「湖の伝説〜その3〜

 

 一方、レイヴンはバン達とは違うところで湖に映る星を見ていた。
周りには誰もおらず、その空間と風景を独り占めしている。
輝きを失うことのない星、彼は1人でそれを見るのが好きであった。
すると、

「レイヴン、ここにいたんだ。」

ふと、後ろからそんな声が聞こえてきたので、ゆっくり振り返ってみる。
聞き慣れた声であったため、別に急ぐ必要はなかった。
その声の主は彼が一番心を許している人物だったから。

「どうしたんだ、リーゼ。」

「なんか・・・、眠れなくってさ。
それで起きたら、みんないないんだもん。
だから君の所に行ったんだけど、出かけたって言うから、
しょうがなく1人で散歩してたんだ。」

「そうか・・・。」

そう言って、彼は再び湖に視線を戻した。
リーゼは何だか物足りなさそう。
本当はもっと話がしたいのだ。

「レイヴン、隣に座ってもいい?」

「そんな事を気にする仲じゃないだろ。」

彼女が尋ねると、そんな言葉が返ってきた。
少し嬉しそうに笑いながら彼の隣に座る。
そして、リーゼも湖をじっと見つめた。

「綺麗だね。」

「ああ。」

まるで、2人を祝福しているかのように、星が瞬いている。
星空でも、湖の上でも。
そして、ポッカリ浮かんだ2つの月が青く輝いていた。

「ねぇ、あの伝説のこと・・・信じてる?」

「あの殺人鬼のことか。
どうも信じられないな。」

レイヴンの言葉を聞いて、リーゼはプッ、と吹き出す。

「まったく、君って強がりだね。」

「どういうことだ?」

「リスに驚いてたのは何処の誰だい?」

彼女の言葉を聞いて、彼は少し赤くなっている。
そんな彼を見て、リーゼは何やらニヤニヤしていた。

「レイヴン、君って結構可愛いところあるんだね。
恥ずかしがっている時は顔が赤いんだから。」

さらに追い打ちとばかりに、彼女は話しかけた。
すると、

「そう言うお前もそんなところがあるぞ。」

「えっ?」

彼女がキョトンとした次の瞬間、レイヴンはリーゼを抱き寄せた。
これにはリーゼも顔が真っ赤。

「お前もこういうところが可愛らしいな。」

「卑怯者・・・。」

少し笑顔の彼にそう呟くリーゼ。
でも、まんざらでもない様子だ。
しばらくの間、こうしていたのだから。

 

 そして、月が沈みかけ、2人はテントに帰ろうとしていた時、
リーゼが再びレイヴンに尋ねた。

「レイヴン、もう一つの方は信じてるの?」

「さあな。」

無愛想に答える彼。
すると、彼女はレイヴンの前に立ってこう言った。

「試しに告白してみよっかな〜。」

少しいやらしい笑顔でそう言う。

「やめておけ。
どうせ分かりはしないさ。」

と、彼から返ってきたので、リーゼは少し困惑気味。
鈍いなぁ、と思いながら、彼は話を続けた。

「俺は今が幸せだから、それでいい。」

彼の言葉に彼女は笑った。
無愛想ながらも少し優しさがこもっている彼の言葉。
リーゼはそんな彼が大好きである。

「まったく、もうちょっと素直になったら。」

「お前もな。」

互いの顔を見ながらクスクス笑う2人。
そして、そのまま手をつないでテントに帰っていった。
彼等にも湖での告白は必要ないのかもしれない。

 

 テントに帰ってみると、
アーバインとルドルフがまだポーカーをしていた。
奥ではバンが幸せそうな顔をして、
その隣ではトーマがブルブル震えながら、それぞれ寝ていた。

「これで・・・俺は・・・63対63だな・・・。」

「次で・・・決着を・・・つけましょう・・・。」

かなり辛そうな2人。
そりゃあ、夜通しやっていたらきついだろう。
結局、勝負は付くことはなく、2人はそのまま深い眠りについた。
ちなみにレイヴンは、バンと同じく幸せそうな顔で寝ていた。
リーゼやフィーネも同じ。
ムンベイとメリーアンは眠れずにいた。

恋人達に、幸あれ。

続く


やっと書き上げた〜。
と言っている割には短くなってしまいました。
結構、切羽詰まってますね・・・私も。
これも夏バテなのかな・・・。
まぁ、頑張っていきます。
次回はノコギリ魔がテントを襲う!?かも・・・。(荷電粒子砲)
実はまだ未定。
では、感想待ってます。

 

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