「壮絶!カラオケバトル」
この話はあるトラブルメーカーの一言が始まりだったと言っても過言ではない。
「ねぇ、カラオケに行かない?」
学校を出たところでリノンがビットにそう尋ねた。
部活が終わった後のよくある会話だ。
「ああ、別にいいぜ。
バラッドはどうする?」
「俺はパスだ。
なんか疲れちまってな。」
本当に疲れた感じでそう返した。
ここのところ、新ゾイドのシャドーフォックスに振り回されっぱなしなので、
身体共に疲れ果ててしまっているのだ。
「バラッド、一緒に帰りましょう。」
「ああ、いいぜ。
じゃあ、ビット、リノン、先に帰ってるぜ。」
そう言って彼はナオミと一緒に寮へと帰っていった。
「リノン、俺も一緒に行くぞ〜!」
ハリーが後ろの玄関から大声で叫んだ。
本当によく通る声である。
しかしハリーよ、よく30m先の彼等の会話を聞けたな。
「じゃあ・・・、3人で行こうぜ。」
「そ、そうね・・・。」
多少呆れながらも、3人は学校近くのカラオケボックスへ向かった。
だが、その話を聞いていた人物が・・・。
次の日、学校の掲示板にはこんな張り紙がしてあった。
『今週土曜日にカラオケ大会を開きます。
教師と生徒に別れて楽しみましょう。
なお、ゾイドバトル部は全員参加。
拒否したら、部費を30%削除。
そして、教員も全員参加。
拒否したら給料を50%、夏のボーナス70%カット。
他の生徒の参加も待ってます。
トロス校長より、愛を込めて』
『何が愛を込めてだ、あの校長!!!』
もちろん関係者の一部は怒って、早速校長室に殴り込み・・・、
いやいや抗議に行きましたとさ。
「なんだって、いつもこんな事するんですか、あなたは!」
早速、キースの怒鳴り声が校長室に響いた。
抗議に言ったのは、彼とアーバイン、リノンにビット、バンである。
「急に思いついてな。
たまにはこういうのもいいだろうと思って・・・。」
『たまにはじゃないだろ!あんたの場合は!!』
トロスの言葉に全員が反論した。
それもそうだ。
毎度毎度、給料や部費を盾にされて、やらされては身が持たない。
「それで、何でカラオケ大会なの?」
リノンが尋ねる。
「ああ、昨日、ビット君とお前とハリー君がカラオケに行くという話を聞いてな。
それでピンときたんだ。」
「また思いつきかい・・・。」
「毎度のことだけどな・・・。」
トロスの返答に呆れた風に呟くバンとアーバイン。
「まぁ、そう言わないで。
ちゃんと賞金も出すからさ。」
その言葉に全員の目が輝いたのは気のせいではない。
「しょ、賞金って・・・いくらなの?」
「ふふん・・・。10万円×人数分だ。
どうだ、私も太っ腹だろう。」
『よし、乗った!』
全員が同意、異議を唱える者はいなかった。
こうして、「Zi学園カラオケ大会」が開かれることとなった。
だが、彼等が出ていった後、トロスは1人ニヤニヤしていたという。
その後、部室では・・・、
「賞金が出るのか?」
「確かにそれは魅力だね。」
報告を聞いて、レイヴンとリーゼが一言。
トーマもやる気である。
「俺も乗った。
出れば何もされないし、賞金も出るなら言う事はない。」
バラッドはもっとやる気だった。
さすが守銭奴・・・、金が絡むと凄い気迫だ。
「僕も一向に構いません。」
「ルドルフ様がそう言うなら、私も。」
「僕もいいですよ。」
ルドルフ、メリーアン、ジェミーもO.K.を出した。
「バン、ローザも出たいって言ってるけど・・・。」
「よし、人数は・・・、って結構多いな。」
生徒チームの今のメンバーは、
バン、フィーネ、レイヴン、リーゼ、トーマ、ルドルフ、メリーアン、ローザ、
ジェミー、ビット、リノン、バラッド、ナオミ、ハリーとオーガノイズの計19名。
確かに多い。
ちなみにオーガノイズはゾイドバトル部に数えられている。
「じゃあ、ユニットを組んだら?」
「そうだな。」
フィーネの提案に一同納得。
早速、別れてみると、
Aチーム「バン、レイヴン、ジーク、シャドー、アンビエント」
Bチーム「フィーネ、リーゼ、ローザ」
Cチーム「スペキュラー、サンダー」
Dチーム「ルドルフ、メリーアン、ジェミー」
Eチーム「バラッド、ナオミ」
Fチーム「ビット、ハリー」
トーマ、リノンはソロと言うことになり、計8チームとなった。
「よし、優勝目指すぞ。ビッと行くぜ!」
『オー!』
こうして、一段と団結を深めたゾイドバトル部。
この後、早速カラオケボックスに直行したとか。
そして、職員室では、
「えーと、メンバーは・・・全部で10人か。」
ただいまの教師チームのメンバーは、
アーバイン、キース、カール、ムンベイ、ヒルツ、
マリア、ディ、ハーマン、オコーネル、スティンガーの計10名。
「情報によると、あいつらは8チームに別れたそうだ。」
「どっから仕入れたのよ、その情報・・・。」
カールがしれっとそんな事を言うので、思わず突っ込むムンベイ。
「とりあえずユニットを組んでみるか。」
ハーマンの言葉に一同頷く。
そして、
Aチーム「マリア、ムンベイ」
Bチーム「ハーマン、ディ」
後は全員ソロ。
「でも・・・、ちょっと戦力不足じゃない?」
「音楽教師が言う科白かよ・・・。」
キース、ムンベイに突っ込む。
「しかし、少しは戦力を増やしておきたいですね。」
ヒルツの言葉に妙な納得を覚える。
すると、
「あっ、ちょっと待ってろ。」
そう言ってアーバインが取り出したのは携帯電話。
早速どこかにかけ始めた。
「貧乏なのによく携帯が買えたな。」
「うるせぇ!」
カールの厳しい一言に苦虫を噛み潰したような顔をする。
そんな事をしているうちに相手が電話に出たようだ。
「おぅ、ジャックか。俺だ、アーバインだ。
あのさぁ、頼みたいことがあるんだが・・・。」
電話の相手は彼の親友、ジャック・シスコだった。
「部外者を巻き込むなよ」と、
ちょっと呆れ気味の一同をよそに話は進んでいく。
『何だ、金なら貸さんぞ。』
「あったく、どいつもこいつも・・・。
ちげーよ、ったく。
今度、学校でカラオケ大会をやるから、出て欲しいんだよ。」
『カラオケ大会!?
何だってそんな事を・・・。』
「頼むよ。賞金もでるからさぁ。」
『いったい、いくらなんだ?』
「じゅ・・・20万だ!」
『歌うだけで20万か。
よし、乗った!』
「じゃあ、今週の土曜日に学校に来てくれ。
中等部の方だぞ、じゃあな。」
そう言って、電話を切る。
全員の方を振り向くと、早速質問が出てきた。
「賞金は一人あたり10万じゃなかったか?」
オコーネルがその質問を投げかけると、
突然、アーバインは土下座を始めた。
「頼む!1万ずつ出してくれ!」
『・・・はぁ?』
彼の突然の行為と言葉に、全員間の抜けた声を出す。
そして、一言、
『やだ!』
異口同音に拒否した。
「貸しでもいいから!」
「おまえ・・・、俺達からいくら借りれば気が済むんだよ。」
キースが呆れた声でそう言う。
どうやら彼は全員に借金があるようだ。
「そこをなんとか・・・、んっ!」
ふと、彼は机の上に乗っていた紙に目を留めた。
そして、それを手にとってジーッ、と見ると、
「やっぱ、いい。
あと、明日休むわ。」
と言って、そそくさと帰っていった。
「何を見てたんだ?」
キースがその紙を見て読み上げる。
「えっと、
『ゾイドバトル大会のお知らせ
今週の木曜日にゾイドバトルのバトルロイヤル戦を開催します。
ゾイドをお持ちの方は奮ってご参加ください。
なお、受付は前日の午後6:00とさせていただきます。』
賞金は・・・30万だと。」
ちょうど彼が読み終わった頃に、
ライトニングサイクスらしきゾイドの鳴き声が聞こえた。
「アーバインの奴、これに出る気だな。」
「みたいね・・・。」
「やれやれ・・・。」
キース、ムンベイ、カールが一言ずつ、
夕日に向かって走るサイクスを見ながらそう言った。
目をかなり細めながら。
「我々は・・・カラオケボックスにでも行くか?」
「そうだな。」
ハーマンの鶴の一声でアーバインを除く全員が、
カラオケボックスへと直行した。
ちなみにそこでバン達と鉢合わせになったのは余談である。
次のページへ〜、続く。(キートン山田風に/爆)