一方、空の攻防は果てしなかった。

「やっぱり、あの程度だけでは無理があったみたいね…
せっかく面白いシンカーも追加してもらったのに。」

まったく動じる様子も見せず、相変わらずブレイダーをつけねらう。
だが、その攻撃はいっこうに当たる気配がない。

「まぁ、1番目の目的はともかく、2番目の目的くらい果たさないと、この名が汚れるからね。」

右の前と、左の踵部分のかぎ爪がそれぞれ切り落とされていたが、その行動に支障はないようだ。
なぜなら砲撃中心に切り替えたのだから。
容易に近づけなくなるだけで、キースには何も関係のないことだ。
ただ、異常な体力とある種のマイペースさはいささか問題だが。

「あら、あそこのゴルドスもやられちゃったのかしら。
まあいいわ。
そろそろ次が来るから…」

「次?」

ふとキースが辺りを見回すと、遠くから何かの機影が見えた。

「あれは…コマンドウルフ、セイバータイガー、……シールドライガー!?」

共和国軍にいただけあって、その異常さは感じられたようだ。

「…あの数を揃えるには…
…それに様子からして、まさか!」

気が付くと、敵のパイロットは笑っていた。

「フフ…今回のこの仕事の依頼人、予想が付いたかしら?」

「カリスか…」

シールドライガーのみ、赤に近い色をしていた。
おそらくは、アンビエントが関与しているのであろう。

「それじゃ、もう一ついいことを教えてあげるわ。
実はこれも赤いオーガノイド進化をしているのよね。
あとからステルス機に改造を双子ちゃんに要請したから、こんな色だけどね。」

 

「バン、来たわ!!」

「もう来たのかよ…」

バンとレイヴンはヘルキャットを相手に苦戦していた。
相手の位置が特定できない以上、仕方のないことだが。
ジェノブレイカーの荷電粒子砲でも限度がある。

「何体ずつだ?」

「えぇ〜っと、シールドライガーは4体、セイバータイガーは8体、
コマンドウルフは…武装が違うけど、全部で12体だよ。」

「合計24体ね。」

状況的に、かなり悪そうだ。

「ヘルキャットとガイッサク、それとあのガンスナイパー…
かなりの数だな、ジーク。」

『キュイイ!』

ダダダダーーーン!!

コマンドウルフの砲撃が辺りに砂煙を上げさせる。

「行くぜ、ジーク!」

「あれくらい、さっさと終わらせてやる!!」

ブレードライガーはブレードを展開して突っ込む。
少し走ると大きくジャンプして、コマンドウルフに突っ込んだ。

「いっけえぇぇ〜〜〜〜!!」

「ちぃ!」

瞬く間に武装が削ぎ落とされる。

「あ!」

その後すぐに彼らの上を影が覆う。
ジェノブレイカーの爪がその一体を押しつぶした。

「ぐはっ!」

「ちっ!」

すぐにまだ武装を残したコマンドウルフが襲いかかる。
だが、すぐにジェノブレイカーの爪に捕らえられ踏みつぶされ…そしてその上蹴飛ばされてしまう。

「がはっ!」

「くそおぉっ!」

コマンドウルフが向かっていく。
しかし、それもジェノブレイカーのエクスブレイカーの餌食となった。

「レイヴン、後ろに!」

シールドライガーがミサイルを発射した。
それは、すべてジェノブレイカーに向けられている。

ダダダーーン!!

「レイヴン!?」

リーゼの叫び声と共に爆発が起こり、黄色い煙幕が高く上がった。
それに乗じて、後ろで様子を窺っていたセイバータイガーが走り出す。

「ふざけるな!」

その声と共に、レイヴンの目が変わった。
その煙幕の中から姿を現したジェノブレイカーに、はっきりとした損傷は見られない。

「貴様らには荷電粒子砲を使う価値もないな。」

深紅の瞳の光と共に、ジェノブレイカーが襲いかかる。
無論、セイバータイガーはそれを避けようとするが、逃げ切ることは不可能だ。

『ギャアアァァァーーーー!!』

ゾイドの断末魔が響き続ける。

「ちっ!かすり傷程度だったか。」

シールドライガーのパイロット達はそう呟く。
ただそれだけに気を取られていたのは、それ自体が彼らの終わりだった。

「うおおお〜〜りゃあーーーーーーーっ!!」

「なっ、なに!?」

振り返った瞬間、黄色い光が機体を切り裂く。
機体の側面を傷つけられた者達は、すぐに煙と共に沈んだ。

「くっ!」

シールドライガーとブレードライガーの力の差は歴然。
残りの2体も、まもなくシールドごと薙ぎ倒された。

ビュビュビュン!!

「ぐっ!」

だが、バンも余裕だというわけではない。

「またヘルキャットの砲撃か。」

再び集中砲火を受け、身動きがとれない。

「ちっ!」

レイヴンもまた同じだった。
セイバータイガーをすべて倒したものの、止まった瞬間にガイサックにしがみつかれたのだ。
振り払おうとしても、数で攻めてくるため、キリがない。
その上、手加減なしにヘルキャットの砲撃も食らうため、周りには煙幕ができて視界が利かない。
どうやらガイサックはスリーパーらしい。

「貴様ら、いい加減にしろ!」

近くにいすぎて、どんな武装も全く役に立たない。

ボッ、ガガガ…

シールドを張ると同時に、何とか空へと脱出する。

「くっ!」

『キシェエェェェーーーッ!』

しかし、しっぽにまとわりついたガイサックのみがどう振り回しても落ちる気配がない。
これでは荷電粒子砲も使えない。
下からはヘルキャットの砲撃が迫っている。
力ずくで開けようとしたがこのガイサック、なかなかに強い。
付きまとうことを重点に改造されているらしく、このままでは歯が立たない。

「くっレイヴンも……仕方ねぇ。」

バンも強行突破に出た。
シールドを張り、そのまま突っ込む。

『ギャアアン!』

『ギュアアン!』

数機のヘルキャットが跳ね飛ばされたが、砲撃は止むことを知らない。

「シールドもこれ以上使うと保たないな…」

計器の動きを見て、バンが呟く。

気を緩ませると、すぐにでもやられてしまいそうだ。

 

その事は、空でも言える。

ビュビュビュン、ビュビュビュビュン!!

「フフ……」

「ちっ!」

また体当たりを仕掛けられ、避ければ砲撃を仕掛けられる。
相変わらず冷や冷やされるような戦闘が続いていた。
近付いたのなら近付いたで、死ならばもろともと仕掛けられる。
厄介すぎるにも度があるような奴らだ。
しかし、その場所の異様な光景は、まだずっと度を増していくのであった。

 

「くっ!」

アーバインは苦戦していた。
バン達の元へ行く前に、この双子に捕まったのだから。

「そんなに慌てて、僕たちに勝てると思っているの?」

「足が速いのはいいけど…全く余裕を持っていないんじゃ、ねぇ?」

小悪魔共の、微かに邪気を帯びた声が響く。

「なんなんだこいつら!
一向に当たらなねぇ…」

格闘戦に持ち込もうとしても、その高い機動性で軽々と避けられてしまう。
かといって、砲撃も一向に当たらない。
突き抜けていくのもありだが、ヘルキャットとガイサックがそうさせない。

 

「もう、何でレイヴンがピンチって時に!」

リーゼ操るプテラスも苦戦、ピンチが訪れていた。
ヘルキャットとガイサックからの集中砲火だけではなく、別な者からの砲撃が加わったためだ。
その正体は今は地面に潜っている…

「リーゼ、来るわ!」

「頼むよスペキュラー!」

『キシェエェェェ!!』

突然砂の中から現れたのは…ステルスバイパーだ。
さっきから出てきては砲撃し、そしてまた潜りの繰り返しなのだ。

 

そして、こちらの空でも…

「また何か来たのかよ?」

レーダーに複数の反応が反応があった。

「キース、そっちにブラックレドラーが……」

「レドラー、プテラス、シンカーもよ。
あと、これは…」

フィーネが、何か言おうとして止まった。

「どうしたんだよ、フィーネ?」

リーゼが振り返ると、フィーネの動きが止まっていた。

「……リーゼ、これって、もしかして。」

「え?」

たった一つだけ、反応が違う機体があった。

「共和国の?
でも、プテラスじゃなくて、ストームソーダでもないのって……」

「間違いない。
レイノスだわ!」

「レイノスだって!?」

「レイノスぅ〜!?
あれ、シールドライガーよりも個体数が少ないじゃないか!!」

さすがにキースも、そしてリーゼは目を丸くして聞き返した。

「でも、それ以外に有り得ないわ……」

辺りには、だんだん雲が立ち込めてきた。

「ふぅん…せっかく面白くなってきたところなのに!」

3Sの女は忌々しそうに舌打ちした。
その黒い機体は相当ダメージを負っているようだが、
対するブレイダーも、微かながらかすり傷が全体に見られる。

「トドメだ!!」

一刻の猶予もないと判断したキースは、ほんの少しだけ隙ができた相手に攻撃を仕掛ける。

「ちぃ!」

ガッ

すれ違いざまに、ブレードが黒い機体のブースター部分に当たった。

ドオオォォォーーン!

「ぐぅっ…!!」

背中から煙が上がる。

「ちっ…仕方ないわね。
フットブースターと連携して…調整。」

だが、彼女が何か操作するとすぐにまともに飛ぶようになった。
いくらか遅くなってはいるが。

「あれで落ちない?」

そう呟きつつも、キースはとどめを刺すために向かっていく。

「……くそっ!脱出装置の一部が壊れたわ!!
グライダーが使えないなんて…」

叫びつつ、それでもブレイダーに向かっていく。

「「決める…」」

どうやら、次で決着が付きそうだ。

 

「レイヴン、そっちはどうだ!?」

「まだまだだ。
ヘルキャットの数が多すぎる!」

バンとレイヴンが手こずる相手、ヘルキャット。
ガイサックなどはほとんど倒れていたが、彼らは迂闊に動けない。

「シールドも限界だ…」

「荷電粒子砲は使えない…」

ヘルキャットの数は掴めない。
そしてその場所も。

「レイヴン!」

意を決したように、バンはレイヴンに話しかけた。

「頼む、作戦に協力してくれ!」

「作戦…?」

赤い魔装竜が振り返った。

 

「くっ!」

辺りにはガイサックとステルスバイパーが、数え切れないほど横たわっていた。
アーバインとリーゼの今までの成果だ。
だが…

「いい加減、ちょっとは遅くなってよ!」

リーゼが苛立つ。
見ての通り、下では2体のガンスナイパーがちょこまかと動いている。

「あれ、ねーさんが来た?」

「あっ、ホントだ。
“やっと”来たね。」

意味深な言葉を呟く。
それでも操縦の手を緩めないのだから大したもの。

「近づけ無いから当たらないよ!」

「アーバイン!」

「こっちも手一杯だ!!」

スペキュラーの運動能力を持ってしても、アーバインの能力を駆使しても、
相手に一向にダメージを与えられない。

「う〜ん、結構動きやすくなったはずなんだけどなぁ〜」

「全然…掠りもしないね!」

挑発するように周りを飛び跳ねる。
試行錯誤を重ねて攻撃するが、どれも不発に終わる。

「くそっ!」

「何なんだよ!!」

いらだちだけが募っていく。

「ふ〜、何だかつまらないね。」

その様子を見て、黄色い機体から溜め息が漏れる。

「じゃっ、邪魔なの無くしてみよっか。
おーい!ダバラン(後に続くもの)・タイゲタはここから離れてい〜よ。」

「またね〜!
ねーさんによろしく言っておいて。」

急に砲撃が止んだ…

「随分となめた真似をしてくれるじゃねぇか!」

「アーバイン、お願い!
私たちはバン達の援護に行くわ。」

「行くよスペキュラー!!」

アーバインの返事も聞かず、リーゼは飛んでいってしまった。

「…まぁ、いいけどよ。」

2対1…勝ち目はあるのか?
そして、この双子の言葉は真実だったのか?

 

「行くぞ、バン!」

ジェノブレイカーが宙に浮く。
そのまま、何も見えない方へと突っ込んでいく。

『ギャアン!!』

『ギュアァン!!』

いきなり飛び込まれ、何体かがジェノブレイカーに当たる。

「いっっけえええぇぇぇ〜〜〜〜!!」

ブレードライガーが、ジグザグに走っていく。
再び、ヘルキャットの悲鳴が響く。
防御の点だけならば、いくらかジェノブレイカーの方が強い。
それを利用した戦術だ。
赤が青の道を作る。
その速さ、そのコンビネーションに、彼らは付いていくことができない。

ダダダダダダ…!

二人が空を見ると、一機のプテラスが見えた。

「大丈夫かい、レイヴン!?」

「バン?」

「リーゼ?」

「フィーネ!」

またあの悲鳴が響いている。
ガトリング砲の砲撃で、下のヘルキャットが次々に姿を現す。
空の影と雲の闇は、肉眼でもはっきりと見えるほど迫ってきている。
レイヴンは思わず舌打ちした。

「急ぐぞ!」

「あぁ。」

「分かっているよ!」

ジェノブレイカーは両足にあるガンポットも使い始め、さらにスピードも上げた。
3機の連携プレーにより、辺りにはひっきりなしにヘルキャットの悲鳴が響く。
それは、足の踏み場が無くなるほどである。

 

「セイリオス、」

「行くぜ!」

2色のストームソーダは、互いに向かい合って飛んでいく。

「スタンバイ……」

3Sの女は何かを操作した。

「!?」

キースは何かに気が付き、急いで機体を傾けた。

「フルパワー…レーザートリプルソード!!」

「その手が残っていたか!」

擦れ違いざまにブレードで仕掛けようとしたが、避けるので精一杯だった。

「これで終わりよ!!」

先に旋回した黒い機体がパルスレーザーガンを放つ。

「そうは問屋が卸さないぜ!」

キースは旋回しながらそれを避ける。

キャン…

「何!?」

次の瞬間のそれに、先に反応したのはキースだった。

ガッ…

反応が遅れた方は、何かのスイッチを叩き押すので手一杯だった。

ドドドドドオオォォォーーーン!!

「…いい判断だった。」

冷酷な口調が聞こえ、キースは我に返った。
燃え堕ちた黒いストームソーダが、朦々と煙を上げている。

「うっ………」

パラシュートに括り付けられた女が地面に落ち、その場に倒れた。
どうやら危機一髪で脱出したようだ。

「fue(フー)、下働きばかりだって知っていたかしら?
炎(fue)も吹く風によっては吹き消さなければならない。
…他の要因で左右されるあんたなんか、必要ないね!」

「こいつ…」

その声は、さっきのフーと呼ばれた女のものより、数段若そうだった。

「一瞬でも戦うことを楽しんだヤツに、ここにいられる義理はない。」

レイノスの背後にいた機体が、横に大きく旋回した。

「ふん。勝負だGF!」

ガガガガガガ…!!

「何っ?」

「なっ…」

キースの背後から、バルカン砲の砲弾が来た。

「キース、僕たちも援護するよ。」

「リーゼ、残りの砲弾数に気を付けて!」

フィーネはリーゼに注意を促す。

ビュビュビュビュビュン、ビュビュビュビュビュン!!

「俺達も援護するぜ!」

「気を付けていないと、巻き込むぞ。」

下には、ブレードライガーとジェノブレイカーも見える。

「意外にあっさり終わったのね…ダバラン・タイゲタ、下をどうにかしていろ。
あとでミラ(不思議)を動かす。それまでの間だ。」

「ラジャ!」

不穏な動きが、また活発になる。

 

その動きは、こちらにもあった。

ピピッ!

「ん?」

ガンスナイパーに、何か通信が届いたらしい。

「あれ?まとめろだってさ。」

「まぁ、いいんじゃない?」

その2機が動いた。

「クス。See you later!」

「お・ま・ぬ・け・さん!」

「何…くっ!」

『ギュアアン!』

一機のガイサックが現れ、ライトニングサイクスの視界を奪った。

「待ちやがれ!!」

『キュアアァァァン!!』

すぐにそのガイサックは撃ち倒された。
黒い稲妻が駆け出す。

 

空は雨雲に覆われ、激しい雨が降っていた。

ダダダダダダーーーーン!!

「まだか!」

弾幕がまた上がり、雷鳴と共にそれは止むことを知らない。
バンとレイヴンの戦法も、あのガンスナイパーに邪魔されてできない。
視界も悪くなる一方だ。

「ふぅん…しぶといのね。」

「伊達に軍をやってなかったからな。」

空の方では、先ほどからほんの数機しか堕ちていない。
始めに向かってきた奴らとは、腕がケタ違いだ。

「全くこの雨、なかなか厄介なこと…」

「ナビガトリア(航海を導く星)様?」

さらに雨が激しくなってきた。遠くはその雨のせいで見通せない。

「クス…邪魔なら消し去る、そうでなかったら逆に利用してやるものよ。
ちょっと時間がかかってしまうようだけど、別にそんなことはどうだっていいわ。」

彼女は通信回線を開くために、画面を操作した。

「ミラ!」

「イェス、」

雑音混じりの声が聞こえる。

「準備でき次第、撃て。
躊躇したら承知しない。」

「ラジャ!」

 

「あ…」

「どうしたの、リーゼ?」

と、プテラスのガトリング砲が虚しい音を立てた。

「弾、切れちゃった…」

「やっぱり、限度があるのよ……
まさかこんなに数が多いなんて………」

プテラスは元々爆撃を専門とし、帝国のレドラーのようなブレードは持っていない。

「下がっていろ。
ここだと危険だ。」

「俺達が援護する。
その隙に…」

レイヴンとバンが口々にそう言った。

「ごめんね、レイヴン。」

「ごめんなさい…」

プテラスは軌道を変え、その場を離れようとした。

「させない!!」

不意に、先ほどナビガトリアと呼ばれた彼女が叫んだ。

ヒュ〜〜〜〜〜……

「なに!?」

「しまった!」

ここではなく、遠くから砲弾が向かってきた。

「うわっ!」

「きゃっ!!」

「フィーネ!?」

それは、プテラスを掠っていった。
遠くから来る砲弾では、バンに対処する方法はない。

「シャドぉーーーーーーー!!」

どこからか、紫色の光が飛んできた。

「リーゼ、次が来るわ!」

「嘘っ!」

その砲弾の数が多すぎる。
プテラスの機動性では限界も近い。

「避けて!!」

「うわあぁっ!!」

ダダダダーーーン!!

「…うっ…………え?」

撃ち落とされる、と思った。
だが、リーゼとフィーネの乗るプテラスは無事だった。

「…うぅっ………あっ……」

「レイヴン。」

目の前には、シールドを張った紅い魔装竜がいた。

「…早く安全なところへいけ。」

「あっ、ありがとうレイヴン。」

リーゼは頬を赤くした。

「バン、下は頼むぞ!」

「分かった。」

「俺がいることも忘れるなよな。」

アーバインも返事をした。

「ふぅん…オーガノイド、ね。
確か、あと10分。
面白そうじゃない。」

先ほど、これをすることを命令したのであろう彼女は、不適な笑みを浮かべていた。

「任せろ、ねぇ。」

「どの程度までのことなのかな?」

「なっ!」

不意に、その声が聞こえた。
気が付けば真後ろにその双子はいた。

「ちょうど2対2。」

「手加減なしだね。」

「ふん。なめたことを言ってくれるな。」

だが、そうでもない。
実際はこの砲撃に邪魔をされてしまうのだから。

「本当に、いつか終わるのかしら?」

ジェノブレイカーに守られ、その場を去っていくプテラスの中、フィーネはそう呟いた。

 

「くそ…」

「もうちょと周りを見た方がいいんじゃない?」

「反応が鈍いよ。」

「くっ…」

彼らの決闘に決着は付かない。
第3者に邪魔をされ、思うように仕掛けられない。

「どうしたキース、そいつらをもうちょっと押さえられないのか!?」

「これが限界だ!
ずっと戦いっぱなしでブレイダーが傷ついているんだよ!!
そっちでどうにかしてくれ!」

音速の決闘は、かなりのダメージを伴う。
それは、相手が強ければ強いほど、それが多ければ多いほど……

「くそっ…」

「どうした、バン!!」

不意に声がして、空を見上げた。
相変わらず雨が降っていて、それははっきりしなかったが…

「レイヴン!」

それは確かにジェノブレイカーである。

「あれ、戻ってきたね。」

「まあいいんじゃない?
どうせダバランとミラが援護しているんだし。」

双子はそんな会話をしていた。

「行くぞ、シャドー!」

『グウウゥゥゥ…!』

またどこかで雷が鳴った。

「ジーク!」

『ゴアアァァァ!』

「行くぜ、相棒!!」

『キャアアァァァン!!』

「クス。」

「倒せるものなら、倒してみなよ!」

闇に紛れて、黒い機体が動いた。

「僕からでいいでしょ、ディオスクロイ?」

「もちろん。
あとから仕掛けるよ、ポリュデウケス!」

ビュビュビュビュビュン、ビュビュビュビュビュン!!

バンは砲弾の隙をぬって攻撃を仕掛ける。

「そんなの当たらないよ!」

相手の機動力は高すぎる。
いとも簡単にかわされてしまった。

「待ちやがれ!」

「アーバイン、危ない!」

目の前に、砲弾が飛んできた。

「くっ、」

「クスッ…」

サイクスがそれを避けようとするのに合わせて黒いガンスナイパーも動いた。

「惑わされすぎだよ。」

「なにっ!」

気が付いたときには、真ん前にいた。

『ギュアアァァン!!』

「ぐあぁっ!」

「アーバイン!」

敵の爪で踏みつぶされ、ライトニングサイクスは押しつぶされた。

「ちっ…」

レイヴンも動くが、そのすばしっこい相手にアンカークローもかわされ、
エクスブレイカーに挟まれるような相手ではない。
それどころか…

「結構君もお馬鹿さんなんだね。」

「なにっ!?」

真後ろに、今度は黄色いガンスナイパーが現れた。

「くっ…」

「わおっ!」

レイヴンはジェノブレイカーの尾で叩き落とそうとした。
だが、相手はフットブースターを使ってかわす。

「本気も出せるし、案外悪くない相手だね、ポリュデウケス。」

「当たり前じゃんディオスクロイ。
GFのトップグループだもん。」

また双子が笑う。

「いい加減にしやがれ!」

「おっと!」

何とか立ち上がったサイクスは、黒い相手に砲撃を咬ます。

「くぅっ…」

「あっ、ブレード!気を付けてポリュデウケス!!」

避けてそのままの相手ではない、が…

「いい加減にしろ!」

「うわっ!」

「ポリュデウケス!!」

ジェノブレイカーの足にあるガンポットから放たれた砲撃により、黒い敵は足止めされた。

「うお〜〜〜〜りゃーーーーーー!!」

「うわぁあああっ!!」

「くそっ!」

黄色い方も動いたが、間に合わなかった。

『ギュアアアァァァァーーー!!』

「ポルックス!くそっ…」

だが、その子は反撃を見ずに終わることになる。

「えっ…」

黄色い幾筋もの光が、こちらに向かってきていた。

「う…くそおぉっ!」

避けようと駆け出すが、これから逃れられるわけがない。

「うわあああぁぁぁぁぁっっ!!」

『ギュオオオォォォォーーー!!』

まもなく、彼等は光の中に消えた。

「メガロマックスだと!?」

「トーマ!!」

驚いて、彼等は後ろを振り返った。

「バン、システムを復旧してビークを作動させた。
今からヘルキャットのデータを送る!」

「僕も手伝ったんだよ。」

急に、リーゼから通信が入った。

「なるほど、虫を使ったというわけか。」

「ご名答だよ、レイヴン。
さすがだね。」

 

 一方、空の方も…

「全くスカリビス、どういうことだい?」

呆れたような声が聞こえる。

「私より持久力がないなんて、笑わせてくれるじゃない。」

「すっ、すみませんナビガトリア様…うっ、うわあああぁっ!」

直後、そのシンカーは地面に堕ちた。

「編成のし直しがいるみたいね。
残念。」

と言うがその声に表情は無く、全然残念そうには聞こえない。

「そろそろ終わらせるぜ!」

残りはシンカーが数えるほど、プテラスやレドラーはもういなかった。
あとは1機、レイノスが飛んでいるだけである。

「あらあら、何か忘れているんじゃないかしら?
せっかくフーが教えてくれたというのに…」

「何?」

ヴアアァァァァーーーーーーーーー!!

「なっ、」

「ちっ!」

「くっ…」

「あ…」

「嘘…」

「何!?」

「しまった!」

一同はその光、荷電粒子砲が来た方に振り返った。

「そろそろ交代してもいいわよね、これだけすれば。」

クスクスッと、先ほどの彼女が言う。

「まぁ、別にいいわ。
ワイバード!!」

オーガノイドの雄叫びと共に、緑色の光がジェノザウラーに吸い込まれる。

「じゃあいったん退却するわ、ヒュエイン(雨降り)さん。
結果を楽しみに待っているわ。
後ろの奴らには適当に指示しといて。」

「勝手な名で呼ばないでくれないかしら。」

だが、レイノスはあっという間に行ってしまった。

「まぁ、いいわ。
これだけやったんだからそれに免じて許してあげる。
それに…早くここをあなた達の墓場にしてあげないといけないから。」

雷が近くで鳴った。
その光でダークホーン、モルガ、レプラプターが見えた。
空にはブラックレドラーの姿も。
そして戦いは、サーカスからリリス達へと引き継がれた。

**********************************************************************************

*アトガキモドキ*

え〜っと…ι かなり自己満足(?)暴走駄文で済みませんm(_ _)m
それにしても…かなり滅茶苦茶で……成立するのかこの話!?
今回は勝手にバトルオンリーで書いているし、サーカスは再登場するし……
キースさんは上手く書けてない上…リリスさんまでだそうとする始末(爆爆…)
さてはて、後編が大丈夫かどうか(汗)
こんな駄文未満の文ですが、どうかよろしくお願いしますm(_ _;)m


シヴナさんから頂きました。
相次ぐ戦闘シーンのオンパレードに私の頭はくらくらです。
しかもキースまで出していただいて・・・、感無量です。
あいつ、あのぐらいの敵だったら何とかなるんですが、物量責めで来られるとは・・・。
やっぱり年ですかね。(笑)
さて、次回はいよいよ真打ち登場。
リリス達との戦闘で彼等の運命は?
シヴナさん、どうもありがとうございます。

 

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