AM 10:00 バトルフィールド

日が高くなり始めた頃、
荒野に一部分だけ光を受け付けない場所があった。
黒いドーム状になっているその中に、アスカの青いコマンドウルフがいた。

「ダークバトルとはね・・・。
デッドスコルピオ団、随分とふざけたまねしてくれるじゃない。」

そう言いながらも、愛機を走らす。
お分かりだと思うが、これはダークバトル。
彼女のいたところにはレブラプターが倒れていた。
おそらく、DS団の襲撃の際にやられた彼女の対戦相手だろう。

「見つけた!」

アスカが見る先にはガンスナイパーの姿が。
迷わず彼女はロングレンジキャノンを撃つ。
いきなりの奇襲で相手は完全に度肝を抜かれ、
有無を言わさず、相手は崩れ落ちた。
今回攻めてきたのは、ガンスナイパーが3体。
残りは2体だ。

「こんなに簡単にやられるのも変よね・・・。」

少しだけ考えると、次は崖の上にキャノン砲を撃った。
案の定、そこには狙撃体制に入っているガンスナイパーの姿が。

「私も見くびられたものね。
こんな簡単な手に引っかかると思うなんて。
さて、後は1体か・・・。」

この時、完全に彼女は相手の力量は大したことない、と思いこんでしまった。
つまり油断してしまったのだ。
ウォーリアーが油断したとき、それは即敗北に繋がる。

「俺達をなめると・・・、死ぬぜ。」

その声が聞こえたかと思うと、コマンドウルフの前足に被弾。
ウルフはバランスを崩し、前に屈むような体勢になってしまう。

「きゃ!
・・・どこ、どこにいるの!?」

「アスカ・ファローネ、ここは戦場だ。
油断をしたら、命取りだぜ。」

不気味な声と共に、彼女の後方から黒いガンスナイパーが現れた。
光学迷彩で隠れていたのだ。

「卑怯者!!」

「卑怯か・・・、いい言葉だな。
DS団は卑怯が専売特許だぜ。
それに、俺は相手をボロボロになるまで、いたぶるのが好きだ。
そして、最後は・・・。」

男の声は恐ろしいほど静かだった。
まるで、殺し合いを楽しんでるような、そんな声である。
それには流石のアスカも恐怖を覚えた。

「さてと、そろそろ死にな。
お前の愛機と共にな。」

ふしゅ〜、と息を吐き、マシンガンの照準を合わせる。
彼がボタンを押そうとした、その時だった。

バリーン

ガラスが割れる音が辺りに響く。
見れば、黒いドーム(ブラックヘクス)の一部が壊れていた。
そして、進入したのは、

「赤いブレードライガーに、赤いガンスナイパー・・・。
チーム・フリューゲルか!」

「ほう、DSの輩に知られてるとは、結構名が売れているようだな。」

「ただの物知りという訳でもなさそうだものね。」

そう、レオンとナオミだ。
黒いガンスナイパーはそっちに向けてマシンガンを放つ。
だが、それらは全てE.シールドに弾かれてしまう。
間髪入れず、ナオミが崖の上から狙撃を開始。
仕方無しにその場を離れ、

「ちっ、余計なまねを!
貴様らもダークバスターか?!」

「いや、ただの通りすがりさ。
ダークバトルを許せないのは同じだがな。」

ライガーもパルスレーザーで狙い撃つ。

「俺の楽しみを邪魔しやがって・・・。
この借りは高くつくぞ!」

再び特徴のある息を吐くと、光学迷彩を発動、
蜃気楼のように姿を消した。

「だが、俺は几帳面な性格でね・・・。
やるべき事はきちんとしないとな。」

「やるべき事・・・?
・・・はっ、レオン、アスカを!」

ナオミの声が飛ぶのと、銃弾がコマンドの腹部を貫くのはほぼ同時。

「きゃああああ!!!」

コックピットの電子系が全部ショートし、コマンドは機能を停止した。
同時にアスカも気を失う。
アスカほどのパイロットになれば、ゾイドとのシンクロも相当強い。
その状態でダメージを受けたのだ。
かなりの精神的なダメージを受けてしまう。

「本当はもっといたぶってやろうと思ったが、この状態では仕方がないな。
まぁ、あいつとのバトルは俺の勝ちだ。」

不気味に男が言う。
それには、2人も怒りを隠せなかった。

「下衆野郎が。」

「神経が腐ってるようだな。」

「そんなに怒るなよ。
流石にお前ら2人を相手をするのは骨だしな。
今日はここで引き上げてやる。
だが、俺の楽しみを邪魔した罪は重いぜ。
次はお前達を狙いたいぐらいだ。」

見えないところから声が聞こえる。

「お前の名は?」

「ふしゅ〜〜〜。
・・・そうだな、名前ぐらいは教えておくか・・・。
俺の名はシュダ。
DS団幹部にしてチーム・ガンナーズのリーダー、“毒蛇のシュダ”だ。
では、また会おう、チーム・フリューゲルのお2人さん。」

レオンの質問にそう答えると、その声はかき消え、ブラックヘクスが解かれる。
その空にはホエールキングが飛んでいた。

「毒蛇の・・・、シュダ・・・。」

「なんて奴なの・・・。」

青空は気持ちいいぐらいに広がっていたが、
2人の表情は冴えなかった。
その後、アスカと愛機のコマンドをグスタフに乗せ、
そこから近かったトロスファームに向かった。
そして、コマンドウルフを見てもらうため、アーサーディーリングショップに来たのだという。
ジュジュがいたのは、その時にビットを尋ねていたからである。

 

  PM 1:20 ディーリングショップ2階 居間

「毒蛇のシュダ・・・か。」

ストラが呟く。
その後にケインが続いた。

「確か、最近のダークバトルで1番卑劣な手を使うと言われてる。
そいつに狙われたら最後、
どこまでも追いかけられ、いたぶられながら、相手は完全な負けを思い知らされる。
闘った相手は、肉体的にも、精神的にも、かなりのダメージを受けるらしい。」

「陰険な奴だな〜。」

「本当、聞いてるだけで頭来ちゃう。」

「僕、そう言う奴、苦手。」

「確かに。
まぁ、毒蛇はそいつにはピッタリの名だ。
自分で名乗ってる辺り、かなり気に入ってるみたいだな・・・。」

ビット、リノン、ベガ、バラッドもかなり嫌そうに話す。
その後、リッドが部屋からなにやら資料を持ってきた。

「それは?」

「連盟が送ってきた、ダークバトルの被害報告。」

シエラの問いに簡単に答えると、それを読み始めた。

「ええと・・・、チーム・ガンナーズ。
被害は4件、そのうち2件にダークバスターを派遣。
しかし、1件は完全に手遅れ、
もう1件はダークバスターごと壊滅・・・。」

「ダークバスターもやられてるのか・・・。」

「とんでもない奴ね・・・。」

サンダースとピアスの意見を交えながら、リッドはさらに読み進めた。

「そして、被害者のゾイドはかなりボロボロにされ、
2,3週間は試合に出られず、
しかも、ウォーリアーにも大怪我を負わせ、
全治3週間〜1ヶ月のものが殆ど・・・。」

もう出る言葉が無いという感じの室内で、口を開いたのはケイン。

「これで5件目か・・・。
どうにかしないと、また被害者が増えるな。」

「それで・・・、どうするの?
アスカさん、このままだとウォーリアーをやめるかも・・・。」

「確かに・・・。
愛機を失ってウォーリアーをやめた奴は結構いるからな。」

ジュジュ、レイスがそれぞれ口にする。
実際、ウォーリアーをやめる理由が、高齢か愛機を失う事が殆どなのだ。
ちなみに、レイスはなるべく女性陣の顔を見ないようにしている。
じゃないと、固まってしまうから。

「何とかしたい気持ちは山々だけど・・・。」

「流石にあの状態じゃあなぁ・・・。」

リッド、ラオンが無理と言わんばかりに呟く。
トロスも曇った顔。
技術陣がこうなので、他のメンバーも諦めモード。

「せめて、メモリーバンクを移植できればな〜。」

「でも、それはメモリーバンクが壊れたゾイドに限りますよ。」

「そうよね〜、うちにもそんなゾイドは無いし・・・。
バンクをぬいたらゾイドが可哀相よね。」

トロス、ジェミー、シエラがそれぞれ言う。
その時、リッドとラオン、ケインにあるアイデアが思いついた。

「ラオン博士・・・。」

「あれを使いたいというのだろ。
・・・どうせ嫌だと言っても、お前ら、無理矢理やるんだろ。
・・・いいぞ、別に・・・。」

「サンキュー、ラオン博士!」

他のメンバーはさっぱり見当がつかず、頭に?が浮かんでいたりする。
ストラは何となく分かったみたいだが。

「どう言うことだ?」

「何か・・・、良いアイデアがあったの?」

レイスとシエラがそれぞれ尋ねる。
すると、リッドは呆れた風に言う。

「まだ分からないのか?
・・・まだまだだな。」

この科白は結構胸にグサッとくる。
特に彼が不適の笑みを浮かべたときは・・・。

「バラッド、アスカを下の倉庫に連れてきてくれ。」

「あ、ああ・・・、分かった。」

訳も分からずケインの言葉に返事をするバラッド。
そして、一同は1階へと降りた。

 

   PM 1:30 ディーリングショップ倉庫

「いったい何があるんだ?」

「真っ暗ね・・・。」

ビットとリノンが倉庫に足を踏み入れるなり、その言葉。
「明かりをつけてないから当たり前だ」と思いながら、
ケインはライトのスイッチを点ける。
すると、そこには、例のオオカミ型ゾイドが。

「何、このゾイド?」

「こんなゾイド、初めてです。」

「きゃあああぁぁぁ!!!
凄〜〜〜い!!!」

ナオミ、ジェミーが驚きの表情でそう言う。
ジュジュは完全にはしゃいでいた。
ゾイド大好きの彼女にとって、新しいゾイドはさぞ魅力的だろう。

「ベガ、こいつの名前は決まったか?」

「うん、とりあえず考えたけど・・・、
何だか恥ずかしいな。」

ラオンの言葉にそう答える。
その顔は恥ずかしいと同時に嬉しさもにじみ出ていた。
そんな会話をしているうちにアスカが到着。

「アスカも来たし、説明を始めるか。」

ケインの言葉で新ゾイドの説明が始まった。

「こいつはその前、私が作ったゾイド。
最近発見されたオオカミ型の野生体をベースに、
この天才が全てを注ぎ込んで作った、最高傑作と言っていい機体だ。」

この時、「馬鹿と天才は紙一重」とリッドが呟いたため、
説明を聞いてるうちに吹き出す輩が多かった。
そんなことをよそに説明は続く。

「えっと、名前は・・・。」

「僕が考えたんだよ。
名前は『ケーニッヒウルフ』。
狼の王、王狼って言う意味で付けたんだ。」

「ケーニッヒ・・・ウルフ・・・。」

誰かが呟く。
それからは起動してなくても、野生の荒々しさがしっかりと感じ取れる。

「それで?
これを自慢するために呼んだんじゃないだろ?」

バラッドの質問にはケインが答える。

「自慢だったら、ちゃんと完成してから呼ぶよ。
こいつは、まだ未完成なんだ。」

「未完成?
もう完成してるように見えますけど・・・。」

ジェミーの言葉にうっ、となる人物が一命・・・。
はぁ、と溜息を吐いて、シエラが答えた。

「そうなのよね・・・。
あそこのオジさんが、メモリーバンクを忘れなければね・・・。
だから、あのオジさん、ここに来てるのよねぇ〜。」

やれやれと言ったみんなの視線がラオンの背中に突き刺さる。
実はラオン博士、ケーニッヒを完成させたのはいいが、
肝心のメモリーバンクのことをすっかり忘れていたのだ。
しかも、彼のホエールキングにはそれを記録させる機械が無いので、
しょうがなく、ディーリングショップに来たのだ。
ちょうどリッドがいろいろなゾイドの基本メモリーを趣味で保存していたので、
好都合だったのも理由に挙げておこう。

「そう言うわけで、こいつにはメモリーバンクがないんだ。
射的のテストは、コマンドウルフの疑似メモリーを使って済ませた。
でも、あれはその場を動けないし、感情がないから、
肝心の格闘性能がさっぱり分からない・・・。」

疑似メモリーとは、リッドのコンピューターからゾイドに直結して、
本当のメモリーバンクのように作用させる装置のこと。(リッド作)
メモリーバンクが無ければゾイドは動かないので、よくテストなどに使っている。
しかし、ケーブルを使っているので、射撃テストしかできないのが欠点である。

「簡単に要点を説明するぞ。
アスカのコマンドウルフのメモリーバンクをケーニッヒに移植する。
そうすれば、お前のコマンドはこいつの中で生き続けられるし、また一緒に戦えるぜ。」

その言葉に少なからず希望を抱く一同。
だが、当のアスカは浮かない顔。

「どうしたんだ?」

「・・・もし、ウルフが蘇っても、
また、ダークバトルであのシュダにやられたら?
もう、相棒を失うのは嫌だわ。」

バラッドが問い掛けると、そう言い始めてしまった。
完全に悲観的になっている。
今の彼女の心境は、事故で死んだ犬の飼い主と同じなのかも知れない。
ケインはそんな彼女を見て、

「・・・伸るか、反るかはお前に任せる。
お前の相棒の気持ちをよく考えて、決めるんだな。」

そう言うと、つかつかと奥の方に歩いて行った。
ジェノの整備のためだ。
彼は決して強要はしない。
あまり縛ったり、縛られたりするのは好きではないのだ。

「少し・・・、あの子の側で考えてくるわ・・・。」

アスカはそう言って、再びコマンドのところに向かう。
すると、

「アスカ、あんまりクヨクヨしてないで、ビッとしろよ。
やられたくなかったら、強くなればいいじゃねぇか。
コマンドの仇はお前が取るんだ。
ケーニッヒと一緒に。」

ビットが後ろからそう声をかけた。
彼なりに元気付けようとしているのだ。
なんとも彼らしい言葉である。

「俺達がシュダと闘っても、それは俺達自身とその相棒を守ることになる。
コマンドウルフの仇はお前しか取れないんだ。」

今度はレオン。
他のみんなも彼女を見つめている。
そして、決心が付いたようだ。

「そうね・・・。
こうなったら、とことんやってやるわ。
ウルフと一緒にね。」

「じゃあ、早速準備だな。
ケーニッヒを作業ドックに運ぼう。」

「ケイン、ジェノでケーニッヒを運ぶぞ。
早くこっちに・・・。」

リッドとレイスがケインがいる方向にむかうと、

「ZZZZZ・・・。」

彼はジェノブレイカーの足下で、気持ちよさそうに寝ていた。
昨日の徹夜が今頃来たようだ。
仕方が無く、彼等は、

『とっとと起きろ、バカ兄貴!!!』

ガコン

2人が思いっきりケインの足を引っ張ると、見事に彼の頭は地面と正面衝突。
その刹那、彼は頭を抱えて転がり回った。
さっきのムードはどこへやら、その他の面々は呆れた目でそれを見ていたとか・・・。

 

   PM 1:45 ディーリングショップ整備ドック

「オーライ、オーライ!」

ドックにレイスの声が響く。
今、クレーンでアスカのコマンドからケーニッヒにメモリーバンクを移している。
慎重な作業のため、作業に当たっているメンバーには緊張が走っていた。
なにせ、これまでやったことが無い作業なのだ。
緊張するのも無理はない。

「兄さん、そのままゆっくり下ろして。」

「O.K.」

ケインがレバーで操作し、
亀のような遅さで橙色に輝く六角柱の棒がケーニッヒの首もとに挿入された。
その作業が何度も繰り返され、成功する度に安堵の溜息と笑みが零れる。
それは、傍らで見守っているアスカも同じだった。
そして、その隣にいるレオンとバラッド、ナオミもである。

 

   PM 2:30 同所

「作業終了。
あ〜、疲れた・・・。」

ケインの言葉が皆に伝わり、場の緊張が一気に崩れる。
あとは技術屋集団の仕事だ。

「さて、ケーニッヒとコマンドのメモリーが上手く噛み合うか、テストしないとな。」

「運動野だけ調整すれば、うまくいくはずですよ。
まぁ、動きのテストをしないと、どうにもできないんですけど。」

「と言うわけだ。
アスカ君、テストの準備だ。
怪我はもう大丈夫かな?」

トロス、リッドの会話は端から聞けば何だか分からない・・・。
ラオンの言葉に彼女は「ええ」と頷くと、ケーニッヒに近付く。

「よろしくね、私の相棒さん。」

 

   PM 9:20 深海の某所、ドラグーンネスト

「ふしゅ〜〜〜。」

シュダが司令室に続く廊下を歩いていた。
どうやら、あの息は癖みたいなものの様だ。
若干背中が曲がっているが、この廊下自体、狭いので仕方がないのだろう。

「まったく、こんなところに呼びつけやがって・・・。
いったい何のようだ?」

ブツブツと独り言を言いながら、行き止まりにある扉を開く。
その中は先程とうって変わって、大きな広間。
中は薄暗いが、他にも数名いることが分かる。

「相変わらず暗いね〜。
毒蛇さん。」

女の子というより子供っぽい声が聞こえるが、シュダは無視。
「ちぇっ」と言う感じで、隣にいる子に話しかける。

「ねぇ、今度の相手、誰かな〜。」

「強い相手だったらいいね。
楽しみだな〜。
君もそう思わない?」

その子が対角にいる少年に話しかける。

「うるせぇな。
俺は好きなときに動くだけだ。
まったく、こんなところに呼びつけてよ。
まぁ、楽しめれば問題ねぇけどな。」

「ふ〜ん、いいけど。
まぁ、負けないように頑張ってね。」

ちょうどその時、再び扉が開き、シドが入ってきた。

「時間厳守だよ、シド。」

「済まない、いろいろと仕事があるものでな。
では、早速本題に入ろう。
次の相手はチーム・フリューゲルとチーム・チャンプだ。」

彼がそう言った瞬間、目を鋭くする人物がいた。
それに気付かず、シドは話を進める。

「チーム・チャンプは問題ないだろう。
メインの対戦はフリューゲルのレオン・トロスとナオミ・フリューゲル。
知っての通り、ブレードライガーとガンスナイパーのパイロットだ。」

「ふ〜ん、なかなか面白そう。
それ、ノエルがやっていい?」

さっきの子供がそう言った瞬間だった。
特徴のある息が聞こえたかと思うと、シドの手から書類が消えた。
その隣にはシュダがそれに目を通している。

「ちょっと、シュダ!
それ、ノエルの・・・。」

「うるせぇんだよ、ガキ!
こいつは俺の獲物だ。
邪魔すると、殺すぞ。」

えらくドスの利いた声でシュダが言い放つ。
これにはその子も涙目になる。

「ちょっと、僕の従妹になんてこと言うのよ!」

「ガキは黙ってな。
吼えるのはいいが、俺の邪魔だけはするな。
それに、こいつらは俺の楽しみを邪魔しやがった。
この借りは返してやらないとな。
・・・で、いいよな、兄貴。」

そう言った相手はシド。
彼はシドの弟なのだ。
そして、いつも彼の尻拭いするのもシドである。

「仕方ない・・・。
思う存分やればいいだろ。」

それを聞くなり、シュダはその部屋を後にした。

「済まなかったな、2人とも。」

シドが彼女らに謝罪。

「シドも大変だね。
腕のいいウォーリアーでも、あんな性格の弟じゃ。」

今まで黙ってた少年が口を開く。

「あいつは・・・、俺のせいであの性格になったんだ。
仕方ないさ。」

「辛かったら、いっそのこと“壊し”ちまえばいいんだよ。
なんなら手伝ってやってもいいんだぜ?」

「そんなことはしない。」

寂しそうにそう言うと、シドはその場を後にした。
DS団も賭事の主催をしている。
そして、シドが殆ど司会をしているのだ。

「けっ、甘過ぎるな。
どいつもこいつも・・・。」

少年もそう言い放って従者と共にその場を後にした。
そして、彼女達が一言。

「彼もシュダも同じ様な性格よね。」

「そうだね。
それにどっちも恐いよ。」

「シュダは顔も恐いから尚更ね。
蛇顔って本当にいるものね。」

「じゃあ、ノエルたちも行こう。」

そういって、彼女達もそこを後にし、空間に闇だけが広がる。
シュダが大きくくしゃみをしたことを付け加えておこう。

「どいつもこいつも・・・、うざってぇんだよ!!」

くしゃみに腹を立てたのか、シュダが自分のゾイドのところで叫ぶ。
それと同時にそこにあったドラム缶を蹴飛ばした。

 

前に戻る     次を読む