の高いゾイドから潰すという典型的なもの。
ワンパターンなのだが、効果的な戦略でもある。
彼等がセイバーに攻撃を仕掛けていると、
ヘルキャットが黄色のセイバーのさらに後ろに付いた。

「あかん、取り囲まれてしもうた・・・。」

「え〜い、とにかく撃て!!」

「撃って、撃って、撃ちまくるんや!」

ここでカークランドとオマリーが標的をヘルキャットに変更。
それぞれのゾイドがマン−ツー−マンで対処した。
すると、その時、

「ドワァーーー!!!」

突然悲鳴が聞こえた。
全員がその方向に顔を向けると、
なんと、審判をしていたジャッジマンが黒く丸い物体に潰されているではないか。

「なんや、あれ・・・。」

「まさか・・・。」

そのまさかであった。
そして、空にはホエールキングの姿が。
これが全ての事件の幕開けだった・・・。

 

 その2日後・・・。
トロスファームにて、ブリッツの面々がテレビに釘付けになっていた。

「いよいよだな・・・。」

「ええ、そろそろ開始の時間です。」

ちらっと時計を見ながら、ジェミーが答える。
そして、その時間がやってきた。
画面には片側にコマンドウルフが3体、
もう片方にはレッドホーン、ヘルディガンナー、
そして、青いコマンドウルフの姿が。
彼等が注目しているのはこの青いコマンドであった。

「バトルフィールド、セットアップ!
チーム・エキサイターVSチーム・レッドファイヤー、
バトルモード0983、レディー、FIGHT!」

ゴングが鳴りバトルが始まった。
先手を仕掛けたのはエキサイターの方。
コマンドウルフが一斉に砲撃を開始する。
身動きがとれなくなるレッドホーンとヘルディガンナーだったが、
勇敢にも青いコマンドが突っ込んだ。
右に左に体を振って砲弾を避けると、
飛び上がって、相手のコマンドの背中を踏みつけた。
相手はそれによって簡単に横倒しとなり、ロングレンジキャノンを至近距離で喰らう。
青のコマンドは続けざまにキャノン砲で、拍子抜けを喰らった一機を仕留める。
そして、最後の一機の弾をジャンプで避け、
相手の後ろ足をエレクトロンファングで噛み切る。
その瞬間、相手はシステムフリーズ、バトルはたったの1分で終了した。

「バトルオールオーバー、バトルオールオーバー!
ウィナー、チーム・レッドファイヤー!」

ジャッジマンが勝ち名乗りを上げると、
青いコマンドウルフのキャノピーが開いた。
中から出てきたのは、青い髪の女性。
そう、バラッドの幼なじみのアスカ・ファローネである。

「凄い、たったの1分で3体を・・・。」

「アスカとコマンドのコンビは絶対に敗れないと言われてる。
実際、ナオミが打ち立てた個人戦の連勝記録をこの間抜いたそうだ。」

「へぇ〜、結構凄腕なのね。」

バラッドの説明に感心の色を示すリノンとジェミー。
そして、ビットは何だかワクワクしている。

「一回やってみたいな、アスカと。」

「止めとけ。
Sクラスウォーリアーがしゃしゃり出てどうする。」

「それもそっか。」

確かにいくらアスカが強いと言っても、彼女はAクラス。
ビットと戦うことはまず無いだろう。
彼等がそこまで話していると、突然インターホーンが鳴った。

「ビット、いる〜?」

電子音と共にスピーカーから女性の声が聞こえてくる。
その声にビットがハッとなり、慌てて玄関にすっ飛んでいった。
その顔は真っ青だったという。

「来たようですね・・・。」

「そうみたいだね・・・。」

「ビットの姉さんか・・・。
ちょっとでも遅れたら地獄行きだからな・・・。」

「毎度毎度、大変ねぇ、ビット・・・。」

上からジェミー、トロス、バラッド、リノンの順。
そして、ビットが手向かえた相手とは・・・、

「姉ちゃん、お待たせ!
・・・姉ちゃん?」

ビットが格納庫に行くと、銀髪で前髪に青いメッシュが入っている女性がいた。
彼の姉のジュジュである。
「今日、行く」と連絡があったのだ。
そして、彼女はライガーを見てうっとりしていた。

「ライガー、元気だった?
いつ見ても格好いいわねぇ・・・。」

「姉ちゃん!!」

ビットが耳元で叫んで、ジュジュはようやく現実に戻ってきた。
そして、開口一番にこの一言。

「遅いじゃないの!ビット!!!」

「ちょっ、ちょっと、姉ちゃ・・・、
ギャアーーーーーーー!!!」

その後、ビットの悲鳴がその場に響いたとか・・・。

 

 5分後、リビングルームにて、

「・・・で、今日はどうしたんだよ・・・?」

むすっ、とふてくされながら、ビットがジュジュに話しかける。
その額には包帯が巻いてあり、頬には絆創膏が貼ってあった。
相当こっぴどくやられ、先程ジェミーとリノンから手当を受けたのだ。
当の彼女は出された紅茶を飲みながら、何事もなかったかのように話し出した。

「うん。
ちょっと、気になる噂を聞いたから・・・。」

『気になる噂?』

彼女の言葉にブリッツの面々が興味深そうに尋ねる。
ビットも機嫌が良くなったみたいだ。
ジュジュはゾイドバトル専門のカメラマンをしていて、
いろいろな情報が流れてくる。

「実はね・・・、うちの同僚から聞いたんだけど・・・。」

一息ついて、静かに話し出した。

「2日前になるんだけど・・・、
バトルジャックがあったみたいなの。」

「バトルジャックだと?!」

バラッドが声を荒らげた。
それもそうだ。
バックドラフト団が捕まって以来、
バトルジャックなどする者などいなかったのだから・・・。

「その同僚の話によると、
現場にはジャッジカプセルの残骸と、
それらのチームのゾイドの残骸だけが残っていたって・・・。
ほら、これがその記事よ。」

持っていたバッグから自分のところの雑誌を取り出と、彼等に見せる。
すると、ビットがあることに気付いた。

「あっ、タイガースじゃん。
全く、何やってるんだか・・・。」

写真に写っているタイガースのメンバーの情けない姿に、
ビットが呆れながら一言。

「それで、彼等はなんて言ってるの?」

「えっと、確か、
ホエールキングが降りてきて、口が開いた瞬間、
後ろから狙い撃ちされたそうよ。
だから、彼等全員、あっという間にやられたんですって。」

リノンの質問に彼女が答える。

「バックドラフト団みたいな組織が現れたんでしょうか?」

「だとしたら、また闇(ダーク)バトルが勃発する可能性が高いな・・・。
我々もまた狙われるかもしれん。」

トロスがの言葉で全員の間に緊張が走る。
過去、幾度にも渡って、
チーム・ブリッツはBD団に闇バトルを仕掛けられているのだ。
当然、その組織も彼等を狙ってくる可能性が高い。
ましてや、ビットのゾイドは伝説のアルティメットX。
その可能性も格段と高くなる。

「私も出来る限り情報を仕入れるから、
何かあったら、連絡ちょうだいね。
じゃあ、私、取材があるから。」

「分かったよ。
サンキューな、姉ちゃん。」

姉弟で挨拶を済ませると、ジュジュはとっとと引き上げていった。
そして、ブリッツのメンバーは、彼女が置いていった雑誌を見ている。

「・・・いったい・・・、何者なんでしょう・・・?」

「さあな。
みんなもとりあえず用心だけはしておいてくれ。
さてと、明日のバトルの作戦会議でも始めようか。」

「そうですね。
じゃあ、皆さん、30分後に作戦室へ来て下さい。
僕はその間に準備をしてますから。」

ジェミーも作戦室へ。

「闇バトルか・・・。」

ビットの頭には過去にあったBD団との戦いの記憶が思い起こされていた。
今となっては彼の成長を裏付ける為の語り話になっているが。

 

 その夜、上空を飛んでいるホエールキングの中で、

「チーム・ブリッツ・・・、
バックドラフト団を倒したというビット・クラウドのチームですか・・・。」

『そうだ。
明日の正午、彼等のバトルがある。
それを乗っ取り、闇バトルの復活を大々的に宣言するのだ。』

モニター通信で男が2人、話していた。
双方ともにサングラスをかけていた。
そして、片方の後方にはもう2人ほどいる。

『シドよ、期待しているぞ。』

「はっ!」

シドと呼ばれたダークグレーの髪の男が敬礼すると、通信はそこで切れた。

「シド様、我々でチーム・ブリッツに・・・、
ビット・クラウドに勝てるでしょうか?」

「バーサークフューラーを倒し、バックドラフト団を壊滅させた男。
そんな奴相手に、どう戦えと・・・。」

碧髪の男と紫色の髪をした男がそれぞれ口にする。
すると、シドは不適に笑った。

「案ずることはない。
例の物を使えば、いかにビット・クラウドといえども、勝てるはずだ。
アレをテストする為に、わざわざあの試合をジャックしたのだからな。
もっとも、アレを使うまでもなかったがな。」

部下の2人にそう言うと、彼は窓の外の景色に身体を向ける。
そこには月明かりで明るくなった雲が流れていた。

「明日は、記念すべき日になるだろう。
闇バトルの復活という、誇るべき日にな。」

穏やかな夜は、これから起こる戦いを暗示するかのようであった。
「荒らしの前の静けさ」とは、よく言ったものである。
そして、さっきまで通信をしていたモニターには、
黒い、サソリのような紋章が映し出されていた。

 

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