「未来のために」
澄み渡る青空の中、2人の男女が丘の上に立っていた。
彼らの目線の先には、古代都市が沈んでいっている。
凶悪ゾイド、デスザウラーと一体化し、人類を滅ぼそうとして、
英雄達の活躍に散った、哀れな男と共に・・・。
「終わったんだね、レイヴン。」
「ああ、全て終わった。」
ジェノブレイカーの足下で、レイヴンとリーゼが語り合っている。
2体のオーガノイドはその隣で彼らの話を聞いていた。
「ねえ、これからどうするの?」
「これから?
・・・どういうことだ。」
レイヴンは不思議そうな顔をして聞き返す。
「デスザウラーも倒れたし、もう戦う必要もなくなった。
そんな世の中で、君はこれからどうするんだい?」
「そういうことか。
しばらくは・・・そうだな。
静かに暮らせるところを探すさ。
兵隊やらガーディアンフォースやらに追い回されるのも、疲れてきたからな。」
「そう。」
いつものように淡々と話すレイヴン。
リーゼはそんな彼に何処か寂しそうに返事をした。
「お前は?」
「僕は・・・どうしようかな。
まだ決めてないや。」
微笑みながらそう答えるリーゼ。
本当の気持ちを隠したまま。
「これからじっくり考えればいいさ。
時間ならたっぷりある。」
「そうだね。」
リーゼはずっと決めていた。
この戦いが終わったら、レイヴンと一緒に生きていこうと。
同じ古代ゾイド人であるフィーネだってバンと一緒に生きてきたんだ。
僕にも出来るかもしれない。そうずっと思っていたのだ。
だから、ずっと一緒にいたい、その言葉を言いたかったのだが、出なかった。
拒否されるのが、怖かったから。
「とりあえず、一旦家に戻る。」
そう言ってレイヴンはジェノブレイカーのハッチを開けた。
彼もリーゼと一緒に生きようと決意していたのだ。
リーゼを看病していた時、思ったことがあった。
今まで1人で生きてきた自分と、あまりにも酷似している彼女。
そんな彼女に徐々に惹かれていっている自分。
あのプロイツェンに言われた時には腹が立ったが、当たっていた。
でも、一緒に行こうとは言えなかった。
孤独を好む彼女が、うんと言うはずがないと思っていたから。
「行っちゃうの。」
「ああ。」
レイヴンの後ろ姿に問いかけるリーゼ。
辺りはいつの間にか夕暮れになっていた。
すれ違ってばかりいる2人の心。
「似たもの同士だから」
そんな理由でお互いを分かっているつもりの2人。
だが、本当の気持ちは分かっては居なかった。
「じゃあね、レイヴン。」
「また会おう、リーゼ。」
2人は向き合って互いに別れを告げる。
リーゼの目にはうっすら涙がにじみ出ていた。
でも、レイヴンはそれに気付いていない。
そして、レイヴンがジェノブレイカーに乗ろうとした時だった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
突然2人は後ろから押されて、抱き合う形になってしまった。
その横で何やらニヤニヤしているシャドーとスペキュラー。
「グルルル。(本当に素直じゃないんだから。)」
「グルル。(ホント、ホント。)」
そんな2体の声は2人の耳には聞こえてはいなかった。
頭が混乱していて、何があったのかすら分かってはいないのだ。
「リーゼ・・・。」
「レイヴン・・・。」
だが、2人が離れなかった。
「なあ、リーゼ。
・・・もし良かったら、その、・・・俺と一緒に・・・。」
恥ずかしくてなかなか言えないレイヴン。
やはりいくら彼といえども、思春期を迎えている男子なのだ。
そして、レイヴンの胸で言葉の続きを待っているリーゼ。
「俺と一緒に・・・来ないか。」
その瞬間、彼の表情が和らいだ。
緊張が解けたのだ。
そしてリーゼの表情も。
「うん、いいよ。・・・レイヴン、ありがとう。」
そして、そのまま抱きしめ合うレイヴンとリーゼ。
それをじっと見ているシャドーとスペキュラー。
そんな彼らの顔を夕日の光が赤く染めていた。
響き合う奇跡の中で
2人は巡り会えたから
限りない愛しさを届けたい
永遠の空へ
やすらぐ海へ
愛するあなたへ
山本裕生さん、3333の初のぞろ目キリ番、おめでとうございます。
最終回直後のレイリーということで、こんな風にしてみました。
なんかレイヴンファンに虐殺されそうな内容になりましたけど・・・。(汗)
実はエンディングの「Your song」を聞きながら書いたんです。
そして、タイトルはDEENの曲から取りました。
これの方が似合うかなって物をつけましたが、どうでしょうか?
感想、待ってます。
では。
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