「サイクロンブレイダー、発進準備完了。
いくぜ、サンダー!」
キースの呼びかけでサンダーがサイクロンブレイダーに合体する。
バン達の出撃準備も整いつつあった。
「いくぜ、相棒!」
一足速く整備が終わったライトニングサイクスが基地を出発、
続いて、ブレードライガー、ジェノブレイカーが発進する。
そして、リーゼの乗ったガトリング付プテラスが飛び立とうとした時だった。
突然、通信機からオコーネルの声が聞こえた。
「2時方向より未確認ゾイド接近中、
まっすぐこの基地に向かってきています。
この反応は・・・ジェノザウラーです!!」
「何だと!間違いないのか?」
ハーマンが驚きの声を上げる。
それもそのはず、ジェノザウラーは野生には絶対に存在しないゾイドで、
これまで確認されたのは5体。
そのうち4体は完全に息絶え、
残りの一体はジェノブレイカーへと進化した。
だから、いるはずがないのである。
「ゾイドコアの反応からして間違いありません!
それに・・・データからしてオーガノイドが合体しているようです!」
「ということは・・・奴らか!」
バンがオコーネルの通信から推測する。
「ジェノザウラーを確認!」
バン、レイヴン、アーバインが対峙する。
そして、彼らの目の前に黒き魔獣が姿を現した。
「久しぶりね、ガーディアンフォースの皆さん。」
「その声、・・・リリス、あなたなのね!」
フィーネが大声をあげる。
だが、リリスは彼女の声を無視して話を続ける。
「悪いけど、あなた達をここから行かせる訳にはいかないの。」
「バン、ここは俺に任せろ!
お前達はとっとと行け!」
レイヴンがジェノブレイカーを一歩前進させる。
「了解した!」
「レイヴン、へまするなよ!」
バンとアーバインはそう言って自分達のゾイドを走らせた。
そして、キース達も、
「サイクロンブレイダー、発進!」
カタパルトからブレイダーが颯爽と飛び立った。
プテラスもその後に続く。
「レイヴン、気をつけてね。」
「ああ。」
リーゼの言葉に少し頬をゆるめる。
「随分と仲間思いなのね。
本当にあなた、「黒い悪魔」って言われたレイヴンなの?
まるで別人ね。」
リリスが皮肉めいた口調で話しかけた。
その言葉には余裕すら感じられる。
「ふん、プロイツェンに縛られていた頃とは違うからな。
ただ、守りたい奴が出来た。それだけだ。」
レイヴンも負けじと言い返す。
だが、
「あらそう、あのリーゼって言う娘がそうなのかしら。
じゃあ、大変なことになるわね。」
「どういう事だ?」
「何故あの2人を簡単に行かせたと思う。
ちょっとこの先に罠を張らせてもらったわ。
あの2体はそれで足止め。
あなたの大切な人はレドラーに迎撃されるわ。
どうせ、あの高速ゾイドの方に爆弾の処理をさせるつもりなんでしょう。」
「くっ!」
レイヴンは引き返そうとするが、相手がそれを許すはずもなかった。
ジェノザウラーが腕を伸ばして、ジェノブレイカーの足を捕獲した。
「逃がさないわよ!」
一方、ブレードライガーとライトニングサイクスは砂漠の中で立ち止まっていた。
「参ったな、こりゃ。」
「そう簡単には行かせないって訳か。」
彼らの目の前にはレブラプターが40体ほどいた。
それぞれが2体に対して威嚇をしている。
「こんな数を相手にしてたら、キース達の援護にいけないぜ。」
「どうする?」
こうしている間にも爆弾の時計が進んでいく。
すると、アーバインがこんな事を言いだした。
「レブラプター40体を相手にするって言うのも悪くないな。
バン、ここは俺に任せて先に行け。」
「いいのか?アーバイン。」
「レイヴンとトーマばっかりいいカッコさせてたまるかよ。
それに・・・こいつには対空装備がついてないからな。」
そういって彼は笑ってみせる。
それを見てバンは安心したのか、その場を彼に任せることに。
「サンキュー、アーバイン!
フィーネ、しっかり捕まってろ。
最高速でキース達に追いつくからな。」
「分かったわ。」
バンはブースターを出し、ブレードライガーを走らせた。
レブラプターの何体かはそれを覆うとしたが、
すかさずライトニングサイクスがそれを遮った。
「さてと、久々に暴れまくるぜ、相棒!」
彼の声にサイクスも鳴き声で応える。
そして、レブラプターの群に突っ込んでいった。
その頃、サイクロンブレイダーとプテラスは、
「ホエールキングを確認、これより潜入する。
リーゼ、援護を頼むぜ。」
「了解。行くよ、スペキュラー!」
「グルルル。(O.K.)」
キースはブレイダーをホエールキングの口に向かうように操縦桿を動かす。
その途中、レドラーが砲撃してきたが、シールドで弾き返す。
その隙にリーゼがプテラスで砲撃、レドラーを落としていった。
「なんだ、結構簡単じゃん。」
「おいおい、油断するなよ。奴ら、わんさか湧いてきてるぜ。」
キースの言うとおり、
レドラーがどこからともなく、次から次へと飛んできていた。
軽く数えて10機はいる。
「心配するんだったら、さっさとトーマを送り届けてきてよ。」
「それもそうだな。」
彼は軽い口調で言うと、ブレイダーの背中のブースターを点火。
先程とは比べものにならない程のスピードでホエールキングに進入した。
「こらっ、キース。もうちょっと丁寧に操縦しろ!
怖くてたまらなかったぞ!」
コックピットを開いたとたんにトーマからの愚痴、
さっきの凛々しさは何処へやら、と思いつつも、
「愚痴言う前にさっさと行く。もう30分を切ったぞ。」
とキースが捲し立てる。
トーマは仕方なく作業道具を持って奥へと向かった。
「さてと、俺達も暴れるぜ!」
「キュイイ〜。(がんばるぞ〜!)」
改めて気合いを入れると、サイクロンブレイダーは再び空に向かって飛び立った。
トーマが最初に向かったのがルドルフの部屋。
まずは乗組員の安否の確認、と言われたからである。
「陛下、ご無事ですか?」
彼が部屋に入ると、
そこにはルドルフを始めホマレフ宰相などのお付きの方々がいた。
「シュバルツ大尉、よく来てくれました!」
ルドルフに出迎えられ、少し感激している彼。
「それで、爆弾は?」
「ブリッジです。そこの動力部と完全に繋がっていて、
ここにいる兵士達ではどうにも・・・。」
ホマレフの言葉を聞くと、トーマは脱出の準備を全員に促す。
しかし、ルドルフから思いがけない一言が。
「それが、この艦に積んでいる飛行ゾイドがすべて使用できなくなっています。
おそらく敵が何か細工をしたんでしょう。」
「そうですか。
分かりました、このトーマ、命に代えても、爆弾を解体します。
シュバルツの名に懸けて。」
トーマやカールにとってシュバルツという名は誇りそのものである。
代々シュバルツ家は王族を守ってきたのだから。
トーマもこの2年で凛々しくなった。
最初バンと会った時は本当に頼りなかったが。
おそらく彼がいい影響を与えたのだろう。
そう言う意味で、彼には感謝しなくては・・・。
・・・ってシュバルツさん、勝手にナレーションをしないでください!!
とにかく、トーマは敬礼をすると、ブリッジへ走った。